日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

防災の日に思う「大災害発生と企業の対応責任」

2011-09-01 | 経営
9月1日は防災の日、東日本大震災を受け各地で例年以上に力の入った防災訓練が行われた模様です。

今年の訓練の大きなテーマは、大震災発生時の対応。3.11発生時の「反省」を踏まえてのものです。ニュースで見ただけなので詳しい事情は分かりませんが、一部での交通規制をかけた大掛かりな訓練をはじめとして、報道を見る限りでは行政主導のものがその中心であったように受け止めました。しかしながら「反省」と言う観点で捉えるなら、災害発生時の企業の対応にこそ大いに「反省」が求められるのではないか、と思っています。3.11の発生は午後3時前。揺れの収まりを待って、企業では従業員に対し「自主帰宅選択」を申し渡したところが大半であったと聞きます。しかし、問題はこの対応が多くの「帰宅難民」を生み、また交通大渋滞を引き起こす大きな原因にもなった点にあります。

本日行われた交通規制訓練は、都内主要道路の通行を規制し緊急車両優先の交通路を確保する訓練であったと聞きます。しかし、3.11発生次の現実は幹線道路は立錐の余地もない大渋滞を引きおこし、とても緊急車両の通行路確保などままならない状況であったのです。原因は先にも申しあげたとおり、公共交通機関が全面ストップする中での帰宅従業者が外に繰り出したことで、帰路急ぐ車と迎えに向かうその家族の車などが一斉に道路にあふれ、道路が全く動かない状況を作り出したのです。震災後の各方面有識者からの指摘事項でも、企業は責任を持って従業員の安全を確保し、「帰宅難民」を極力生まないよう対応をすべきであったという意見が多数出されてもいました。

企業の防災訓練は、今も昔も災害発生直後の非難経路誘導を中心とした安全確保がその中心です。もちろんこれも大切ではありますが上記の観点から考えるなら、震災後交通機関運行状況を確認しながらも混乱を避ける意味での企業内待機の訓練付けと、いかにして職場で大災害発生時の一夜を安全に過ごすのかの訓練も具体的におこなうべきなのではないでしょうか(ある程度行っている先もあるとは思いますが)。指示を出す管理者も、従業員一人ひとりも、職場にいるときに大災害が起きた場合にはどうするのか、「基本は職場待機」のルール付けを各企業が明確化する必要があるのではないかと思うのです。街中で被災した従業者はともかくとして、災害発生後に企業が新たな「帰宅難民」を生むような行為を容認する行為は絶対に避けなくていけないのです。

企業の中でも一番訓練をしなくてはいけないのはJRでしょう。3.11当日、駅のシャッターを閉め人々を駅構内から締め出したことが、「帰宅難民」の悲劇を増幅させる大きな要因になったのですから。大災害発生時の対応マニュアルを見直ししているという話は聞こえていますが、本日この問題に関する再発防止訓練はしっかりなされたのでしょうか。「帰宅難民」誘導訓練は品川駅で行われたようではありましたが、JR全駅で災害発生時の構内の人々の誘導と一夜を越すための場所の確保、非常用用品や水、食料の支給などまで、具体的な訓練をしなくても大丈夫なのでしょうか。品川駅の訓練をパフォーマンスであるとまでは申し上げませんが、いくらマニュアル化されていようとも全職員が日頃から訓練をしていないことは、いざと言う時に支障なくできるとは到底思えないのです。

大事に至らなかったことは、どうも反省がされにくいのが世の常です。しかしながら、多くの「帰宅難民」を生んだ個別企業の対応や、はからずも「帰宅難民」となってしまった人々を大いに困惑させたJRの対応は、それで死者が出るなどの致命的ダメージはなかったという理由から疎かにされてもいいものではなく、企業経営として大いに反省し再発を防止すべき重要なことであると思うのです。災害時対応は単に行政だけではなく、その発生時にはむしろ多くの被災者に直接影響力を持つ企業が最も重い責任を担っているのだという意識を持ち、マネジメントの重要項目のひとつとして取り組む姿勢が求められていると思います。

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