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帰省つれづれ~“今”を生きるこどもたち~

巷とは逆方向に、今日、愛知の実家から大阪に帰った。
小学生の甥っ子たちはにぎやかで、
相変わらず人生ゲームやら、今回、新しく購入したばかりの野球盤のゲームに
一緒に熱中して終わった。
野球盤ゲームも、やりだしたらおもしろくて、
ストライクやら消える魔球やらカーブやら駆使して、打たれないよう加減するのに必死で、
ヒットできても、三振に終わって残塁に終わると、本気で悔しかったり、
大人のくせして私も本音を隠すのに懸命だった。
おとなしい甥っ子は、いつものごとく寛容で、
私が負けるのが悔しくて、下手を口実に打撃練習を頼むと、つきあってくれたり、
投球練習にも相手になってくれたりで、
彼の方が小6だというのに、大人の対応で余裕をみせられてしまった。

日曜日、一日遅れで、中学受験で夏期講習のテキスト持参で別の甥っ子が来ると、
ゲーム遊びから、学習塾へと一転。
算数の課題のミッションを、仕事に行った弟から言いつかった私は、
頼まれた分を終わるべく、あれやこれやとうるさい先生になる。
おしゃべりな甥っ子は、面白い子で、
30度の扇形の弧の長さを計算するのに、
チーズケーキの絵を描いたりして笑いをとってくれる。
いつもながらに教科書からはみだしていく彼の想像力は頼もしい。

エラそうな顔をして教えていた私も、
1時間に3分遅れる時計が、何時を指していたら、本当の時間は何時でしょうとか
頭がこんがりらかりそうな問題が続出して、
もう一人の上の弟にヘルプを出して、バトンタッチしてもらった。
私が計算した答えが、問題集の回答と合わないと、どうしてだろうと、
教えるのはそっちのけで、検算に夢中になってしまい、
肝心の甥っ子は遊びだしたり。
何をやっても、私はなかなか大人らしい大人にはなれず、
夏休みの光景もさまざま。

それにしても、こどもはいつも現在形で、
“今”に没頭させてくれる。

大人は、ややこしいのに、つい過去を振り返りがちで、
親から、昔の愚痴を聞かされて、いらだつ自分がいたり、
歯に衣着せない口喧嘩の延長の、売り言葉に買い言葉で、
行き遅れで可哀そうとか言われて、ひそかに傷ついてる自分がいたりもする。

そうして、大阪に帰ってくる道中、感じることは、
愛知の現実も、大阪の現実も、どちらも私自身の現実ということ。
でも、なんだかどの現実も受け入れがたく、どこにいる私自身も認めたくなくて、
エスケープしたい気持ちがあって
映画やら、音楽やら、こどもと遊んで没頭したりしてるのかなと思ったりもした。

とはいえ、こうして自分ひとりが
好き勝手にできる空間、根城があるというのは、感謝すべきことで、
稼ぎもなく親元に戻れば、いきなり人生は振出しのどうしようもないところに戻ってしまうわけで、
そういう意味では、
とにかく仕事があって、自分ひとりで食っていけるということが
どれだけ、自分が生きていく上で、大切な土台になっているかもまた痛感した。

そんなこんなで、見なくて済んでいた現実も見せられたりして、
いろんな思いが去来する帰省になった。

こんなときに思い出すのは、小津安二郎監督の『東京物語』。
老夫婦が、尾道から東京まで出てきて(当時は、夜行列車で一昼夜かかる)、
息子の家族や娘の家を訪ね、旧友にも会う。
孫に会って楽しいこともあれば、
息子や娘から冷たくされて心細い思いをしたり、
いろいろあった末、
寝床で、老夫婦が互いに
「わたしたちはいいほうでさあ」
「そうさ、いいほうさ」と言い合う場面だ。
欲をいえば、きりがない、ほどほど幸せにやっている子どもたちの姿をみて
今あることに感謝し、互いの幸せを確かめ合う。
そう言えること、そう思えることが、どれだけつつましやかで、あらまほしき生き方か、
年を重ねれば重ねるほど、身をもってわかるようになってきた。

小津映画の奥深さはしんしんと迫ってくる。
笠智衆さんのような、諦観した、すてきな大人になるには、
私はあと何年かかるだろう…。

映画は、現実に向き合い、乗り越える力をも、そっと示してくれる。

コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
「みんな元気」 (JNK)
2013-08-23 15:31:57
妻に先立たれた夫をデ・ニーロが演じていて、子どもたちを訪ねてアメリカを横断します。
観たときは東京物語と結びつけて考えませんでしたが、コラムを拝見して思い出しました。

こどもたちは今を生きている、という言葉が心に残りました。だから、こどもと大人はいつも少しずれてしまうのかもしれませんね・・・
大人はいつでも、将来の心配をしていたり、過去を振り返ったりに忙しいから。
 
 
 
INKさま (ぱらぱら)
2013-08-24 14:32:15
コメントありがとうございます。
『みんな元気』はジュゼッペ・トルナトーレ監督の『東京物語』へのオマージュとありました!残念ながら観そこねましたが、「こどもたちは今を生きている」というのは、すてきな言葉ですね。
とりわけ、わが子だと、将来を思ってしまうのが、親としての率直な心情でしょう。弟をみてるとそう思います。
すてきな言葉、ありがとうございます。
なかなか新作観れませんが、ぼちぼちという感じです。
 
 
 
Unknown (JNK)
2013-08-24 18:23:18
あっ「こどもたちは今を生きている」というのは映画の中のセリフじゃなくて、ぱらぱらさんのコラムからとった言葉なんです。
正確には、こどもたちは現在形で今に没頭させてくれる・・・とあったのですが、私の解釈でこういうことかなと。紛らわしかったですね~
ちなみに映画は劇場未公開だったようです。
 
 
 
JNKさまへ (ぱらぱら)
2013-08-25 01:10:42
子育て真っ最中のJNKさんに、共感してもらえて、いいフレーズをもらい、とてもうれしいです。

あ、今、気がつきましたが、タイトルに似たようなこと書いてました。我ながらひどい忘却ぶりで、お恥ずかしいかぎりです。
『東京物語』にオマージュをささげた映画が、日本で劇場未公開なんて、本当に残念なことですね。いつかぜひ観てみようと思います。
 
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