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No1107『カリフォルニア・ドールズ』~苦節の涙あってこそ…DOLLSの晴れ舞台歌って迎えよう!~

夏バテか、疲れがひどく、夜の踏ん張りが効かず、すぐ眠くなってしまう。
これでは9月を乗り切れない、ドールズにエネルギーをもらおうと
焦る気持ちで、2時間年休もらって神戸新開地のシネマ神戸に行ってきた。

「カリフォルニア・ドールズ」こと、黒髪のアイリスと金髪のモリーは
マネージャーのハリーとともに、女子プロレスで、全米を巡業していく。
先がみえない中、ドサまわりの旅を続ける日々。
苦労続きのつらい涙が心にしみた。
それだけに、晴れ舞台となる、タイトルマッチへの出場権を手にできたのが、
なんとうれしく、喜ばしいことか。

今回、一番、劇的に思えたのが、
ハリーを演じるピーター・フォークの指サイン。

試合前、ハリーは、会場のオルガニストの老人に、
自分の指示(サイン)どおり、曲を弾いてもらうよう頼みこむ。
紙幣を一枚、二枚と、老人の掌の上に置いていき、
なかなかうんと言わなかった老人が、10枚くらい渡した時、やっとにっこりうなずく。
なかなか食えないじいさんだと苦笑しながら、
買収に成功できて喜んでいるハリーがいい。
このじいさんの演奏が、会場の空気を盛り上げることができるからだ。

試合前、チャンピオンの相手が先にリングに現れ、観衆の声援を受ける。
そして、いよいよ、対戦相手の我らがドールズの登場。
リングの司会者が、コールすると、
ハリーが、客席下の壁から指だけ出して、オルガニストの老人に見えるよう、サインをする。
老人はそれを見て、
「ドー、ドー、ドー」と同じ音程の音を、リズムを持って弾くと、
ハリーがあらかじめ、バイト代として40ドルを渡した子どもたちが
客席のあちこちから、「We」「want」 「the DOLLS!」と、オルガンにあわせて声援を上げる。
(この一定のリズムと節を持った掛け声は、チャントというらしい)
ハリーが「40ドル分だけ、しっかり声を出せ」とかつぶやくのがいい。

彼女たちはなかなか現れない。
ハリーがサインを変え、指をぐるぐる回すと、
老人は、彼女たちの応援歌(テーマ曲)を弾き始める。
子どもたちがみんなで一斉に歌いだす。

歌っていいなあと思った。
皆が歌う中、きらびやかな姿で、ドールズが登場し、
客席の間を進んで、リングに姿を現す。
会場中が、ドールズ一色になったかのように、皆が一体となって歌い、応援している。

観ていて、思わず、オルガンにあわせて、身体を揺らしてしまった。
子どもたちと一緒に掛け声をかけたくなったし、足を踏み鳴らしたり、応援歌を歌いたくなった。
映画で、こんなにも心躍る登場シーンはないほど。
この試合に懸けた二人とハリーの熱い気持ちが痛いほどに伝わってきたからこそ、
もう身体じゅうで、彼らの登場を待ちわび、
応援したい気持ちでいっぱいだった。

このあとのタイトルマッチの試合は、
カメラも接写が続き、じっくり時間をかけて描かれる。
殴られたり、マットに叩きつけられたり、痛さがリアルに伝わる。
レフリーが、買収されていて、ドールズに不利な判定ばかり重ねようとする。
やっと手にした試合で、こんな目にあうなんてと、
応援する手に一層力が入る。

試合前、ハリーが二人に声をかけた
「負けてもいいが、負けたら、今までの苦労が水の泡だ」という言葉が
ずしんと響いてくる。

今回観て、こんなにつらかったのかと思うほど、
栄冠を勝ち取るまでの、
彼女たちの苦労や涙が心に迫ってきた。

モリーは、先が見えてこない毎日に絶望して、
夜ベッドで泣いて、「故郷に帰って前の仕事につこうか」とアイリスに愚痴る。
アイリスが「組むならあなたじゃなきゃだめ、帰ったらもっと夢から遠のくわ」と励ます。
それでも、電気を消して床についた後も、
暗闇からモリーの泣き声が聞こえ、心が痛い。

泥まみれの試合をさせられた後、
「笑いものにだけはなりたくなかった」
「恋人としてもマネージャーとしても最低よ」と
ハリーに怒りをぶつけるアイリスの悲痛な思いと悔し涙。

そのあと、もう一度、アイリスが激しく泣くシーンがある。
プライドも自分の心も傷つけてでも、出場権を得るために
身を犠牲にしたアイリス。
二人の思い入れが伝わる。

この映画は何度も観ているけれど、
今回、安いモーテル、ハンバーガーの食事、ぼろ車での道中と
つらい思いの繰り返しに耐えながらの、
アイリスの涙、モリーの涙が心にしみた。
どん底のような先のみえない毎日。
そのなかで、チャンスをつかみとった彼女たちの凄さ。
もう泣くしかない…。

旅の道中、3人が仲のよいシーンもあるけれど、
総じて、ドールズの二人とハリーとは、口喧嘩したり、何かと衝突してばかり。
肉体を駆使してリングに立ち、痛い思いをする側と、
マネージャーとして金を稼ぎ、少しでもトップクラスに上げようというマネージャーの立場。
立場の違いゆえのぶつかりあいが、何度も繰り返される。
ハリーが二人を大切に育てようとする気持ちもよく伝わる。
こういう、なにげない日常のシーンが重ねられたロード・ムービーがあるからこそ、
最後の試合での快挙が、一層輝きだす。

冒頭、暗い会場のロングショットで始まり、
遠くで、女子プロレスのリングのドシドシいう音が微かに聞こえる。
こんな静かなシーンから始まったんだと再発見。
多分、今日で4回目。
でも観るたびに違う発見がある。

最後、大逆転劇の末、勝利を手にした彼女たち。
オルガンが鳴り、あの応援歌が再び繰り返される。
思わず嬉し泣きで、ぼろぼろ泣いた。
大いに元気をもらい、ドールズに感謝。

アメリカ版予告編というか宣伝動画(youtube)の冒頭にオルガニストが登場してます。

日本版公式サイト(予告編つき。別映画の後です) 

去年冬に七芸で観た時の感想

3年前プラネットで2回観た時の感想

…All the Marbles (c) 1981 Warner Bros. Pictures International. All Rights Reserved

【補足】
「…All the Marbles」で、YOUTUBEで検索すると
最後の試合の場面も、例の応援歌も、結構、観れます。

応援歌が歌われるシーンです!(YOUTUBE 2分)

この場面だけ観ると、ただの派手なネーチャンにしかみえません(笑)
やはり、この映画は、前半の苦労続きの道中のドラマ部分が
きっちりできてるから、後半の、この試合がより生きてくるのだと、
あらためて、アルドリッチ監督に拍手を送りたいです。

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