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海底トンネル事故~『どたんば』という映画のこと~

そのとき、「水が出た、逃げろ」という声が坑道の中から聞こえ、
海水がどっと後ろから押し寄せてきたそうだ。
立て坑にいた61歳の角井さんは、らせん階段を駆け上り、
途中からは水圧ではね上げられて、助かったと新聞にある。
どんなに怖かったことかと思う。
地下34メートルに潜っての海底での仕事の危険と不安。
2月7日に起きた岡山倉敷での海底トンネル事故。

地下深くに潜っていく仕事の怖さは、さまざまな映画で描かれてきたが、
最近みた作品の中では、
『信さん 炭坑町のセレナーデ』(2010平山秀幸監督)の
主人公信さんがトロッコに乗って坑道を下っていく、
出口から差す外界の光が段々小さくなって、闇となる…。
そのときの、信さんの不安な表情、心細さが印象的だった。
確か、このシーンは、実際の炭坑の坑道で撮影されたと
平山監督が語っておられた。

そしてもう1本。
昭和32年の映画『どたんば』(内田吐夢監督)。
炭坑で、縦坑から水が一気に流れ込み、坑内に水があふれ、
志村喬ら5人の男たちが閉じ込められる。
坑夫たちが、仲間を助けようと、不眠不休で
さまざまな救出方法を試みるが、なかなかうまくいかない。
朝鮮人の坑夫たちといざこざが起こったりするが、
早朝、皆が一丸となって、救出作業を進め、
閉じ込められた坑夫たちが、一人また一人と順に救出され
最後に、親分格の志村喬が地上まで、かつぎあげられ、
家族と抱き合う姿が忘れられない。
雨の音もリアルで、
東野英治郎や岡田英次といった、男たちの連帯感がとても印象に残っている。
(当時の感想はこちら。)

今回の海底トンネル事故、ただもうご無事を祈るばかりだ。

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コメント
 
 
 
人間の驕り (すみれ)
2012-02-11 09:43:03

 男性の遺体が発見されたそうです。地震、津波に続いて起きた原発事故。そして海底トンネル事故。しかし、残念ながらどれもが人間の驕り(技術の過信)によるものではないでしょうか。
 地球の自然の脅威は、運命共同体で、致し方のないことではありますが、しかし、春夏秋冬のある地球の自然がこれ程に偉大で暖かいのに、昨今は人間の奢りで、日本も寒波の罰を食らっているように思えてなりません。
 
 
 
すみれさまへ (パラパラ)
2012-02-12 01:26:29
コメントありがとうございます。
新聞、読みました。ただもう痛ましいばかりです。
地質調査も十分でなく、すっかり普及したシールド工法への過度な信頼のあまり、地中を掘るということへの恐れを、当の大企業が失ってしまっていたということですね。
すみれさんがおっしゃるとおり、技術への過信のあまり、自然への恐れを忘れたということで、そのことゆえの自然からの報いを、ひとえに下請会社の労働者が受けるという、なんとも悲しい構図。連絡を受けて、地底深くの現場に降りていった親方の心境は、どんなものだったか、想像するに堪えません。
 
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