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No618『カリフォルニア・ドールス』~日常をすっかりワープし、リングサイドの熱気の渦へ~

大阪プラネットでの「70年代アクションの系譜」特集の1本。
『ゲッタウエイ』をはるかに超えるおもしろさ。
金曜の晩に行ったら、
ついさっきまでの仕事の世界から完全にワープして、
映画の世界にすっかり入り込み、
まるで週末の一日、ずっと映画を観ていたような充実感に包まれた。

タイトルは、女子プロレスの美女二人のタッグチームの名前。
ハンバーガーばかりの粗食とオンボロ車に耐え、
夢を追いかけて、
マネージャーのハリーとともに
地方のリングを回るアイリスとモリー。
しかし、ついにビッグ・ステージにのぼるチャンスに恵まれ・・!!

プロレスは暴力的にみえ、あまり好きではなく、
女子プロレスには、まるで興味のなかった私でも
この臨場感にうなり、彼女たちのファイトにすっかり魅了された。

この映画は、スポーツの試合を観るというおもしろさだけではない。
ドラマとしてもよくできている。
ハリー役のピーター・フォークが抜群にすてきだ。
私は母の影響で、刑事コロンボが大好きで、
結婚するなら、よれよれのコートでも
あんなふうに頭のよくてかっこいい人がいいというか
むしろ、自分があんなふうになりたいと思っていた。

ハリーのマネージャーとしての頭のよさ、
優しいけれど、時にかんしゃくを起こしたり、
とても人間的で、
彼女たちとのやりとり、車中での会話も厚みがあり
ドラマに深みがあった。

バート・ヤング演じる、狡猾なプロモーターは
憎らしい役回りのはずだが、
どこか憎みきれず、強い印象を残すから不思議。

因縁の敵チーム“虎”の冷静沈着な黒人マネージャーもいいし
前座のドールスの試合をテレビでビール片手に観戦し熱狂する、
大女で早口でまくしたてる、プロレスラーの女子チャンピオンもすてきだ。
こんなふうに、脇役も魅力的な人物ばかり。

アップになったり、リングに大の字になって打ちのめされた肢体を
ロングの俯瞰で写したり
カメラワークもスリリング。
リングサイドで叫ぶハリーの声は、歓声で聞き取れなくても熱狂は伝わる。

試合前の茶番のような予想外のイベントも
ハリーの戦略と、それに労したエネルギーを知っているから
思わず拍手をして一緒に迎えたくなる。
これが、ロバート・アルドリッチの遺作。

金曜に観にいって、
また彼女達の応援に行きたくなり
土曜も観にいったら
同じ映画友達も偶然観にきていて、同じ気持ちだと嬉しくなった。

手に汗にぎり、
「やった!」と思わず小声で叫びたくなるシーンもある。
その喜びを、映画の中に登場するリングサイドの観客たちとだけでなく
今、劇場でともにスクリーンをみつめる人たちと共有できる喜び。
これぞ映画の醍醐味と思う。
お薦めの一作。
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