映画の感想をざっくばらんに、パラパラ読めるよう綴っています。最近は映画だけでなく音楽などなど、心に印象に残ったことも。
パラパラ映画手帖
No1020『カリフォルニア・ドールズ』~彼女たちのハングリー精神に乾杯~
ブロンドのモリーと、ブルーネットの髪のアイリス。
二人の美人レスラーの美しい肢体が、リングに叩きつけられる音が大音響で響く。
かなり痛そう…。
でも、何度叩きのめされても、彼女たちのガッツが消えることはない。
反骨心を失わない彼女たちの肢体がリングで輝きだす。
そんな姿を見守っているうちに、いつしか、観客の胸にも火がついた…。
神戸KAVCでの爆音上映。
年休がほとんど残っていて、せめて年末、無理をお願いして、昼から神戸へ。
会場は、70人位は入っていそうな盛況ぶり。
声をあげて試合を応援してる人がいたら、おもしろいのにと思ったけれど、
冷静な映画ファンが多かったか、上映後に拍手があっただけ。
以前、中崎町のプラネットで16ミリ上映で2回観て、熱狂したのは強烈に覚えている。
(そのときに書いたブログの感想です。)
爆音なら、どんなすごいことになるのかと、どきどきしながら観に行ったが、
正直にいうと、彼女たちが、殴られたり、蹴られたりする音が、なんだか痛くて、少しつらかった。
でも、クライマックスの試合で、
相手に追い込まれていたドールズが、
いきなり、プロモーターとつるんで、不正なジャッジばかりするレフェリーを、
相手チームの選手とまとめて投げ倒すところから、
爽快感へと変わった。
そのとき、
彼女たちの闘っている相手が、
敵の黒人のタッグ・チームタイガーズではなく、
むしろ、権力をかさにきた、バート・ヤング演じる、嫌味なプロモーターのエディであり、
彼の依頼を受けたレフェリーなのだと気付いた。
権力者を相手に、決して試合を諦めない、ガールズのハングリー精神が、観ている者の心を撃つ。
土壇場での大逆転には、ガッツポーズをしたくなった。
ピーター・フォーク演じる老マネージャーのハリーの頭脳戦、
観客を味方につけるための作戦はすばらしいし、
彼女たちが、まばゆいコスチュームでリングサイドに現れた時には、拍手したくなった。
試合もいいが、前半の彼女たちの日常の姿がいい。
3人で、おんぼろ車に乗って、どさまわりのように、小さな町をあちこち試合で回っていく。
ハンバーガーばかりの食事、
たまにはまともな食事がしたいと言うモリーに
ハリーは、本物は金がかかる、と口癖を言う。
ハリーが車で愛聴しているオペラの曲や、
車内や、モーテルでかわされる、3人の会話がいい。
ピーター・フォークが、移民としてアメリカに来た自分の父親のことを話すのは、
聞いていて、すごく味があって、心に入ってきた。
3人が、人生のいろんな辛酸をなめ、苦労や我慢を重ねながらも、
時に、互いに感情をぶつけあって喧嘩し、
夢にむかって、タッグを組んで、前を向いて、歩み続ける、
そんな姿が、さりげなく、しんみりと、描かれていて、深い味わいをもたらす。
十三の第七芸術劇場で、1月19日から公開予定。
嬉しいことに、35ミリのニュープリント上映。
彼女たちの美しい肢体が、リングで弾み、輝く姿は、ちょっと色気もあって、
女性でも、うっとりしてしまうにちがいない。
今回の映画での名言は、
ビッグ・ママという名の女子レスラーのチャンピオンのセリフ。
「ライトビールなんて、だめ!本格的ビールを持ってきて」と言いながら、
空き缶をにぎりつぶす。
テレビで、ビールを飲みながら、ドールズの試合を観ていた彼女。
実は、ドールズは、彼女の前座の試合で、
ママこそは、本日のメイン・イベントの試合に出る選手。
やたら派手なパフォーマンスのドールズのことをやっかんで、
最初のうちは、やたらこきおろしていたのに、
いつのまにか、熱が入って、ドールズを応援している。
こんなセリフを言って、横でテレビを観ていたマネージャーに頼むというわけ。
ドールズの試合を観ている人は、皆、同じ気持ちで、いつしか肩入れしてしまう。
プロモーターのエディのボディー・ガードもそんな一人。
エディが、ピーター・フォークに腹を一発殴られるのを見て見ぬふりして、
「大丈夫ですか」と素知らぬ顔で言ったり、彼も役者だ。
ぜひご注目を。
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