日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ1 ~ コンプラは会社の“エンジン”

2007-09-10 | 経営
銀行時代に見てきた多くの経営者の方々や、今独立してお手伝いしている会社の経営者の方々、あるいは「B TO B」の関係でお付き合いをいただいている経営者の方々…。経営者の方々との接点の中で、卓越した行動力や素晴らしい発想、たゆまぬ努力、ふところの深い慈悲の精神、難局を乗り切る精神力、常に絶えることのない人知れぬ苦悩など・・・、それらを見、聞きし共に考える中で、実に多くのことを学ばせてもらっています。

コンサルタントとしての永遠のテーマは、「中小企業の経営者にとって、正しいマネジメントはどうあるべきなのか?」
必ずしも答えはひとつではないはずですが、私なりに考える部分を、過去の、そして現在進行形の経験と思考の中から、少しづつ書き留めておきたいと思います。

今回ブログをはじめた大きな目的のひとつは、お取引や交友関係を形成していただいている方々との接点の中で蓄積された(あるいは現在されつつあるものも含め)自分のコンサルとしての財産を、文字にして整理をしておきたい、ということでもありましたから。

題して「経営のトリセツ」。テーマはランダムな取り上げになるかもしれませんが、定期的に少しづつ書き留めてまいります。

では第一回。テーマはコンプライアンス。

「現在の経営者にとって、一番大切なことは何か?」と問われれば、迷わず「コンプライアンス」とお答えします。
雪印、パロマ、不二家、ミートホープ、白い恋人(社名は何でしたっけ?)・・・、大きな社会問題に発展するコンプライアンス違反事例が相次いでも、なおコンプライアンス問題で、会社の存続を危うくする企業が後を絶ちません。
上記企業の例を見れば分かるように、コンプライアンスは少しでも甘く見ようものなら、会社そのものの存在を即座に揺るがしかねない重要なマネジメント要素になっているのです。

昔はよく、「営業」と「総務・管理」は車の両輪などと言われ、コンプライアンスという日本人には耳慣れない言葉が国内に入ってきた10年ほど前には、その両輪に対してコンプラは暴走しないための「ブレーキ」であると言われたりしていました。
しかしながら、現在のコンプラの位置づけは随分と違ってきています。重要性は格段に増し、コンプラを意識できない企業は退場を命じられると言っても過言ではない状況です。
そこで私は中小企業経営者の方々には常々、「コンプラは車のエンジンである」とお話するように心がけています。

すなわち、両輪がどんなにすばらしく回転するようにできていても、エンジンが動かなければ前には進まない、エンジンが壊れてしまえば車そのものが役立たずになる、ということです。
この表現で、その大切さがよくお分かりいただけるのではないでしょうか。

では、そもそもコンプライアンス(法令順守)って何でしょう?
間違った認識の経営者の方々がけっこういるように思いますので、間違いやすい点を思いつくままに箇条書きで記します。
①法令順守とは、法律だけを守っていれば良い訳ではない。
②法令順守とは、規制効力がある法令を守ることが目的ではない。
③マナー、常識等を常に判断基準にした行動をとれることが、コンプライアンス上必要とされている。
④「他社がやってるから」、「自社だけではないから」、「今までもやっているから」、「業界の通例だから」等は通用しない。
⑤仮に自社を守るためであっても、絶対に反社会的勢力との付き合いや利益供与はしてはいけない。
⑥コンプラ違反を社内で見つけた場合、「今回だけは見逃してやる」はタブー。
⑦「見つからなければいい」、あるいは「実際に誰にも迷惑をかけていなければいい」はありえない。
⑧コンプラ違反に「親会社、大口発注元の意向だから仕方ない」「指示した親会社、発注元の責任であって当社には責任はない」はあり得ない。
⑨社員個人のプライベートにおける法令違反でも、道義的に会社の管理責任を問われる。
⑩新聞、雑誌、ネットのコピーなど、「著作権」「知的財産権」をなめると痛い目に会う。十分な勉強が必要。

他にもいろいろありますが、今この場で思いついた中小企業経営者の方々が意外に陥りやすいコンプラミステイクポイントをあげるだけでも、すぐに10項目程度は浮かんできます。

解説を少々。

①~③は基本的に同じことを言っています。あえて何度も言及しているのは、それだけここが甘い経営者が多いと感じてるからです。「法律に違反してないんだから、問題ないでしょう?」という考え方は最も危険であると考えるべきです。ホリエモン事件を反面教師としてよく考えてみるといいと思います。

④もよく耳にします。「他社もやっているのに、うちだけやらなかったら競争に勝てない」などと言う経営者もいると思います。経営者として「インチキしてまで勝ちたいのか?」と自問自答してください。
経営者の愚かな判断が、会社を追い込み社員を路頭に迷わせることにもなりかねません。知らないうちに他社が一斉にインチキを止めて、あなたの会社だけが摘発されたら、会社は確実に終わりです。その段階で、「うちだけじゃない!」と叫んだことろでどうにもなりません。

⑤は言わずもがな。大企業ではもはやあり得ないでしょうが、中小企業、特に地方企業では今だに地場の「ヤクザ」とのつき合いが残っているように聞きます。「やつらが絡んでる興行のチケットを買っておけば嫌がらせされないで済む」などという話はいまだに存在しています。思い当たる経営者の方には、反社会的勢力とはどういう存在であるのか、そこに資金供与することがどういうことなのか、今一度よく考えて欲しいと思います。

⑥、⑦は昭和の時代には許されたことでしょうが、今は論外です。最近またぞろ出てはワイドショーを賑わせている中国の「違法」「インチキ」「嘘」商売は、たいてい⑦のたぐいですね 。中国の事例が世界的に問題視されていることを考えれば、その重要性が自ずと分かろうというものです。

⑧も中小企業にありがちな問題です。コンプラはすべて自社責任の問題です。親会社であろうと発注元大企業の指示であろうと、一企業としてとった自社の施策は、自己責任であることを忘れてはいけません。

⑨は確かに事件内容によっては、「個人の起こした問題であり、勤務先としては一切関係ありません」というコメントで逃げるケースも見受けられます。しかしながら、「勤務先はどういう教育をしてたのか」「勤務先の会社風土に問題があったのではないか」、という世間の批判は避けがたいものであり、それが原因で「会社のイメージダウン→取引縮小」というケースも間々ある話です。人間としての社員のモラル管理は、企業にとって重要なリスク管理のひとつであるという認識が必要でしょう。

⑩コピー機やパソコン接続のプリンターが、どこの会社や個人商店にもある時代です。うっかりコピーした他人の著作物を、ビジネスに利用しているケースもありがちです。悪意のあるなしにかかわらず、知的財産権の問題は経営者として、常に意識をしていなくてはいけないと思います。

このように、コンプライアンスは決して難しく縁遠い問題ではなく、どのような企業にとっても至極基本的なかつ身近でありながらリスク管理が必要な問題です。
中小企業の経営者が普段一番意識しているリスク管理は何かと尋ねると、「資金繰り」という答えが返ってくるケースが多いです。確かに「資金繰り」がつなかければ「黒字倒産」もあるわけで、経営者にとってものすごく心配な問題であるのはよく分かります。キャシュフロー経営がクローズアップされる以前の昔から、社長が信頼できる「金庫番」を作りたがったのはそんな理由も大きいのでしょう。

「資金繰り」は、万が一急に詰まったときも銀行など緊急に助けてくれるブレーンは作っておくことが可能です。しかしながら「コンプラ」は、問題が発生したら、もう外部から手助けをすることは不可能に近いのではないでしょうか。その意味では「資金繰り」以上に日頃の管理が必要なリスクであると思います。
このコンプラリスク管理を常日頃から徹底するために、現代では企業の大小を問わず「金庫番」ならぬ「コンプラ番」が必要であると私は思っています。

コンプライアンスの基本が学べる資格として、「コンプライアンス・オフィサー認定機構」認定の「認定コンプライアンス・オフィサー」という資格があります。決して難しい勉強が必要な難関資格ではありませんので、各企業の「コンプラ番」づくりに活用してみてはいかがでしょうか。

※「コンプライアンス・オフィサー認定機構」ホームページ http://www.occo.or.jp/



















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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
通信講座 (ひな)
2007-09-11 08:10:09
いままさに通信講座でコンプライアンスを勉強中です♪
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コンサルの出番 (ヒゲプレジデント)
2007-09-11 10:54:42
中小企業のコンプラは一言で云えば、経営者次第ですね。東横インの社長が「ちょっとスピード違反しただけのこと」と表現しましたが、そのような経営者が大多数ですよ。
社内の人間が指摘できるとは思えないので、やはり大関さんのようなコンサルがその必要性を説かないとなかなか理解できないです。
ところで「デンシャミチ」は出足は良かったのですが、少しレール不足のようでしたね
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座布団1枚! (OZEKI)
2007-09-11 23:26:30
ヒゲさん、どうもです。

“デンシャ”の失速は、先週の台風の影響かとばかり思っていましたが、“レール不足”でしたか?

うまい!座布団1枚ですね。



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