日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

ドコモのNOTTVは“iPhone諦め宣言”?

2012-02-22 | ビジネス
NTTドコモが4月からスマホ向け放送事業に参入するそうで。ドコモと民放などが出資するmmbiが独自の番組を制作してスマホで見れるようにするというサービス、NOTTV(ノッティービー)と言うそうです。月420円の有料放送で、ニュースやドラマなどを3チャンネルで24時間流すとか。「通信と放送が融合した新しいサービス」と鼻息が荒いようですが、果たしてこのサービス、スマホ利用者に受け入れられるのでしょうか。

NOTTVはテレビの地デジ化に伴って空いた周波数帯を使うことで、回線の混雑による通信障害が発生しない配信が可能になるので、このところのスマホ急増のあおりからきた通信障害で何かと悪い評判ばかりのドコモにとってはイメージ回復の切り札であるのかもしれません。しかしながら問題点も多数はらんでいるようで、このサービスの評価がいかなるものになるのか予断を許さない状況ではあるようです。

一番分かりやすい問題点は、端末のこと。NOTTVの番組は、専用アンテナを装備した特定の端末でなければ見ることができないという半端なサービスであるようで、初年度で100万契約、3年後には600万契約を計画しているというのですが、それはちょっと難しそうな気がしています。料金も従量制ではなく、固定額月420円をわざわざ払って新規契約するというやり方なので、よほど魅力的なコンテンツがそろわなければワンセグでテレビもYOUTUBEで動画もタダで見れる時代に、なかなか契約のハードルは高いのではないかなと、人ごとながら心配になったりもするわけです。でも、ここはまだいいとして…。

何より、「このガラケーまるだしのサービスを、ホントにスマホ向けでやるの?」って言う疑問を抱かざるを得ないのが最大の問題点である気がします。そもそも日本の携帯電話機器は、世界の携帯市場から分離した大半の利用者には“なくてもいい”独自先端技術化によるガラパゴス化した市場として発展したために、それがすなわち日本の携帯電話メーカーの世界シェア拡大の足かせにもなってきたわけです。それがここにきて、日本市場におけるスマホの急拡大により、ガラケー文化を一掃し世界基準的携帯業界への移行の大チャンス到来であったように思うのですが、なぜかまたここでドコモがガラケー化新サービスを、しかもスマホ向けにって一体何でしょう???

思うにこれは、ドコモの対iPhone対抗スマホコンテンツなわけなのかなと。その証拠に、iPhoneを擁するauもソフトバンクもこの通信放送サービスへの参入は“静観”なわけで。iPhoneがないから、ドコモは手を変え品を変えガラケー戦略をスマホにまで仕掛けてくるのではないでしょうか。ワンセグやお財布ケータイとか既存サービスのスマホへの付加はまだしも、新たにまたガラケーサービスを載せるというのはなんか違うんじゃないかなぁと違和感を覚えるわけです。そもそも、そのスマホ向けオリジナル放送って、そんなにニーズがあるものなのでしょうか。どうも私には、アップルとどこまで行っても交渉決裂の状況が悔しく、苦し紛れに「うちのはこんなこともできるんだぜ!」と全く別のことで自己満足して紛らわす行為、心理学でいうところの「代償行為」のようにも見えてしまいます。もっと言えば、いよいよ諦めたのかなぁとも。

曲がりなりにも日本の通信トップ企業であるドコモが今回、我が国携帯業界の国際基準化の流れを阻止するかのようなスマホのガラケー化新サービスの動きをとっている姿を見るに、同社のiPhone取り扱いの可能性は限りなく少なくなったかなと思わずにいられません。