日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

東電VS相撲協会、“おバカ競争”の行方

2012-02-01 | ニュース雑感
東電と日本相撲協会は、つくづく日本を代表する“おバカ組織”であると思わされます。

まず東電、西沢社長がまた昨日の会見でやってくれています。大株主東京都の猪瀬副知事が噛みついた企業向け電気料金の値上げに、経産省の「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議」から提言される内容を受けて「原価」の見直しをし、家庭向けと併せて法人向け料金にも反映させると。全然ピンボケじゃないですか。同会議のやっていることは、積み上げ方式「原価」の中身に入れるもの入れないものの適否判定の問題が重点であり、猪瀬氏が言っていることは前回当ブログでも申し上げた、中身一つひとつに関する削減目標とそれを実現する具体的な削減策の提示とセットで削減努力を値上げよりも優先せよと求めていることです。

明らかな目くらましでしょう。会議のミッションを故意に拡大解釈し、「政府の会議が提言したことに従った対応策をしたのだから、それに従って経費増が提示できれば料金をあげても文句あるまい」という、あまりに図々しい姿勢がまたぞろ出てきたという感じであります。それをもって「議論の結果をきちんと料金に反映させていく」と言い放っているわけで、被災者ではない私が聞いていても頭にくるような物言いの連続であり、被災地の人たちの怒りやいかばかりであろうかと思います。

前回西沢社長が言った「料金値上げは権利」という考え方に対して、これだけ世間の批判を浴びているのにもかかわらず全く考えを改める気がないということなのでしょう。ならば「権利」の前に果たすべきは「義務」であるということを、国はもっと明確な形で示す、すなわち「国有化」という態度で示す以外にないということがハッキリしました。昨日、古川経財相が西沢社長と面会し「値上げの経済への影響をどう考えるのか」とただしたと言いますが、西沢氏はあくまで組織防衛の一心から「値上げ=権利」をふりかざしたのみだったとか。ここまで来るともうお話になりません。問題が長引いていい結果などひとつもないでしょう。この腐りきった組織風土を見るに、早急に国が3分の2以上の議決権を握る「国有化」を発動することは、国民経済を守る上での「義務」であると思います。

一方の日本相撲協会。30日の理事長選で、たび重なる不祥事で引責辞任した北の湖、九重親方らが何事もなかったように復帰して、しかも組織トップの理事長に北の湖、№2の事業部長に九重という布陣で“新たな船出”というのですから、「バカかお前らは!」と常識的な一般人は思うところです。しかも、外部有識者でつくるガバナンス委員会が昨年2月に求めた改革案として「理事の約半数は外部から起用すべき(現在は12名中2名のみ)」というものがありましたが、引き続き10名は親方からの選出という全く無視の姿勢。それに関するコメントもなし。

人間太ると神経も図太くなるのでしょうか。全く我関せずのようです。これでは、ガバナンスではなくて「バカナンス」です。もしかして相撲協会の理事の皆さん、ガバナンスの意味を御存じないとか?あり得そうで怖い。こちらは東電とは違い国民経済への影響はないのでどうでもいいと言えばどうでもいいのですが、一応「国技」としての自負をもって公益財団法人への移行を目論んでいる立場なわけですから、「国技」を名乗る競技団体の在り様として一国民として恥ずかしい限りではあります。

おかれた立場に関する現状認識の甘さと言ったら、東電も相撲協会もいい勝負です。共に組織運営の主導権を守りたいがための、誤った選択を恥ずかしげもなく堂々と世間に晒してしまっている“おバカ組織”なわけです。この“おバカ競争”、見ているだけで腹立たしい。国民生活に不可欠なエネルギーインフラ企業と「国技」団体がこれ以上日本の恥を世界に晒すようなマネをする前に、国の責任において一刻も早くストップをかけるべきではないでしょうか。