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散りゆく花の美しさ

桜については、咲いている姿だけでなく、
散っていく時の美しさについても、書いておきたい。

今日、久しぶりに再会した友達と、5歳の息子さんと一緒に
山崎聖天まで行ってきた。

JR山崎駅そばの離宮八幡宮は、
落ち着いた風格で、狭い境内には、
観光客らしき人が、2人ほどいるだけで、
しんみりとしていた。

友達を待つ間、
境内のすぐ外に何十本と咲いている
きれいな白い花(アヤメ科のシャガ)をぼんやり眺めていたら、
ふいに風が吹いて
桜の花びらが、一斉にふわふわと舞い降りてきた。
見上げると、境内にある大きな桜の樹が
高く枝を伸ばしていて、
残っている花は、もうわずかだった。

風が吹くたびに、桜の花びらが、さあっと降ってきて、
ゆっくりと地面に幾つも舞い降りていく。
あまりにきれいで、
しゃがんで、しばらく見とれていた。
とても静かで、蟻んこが歩いていくのも見える。

郊外はいいなあと思った。
大阪に来て最初に住んだところが市内だったので、
そのまま居ついてしまったが、
山崎は、山も近く、自然がたくさん残っていて、
空気も光も、どこか違ってみえた。

階段をずいぶんと昇った所にある山崎聖天さんも、
桜はほぼ散っていて、
庭一面に桜が散って、薄ピンクのじゅうたんができていた。

石の階段の端にも、
桜の花びらがたくさん吹き寄せられ、
こけの緑色と、ピンク色とが
鮮やかなコントラストを呈していた。

今日は風があったけれど、
先日、暖かだった日に川沿いで見た時は、
風がほとんどなく、
桜の花びらは、ほぼその重力だけで
地上へと、吸い込まれるように下りていった。

桜の花びらは、一体、どれくらいの重さなのだろう。
ひとひらの花びらが、まるで小さな舟のように、
左右にふわふわ揺れながら
ゆっくりと舞い降りていくのは、
本当に美しく、心奪われた。

限りなく薄くて、淡い薄ピンク色の桜の花びらには、
自己主張がなく、
ほのかで、はかなげだから、
よけいに、どこかいとおしく思えて
心を移したくなる。

花びらの動きに見とれていると、
私自身まで、どこか異世界へと運ばれていきそうな気持ちになる。
散っていく花にも風情があって、情が移るのが桜だ。
一斉に散ってしまうところに潔さもあって、
最後まで、楽しませてくれる。

心は平安時代に飛ばされたということで、一句、つくってみた。

「ひらひらと

舞い散る花の

ゆくへ追ふ

旅立つ君の

肩に触れなむ」

古語の助詞のつかい方に自信ないので、雰囲気だけですが。

陽が暮れる前、
うっすら明るい空の下、
桜の花びらがひとつ、ふいに舞い降りてきました。
友達と二人、思わず、目を奪われ、
わぁっと吐息がもれるほどにきれいで、
天からの贈り物みたいに見えました。
花びらが着地した当の本人は、気が付かなかったようですが、
幸せのきざしとは、こんなふうに降りてくるものかもしれません。
その時の、花びらの、ゆるやかな軌跡は
一生ものの思い出にしたいほど鮮やかに美しいもので、
忘れられない春の想い出になりました。

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
« いつまでも咲... 桜の花の残した跡 »
 
コメント
 
 
 
春の想い出 (JNK)
2014-04-13 15:32:19
情緒豊かな文章にしていただいて、ありがとうございます。
そのときは立ち止まる余裕がなくて、数年後に「こんなことがあったな~」と振り返るのが常で、それでも、そのときのためにせっせと今を生きているような感じなのですが、改めて違った視点から同じ1日を見せてもらって、なんだか感慨深かったです。

本の感想、映画の感想に一番その人が表れると思っていたけれど、こんな日常の風景の中にもぱらぱらさんがみごとに表れた文章で、感動しました。
 
 
 
ありがとうございました。 (ぱらぱら)
2014-04-13 22:18:37
「離宮で待ってて」というメールがなかったら、こんなすてきな光景に出会うこともなかったと思うと、JNKさんのこまやかなお気遣いがあってこそで、本当にこちらこそ、ありがとうございました。

桜の花には、咲いている見頃があるのと同じくらい、散り頃の美しい景色があって、ちょうど山崎で、そんな景色に出会わせてもらったのかな、と今日思い出していたところです。
 
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