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多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 生物から単離され、水に溶けない物質を「脂質(lipid)」と呼びます。長鎖脂肪酸あるいは炭化水素鎖を持つ分子で、 アルコールと脂肪酸が結合した「単純脂質 (simple Lipid)」、分子中にリン酸や糖を含む「複合脂質(complex lipid、compound lipid)」、単純脂質や複合脂質から加水分解によって誘導される「誘導脂質(derived lipid)」と分類されます。

 血液中の脂質には、単純脂質に分類される「中性脂肪(主にトリグリセド)」と誘導脂質に分類される「コレステロール(cholesterol)」などがあります。コレステロールの多くは体内で合成され、ヒトの生体膜の構成物質となります。中性脂肪は、エネルギー貯蔵物質として働きます。

 中性脂肪は、(1)食事由来の遊離脂肪酸、(2)肝臓で合成された脂肪酸、(3)脂肪組織から血中を輸送されてきた遊離脂肪酸から、肝臓で合成されます。肝臓では、合成した中性脂肪をコレステロールとともに、球状粒子の「超低比重リポタンパク (very low density lipoprotein、VLDL)」として、血中に分泌します。

 中性脂肪は、食事が摂れなかった場合などに備える貯蔵用のエネルギー源で、体を動かすことなどで消費されます。消費が充分に行われていれば問題はないのですが、中性脂肪の量が消費される量より大きく上回れば、使用されない余分なものとして、皮下脂肪や内臓脂肪といった体脂肪に変換されてしまいます。「肥満」の始まりです。

 「ヘスペリジン(hesperidin)」は、柑橘類の果皮および薄皮に多く含まれる物質で、さまざまな薬理作用を有すると考えられています。毛細血管は、体の組織と栄養や酸素のやりとりをしているので、「適度」に透過性が保たれている必要があります。ヘスペリジンは、過度になった透過性を低下させる働きがあるようです。

 ヘスペリジンには、壊れやすいビタミンCを安定化させる働きがあり、安定化したビタミンCは、血管の収縮をコントロールする酸化窒素が活性酸素と結合するのを妨げ、活性酸素によって血管が縮んで元に戻らなくなることを阻止します。その結果、血圧の上昇を防ぐようです。

 ヘスペリジンには、動脈硬化を引き起こしたり、脳血栓や心筋梗塞の原因にもなるトリグリセリド(triglyceride、トリグリセライド)の濃度を低下させる働きもあるようです。



 中性脂肪が血漿中に安定に存在するには、タンパク質と結合している必要があります。脂質がタンパク質と結合したものを「リポタンパク質(lipoprotein、lipid(脂質)+protein(タンパク質))」といいます。

 毎分数万回転以上の回転数で遠心力を発生させ試料を分離したり大きさを測定したりする装置「超遠心(分離)機(ultracentrifuge)」で血漿を分離すると、カイロミクロン(chylomicron、0.94g/mL未満)、超低比重リポタンパク(Very Low Density Lipoprotein、VLDL) 、0.94~1.006g/mL)、中間比重リポタンパク(Intermediate Density Lipoprotein、IDL、1.006~1.019g/mL)、低比重リポタンパク(Low Density Lipoprotein、LDL、1.019~1.063g/mL)、高比重リポタンパク(High Density Lipoprotein、HDL、1.063~1.21g/mL)と分けることができます。

 このうち、直径が18~28ナノメートルの低比重リポタンパク(LDL)は、タンパク質を25%、コレステロールを50%、リン脂質を21%ほど含み、動脈硬化に関与するなどの悪さをすることから、悪玉リポタンパクと呼ぶべきところを「悪玉コレステロール」と呼ばれます。その一方、直径が5~15ナノメートルの高比重リポタンパク(HDL)は、タンパク質を33%、コレステロールを30%、リン脂質を29%ほど含み、血管内皮に蓄積したコレステロールを落とし、動脈硬化を抑える働きをするので、善玉リポタンパクと呼ぶべきところを「善玉コレステロール」と呼ばれます。

 ヘスペリジンには、トリグリセリドの血漿中濃度を低下させると同時に、悪玉のLDLの濃度を減少させ、善玉のHDLの濃度を上昇させる働きがあったとする動物実験(ラット)の報告があるようです。

 「トレハロース」で有名な株式会社林原生物化学研究所(更生計画に基づき、2012年2月1日付で、株式会社林原に吸収合併された)は、α-モノグルコシルヘスペリジン高含有物の製造方法に関し、2006年7月28日に特許登録されます(出願日は1998年03月13日)。林原は、ヘスペリジンに糖転移をさせ、水溶性を約10万倍に向上させた製品「林原ヘスペリジンS」(淡黄白色~淡黄褐色の粉末)として商品化します。

 ヘスペリジンは、アルカリ性水溶液には可溶ですが、水や酸に難溶であり、例えば、室温(25℃)では、100リットルの水にわずかに2g程度しか溶けません。しかし、「林原ヘスペリジンS」では、25℃の水100gに対する溶解度は、197gもあります。スタイリースパークリングでは、0.5リットル(500ml)にモノグルコシルヘスペリジンは0.34g(340mg)含有しています。



 林原の特許は、ヘスペリジンとα-グルコシル糖化合物とを含有する溶液に、糖転移酵素を作用させることにより、水溶性に優れ、実質的に無味、無臭で、毒性の懸念もなく、生体内で容易に加水分解され、ヘスペリジン本来の生理活性を発揮する「α-グルコシルヘスペリジン」のコストの多くかからない製造方法を見出したことにあります。



 α-グルコシルヘスペリジンを生成させた反応液を多孔性合成吸着剤を充填したカラムに通して、α-グルコシルヘスペリジンを吸着させ、他の夾雑物を流出させた後に、そのカラムに有機溶媒を通液して、α-グルコシルヘスペリジンを溶出させます。このα-グルコシルヘスペリジン高含有溶出液を蒸溜処理して、有機溶媒を溜去した後、適当な濃度にまで濃縮し、または濃縮液を乾燥し粉末化して製品とします。

 このα-モノグルコシルヘスペリジンを含有した炭酸飲料「スタイリースパークリング(Stylee Sparkling)」を伊藤園が「特定保健用食品(特保)」として、2012年7月2日から発売を開始し、妻がそれを購入してきて、中性脂肪の気になる年齢になっている私に勧めてきたという話しでした。ヘスペリジンの効用については、いろいろとあるので、続きはまたの機会にします。

 妻が言いました。「そこまで調べないと、このスタイリーが飲めないの? あなたって、変!」

(参考)「トクホって? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(1)

(参考)特保って? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(2)

(参考)「スタイリースパークリング」という飲み物と「モノグルコシルヘスペリジン」

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(1)

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(2)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(1)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(2)

(参考)家族性高コレステロール血症とHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)


              (この項 健人のパパ)

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