日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

売れ筋ブック・レビュー~「過去問で鍛える地頭力/ 大石哲之」

2009-07-09 | ブックレビュー

★「過去問で鍛える地頭力/ 大石哲之(東洋経済新報社1500円)」

「地頭力」と言えば、コンサルタントの細谷功氏が一躍ベストセラーを放ったテーマで、その後も「地頭力」を冠に付した著作を出しています。てっきり本書も細谷氏の著作と思いきや、さにあらん。細谷氏の近作は、以前ご紹介のとおり名ばかり「地頭力本」でありますので、ならばとの同業者が名乗りをあげてこられたと言った感じです。

大石氏はコンサルタントの転職ナビを運営する大手ファーム出身のコンサルタント。「過去問」とはまさに、大手ファーム入社試験の「ケース面接」で出された問題を集め、その考え方を披露することで結果的にロジカル・シンキング的思考を身につけてもらおうという趣向のようです。すなわち、表向きは「過去問」の模範解答集ですが、決してファーム志望者向けの本という訳ではなく、むしろ広く一般ビジネスマン向けにロジカルな頭すなわち「地頭力」を鍛える材料を提供してくれてる書籍なのです。

全20問収録で、前半は「東京都内にタクシーは何台あるか?」といったフェルミ推定系10問、後半は「おしぼりの売り上げを伸ばすにはどうするか?」といったビジネス・ケース系10問。フェルミの方は、細谷氏の代表作「地頭力を鍛える」ともダブる部分が多いのですが、後半は実際のビジネスの中で具体的な相談事をいかなる思考経路でより正統性の高い解決策に導くか、まさにコンサルタント的MECEな分析での問題解決法が披露されています。前半、後半とも、それぞれ思考の組み立て方法を学ぶことがメイン・テーマであり、「過去問」を切り口に「地頭力的思考回路紹介」をするあたりは、さすが転職ナビ管理人といった感じがします。

本書は一言で言えば、問題、課題の本質をいかに捉えるか、そのためのロジカル・シンキング・トレーニング本ということになると思います。ロジック・ツリー、マトリクス思考、フレームワーク思考などの具体的な活用方法を、「過去問」の解決過程に沿って紹介していきますので、事前に一冊ロジカル・シンキングに関する本でも読んだ上で本書を手に取ると、とても楽しく読めるのではないでしょうか。

10点満点で7点。「過去問」を使いながら、ロジカル・シンキングの基本を教えると言う切り口はかなりおもしろいと思います。マイナス点は、20問の問題のひねくれ度にややバラつきがあって、本質を探る過程が本当にロジカルと言えるかどうかやや疑問なものもあるように思えた点。言い方を変えると、ロジカル・シンキングを教えるのに、果たして適切な実例ばかりであるか否かはやや疑問ということです。まあでも、時間つぶし的“脳トレ本”として考えればイケてる部類であると思います。