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うだうだの三連休~秋の夜更けに~

「子供は子供だったころ
腕をブラブラさせ
小川は川になれ 川は大河になれ
水たまりは海になれと思った

子供は子供だったころ
自分が子供とは知らず
すべてに魂があり
魂はひとつと思っていた

子供は子供だったころ
なにも考えず 癖もなにもなくて
あぐらをかいたり
とびはねて
小さな頭に大きなつむじ
カメラを向けても知らぬ顔」

『ベルリン 天使の詩』(ヴィム・ベンダース監督)
(天使が人間の女性に恋をして天使の身分を捨ててしまうお話)

「あの映画の成功の半分は脚本に手を貸した詩人ペーター・ハントケの力のおかげだとぼくは思う。
あのモノローグは本当に天使がつぶやくように美しい。
始まってすぐのところ、スクリーン一杯の紙の上にペン先がハントケの詩を書いて、
男の声がそれを読みかつ歌う。イノセンスというものをそのまま言葉にしたような詩。
リルケの嘆きがイノセンスの喪失に関わるものだとしたら、それはこの詩で回復されていると
言えないか(字幕の訳は池田信雄・池田香代子)ー」

部屋を片付けていて偶然出てきた
「図書」(2012年10月号、岩波書店)
池澤夏樹さん「秋の歌と天使の歌」よりの抜粋です。

正確には、池澤さんは、上記の文章を書いた後、
詩を引用しています。
この詩には続きがあって、(別サイト参照
「なぜ 僕は僕で君ではない?
なぜ 僕はここにいて そこにいない?」
という一節もあります。

なんだか前回ご紹介した『ヤンヤン~』に通じるものがあるなあと思って、
引用しました。

もうひとつ「ちくま2012年12月号」で見つけた詩。
井坂洋子さんが「モヤモヤの詩」と題したコラムで
引用されていたものです。

「ひとりでごはんを食べていると
うしろで何か落ちるでしょ
ふりむくと
また何か落ちるでしょ

ちょっと落ちて
どんどん落ちて
壁が落ちて 柱が落ちて

ひとりでに折り重なって
最後に ゆっくり
ぜんたいが落ちるでしょ

手を洗っていると
膝が落ちて 肩が落ちて
なんだかするっとぬけるでしょ
 
ひとりでごはんを食べていると
うしろで何か落ちるでしょ」
(松井啓子 「うしろで何か」)

ちょっと怖い詩でもありますが、
秋の三連休の最後の晩、何もできなかった無力感にとらわれている心を
なんとはなしに、慰めてくれるような気がします。

というのも、
この三連休、あまりの天気のよさに
せっかく朝10時位に起きても、
昼過ぎ、気持ち良い風が窓から入ってくると
やおら強烈な眠気が襲ってきて、
映画に行くから「寝たらあかん」と思っても
身体は畳に吸い付いてしまい、
夕方まで動けないという体たらくでした。

映画は、ロバート・クレイマー監督の
『マイルストーンズ』(1975年3時間26分)
『アイス』(1969年2時間12分)
をシネ・ヌーヴォに観に行っただけで、
『シベールの日曜日』を再見するつもりが、見逃してしまいました。

ロバート・クレイマーは
『マイルストーンズ』の冒頭のおばあちゃんの語りがとてもいい感じで、
16ミリフィルムの質感はとてもすてきでしたが、
内容は、よくわからず、途中なんども沈没してしまいました。
アメリカの1970年代の政治や社会状況を映しだしていて、
広いところを長髪の男二人がしゃべりながら歩いているだけで、
様になっているのが、かっこよかったです。

神戸映画資料館の音楽会に行った時、
教えてもらったことですが、
濱口竜介監督の即興演技ワークショップで
今、受講生たちが、各自インタビューをして、
取材と同時に、映像も撮っているそうですが、
2時間、話を聞いて、
その人の声が一番よいと思ったところ、
話の内容がおもしろかったとかではなく、
その人が一番いい声を出していると思ったところを選ぶように
言われているそうです。
ちょっとおもしろいですね。
しばらく自分の声に注意してみようと思います。

その音楽会の飲み会で
「今日あいてる?」と友達から電話されたり、メールされたことがあるか、
あるいは、友達に電話やメールをしたことがあるか
という話になりました。
案外、そういうことは勇気がいることで、
孤独という話題も出たりして、なかなか興味深い話でした。

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コメント
 
 
 
Unknown (JNK)
2013-10-15 23:39:32
風に吹かれて眠る、そういう時間も必要ですよ~
こちらは先日、久方ぶりに映画2本立てを敢行し、
2本目は撃沈してしまいました・・・
重い→軽妙の順番でしたが、緊張の糸が切れたのでしょうか・・・欲張るもんではありませんね~
 
 
 
JNKさまへ (ぱら)
2013-10-16 02:59:48
こんばんは。コメントありがとうございます。
風を感じるのは一瞬のことで、畳にへばりついているというのが実情なんですが、でも、いい気候であることは確かですよね~。
あたたかいコメントに励まされました。

是枝さんの最新作も、未見ですが、評判よいようですよ。JNKさんがご覧になられた「重い」方の作品は、ひょっとしてそれかしら?
体力、集中力とも1本目で使い果たすってありますね。逆に1本目で寝てしまうと(撃沈すると)、案外、2本目はすっきり観れたりします。なかなかうまくいきませんね。
 
 
 
ご名答! (JNK)
2013-10-17 13:02:35
さらに、この映画のモチーフとなった実在の親子のドラマがTVでやっていたのでそちらも見てしまいました。

ところで、書き忘れましたが、冒頭の詩、いいですね!


 
 
 
JNKさまへ (ぱらぱら)
2013-10-18 00:08:53
是枝監督、お好きでしたよね。
どの作品か覚えてなくて恐縮ですが、是枝監督の作品について貴女が書かれた文章を読んだか、感想を聞いた時の感銘が心に残っています。

冒頭の詩を聴きたさに、『ベルリン天使の詩』を観たくなりますね。
天使が人間界におりてきて、あちこちをのぞいていくくだり、図書館のシーンは大好きでよく覚えているのですが、こんな詩が詠まれていたことまでは、忘れていました。
 
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