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No190「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」ジェームズ・マンゴールド監督

~君がいたから今の僕がいる~

1950年代、ロカビリーの黄金時代を築いたジョージ・キャッシュの
デビューから人気スターへ、ドラッグで身を持ち崩し、復活するまでを描く。
彼とツアーを共にし、二人目の妻となるジューン・カーターを演じる
リーズ・ウィザースプーンは、みごとアカデミー主演女優賞に輝いた。
キャッシュを演じるホアキン・フェニックスが主演男優賞を逃したのは残念だったが、
この二人、
歌、ギターを特訓して、全て自ら演じた苦労が映像に結晶している。

舞台で二人が歌うシーンはリアルで、
映画をみながら、つい歌にあわせて足踏みしたくなった。
監督は、舞台での撮影にこだわり、手持ちカメラで、照明も最小限にしぼり、
マイクも当時のものを使い、歌い手の心の揺れを繊細に描きとった。

刑務所のコンサートシーンは圧巻。
看守を見返し、反抗精神にあふれ、生の手ごたえを感じながら歌うホアキン。
ホアキンの顔は、いじわるそうにみえて、私は好みではないが、
つっぱりながらも、ナイーブで、コンプレックスだらけで、
激情にかられ、ギターをたたきつけ、洗面台を壊してしまうむちゃくちゃさ。
あぶなっかしい感じが、生々しくて、どこか共感できる。

そんな彼を、じっと見守るジューン。
離婚し、子供を抱え、自分の生活がある。
キャッシュとは、距離をとりつつも、離れがたい。
単純に彼にほれて、寄り添っただけじゃない、芯の強さが魅力的。

最後のコンサート会場で
キャッシュがジューンを抱き上げるシーンがこんなに心に迫ってくるとは思わなかった。
挫折し、人生の辛酸をなめつくした彼が
生き生きと歌う姿が純粋にうれしかった。

最も心に残った一言は、
ジューンの両親の言葉。
感謝祭に両親とジューンの両親を招いたのに、
父の一言に傷つき、やけを起こして、荒れ狂っているキャッシュ。
キャッシュの両親は息子を見放し帰ってしまい、
ジューンたちも車で帰ろうとする。
そのとき、ジューンの母が言う。
「彼をこのまま置いていっていいの?あなたは残ってあげなさい」
この老親の優しさが、彼を救った。

昨年、ジェイミー・フォックスがアカデミー主演男優賞を獲得した
「RAY/レイ」もよかったが、
本作も、脚本は荒削りだが、
若い二人の俳優の、歌に、演技にかける情熱が、あふれていて、
忘れがたい。
満足度 ★★★★(星5個で満点)
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
いやあ~ (April)
2006-03-07 23:43:32
リース獲っちゃったね、オスカー。

「キューティ・ブロンド」のコメディ路線から一転、演技派になんて言われてますが、私は「キューティ…」大好き!



確かに、あのジューンの両親の言葉がなければジョニーは助からなかったかも。

私はバスの中でプロポーズするシーンも好きです。

 
 
 
Aprilさんへ (パラリン)
2006-03-09 00:12:25
リース、すごいですね。

あの舞台での声のトーンを変えたトークもすてきでした。

「キューティ・・」は録画しただけで、未見です。

ぜひ観てみます!

バスでプロポーズするシーンも、ホアキンの一途な目とリースの理性的な表情が印象的でした。

ほんと、等身大って感じですね。
 
 
 
遅まきながら・・・ (mezzotint)
2006-03-16 00:59:56
観ましたよ本当に最後まで感動ものでしたしかし二人とも歌が上手い
 
 
 
mezzotintさんへ (パラリン)
2006-03-22 23:25:48
本当に二人とも歌がうまかったですね。

二人が一緒にはもるところなんて

なかなかすてきでした。

ホアキンの切ない表情、よかったです。
 
 
 
TBありがとうございました! (mezzotint)
2006-03-23 00:32:25
TBしていただきありがとうございます!もう一度この映画なら観たいという気持になりますね・・・。余談ですが、クラッシュの若き刑事役のライアン・フィリップとリーズ・ウィザースプーンは結婚しているそうです
 
 
 
mezzotintさんへ (パラリン)
2006-03-28 00:14:10
え・・・あの二人が。少しびっくりです。

でも、この自己実現欲求の強い現代において

結婚ってのは

やはり夢があって、すてきと思います。



ライアンは、クラッシュで、

人間の暗~い部分を体現していたような気がして

(差別はいやといいつつ、極限状況になると、疑ってしまうというか)

リーズの「陽」のイメージと

役柄的には、正反対のようですね。

どちらも忘れがたい作品になりそうです。
 
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