日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

景気回復はV?U?W?…L?

2009-07-06 | その他あれこれ
日銀が6日、各支店からの景気報告を取りまとめた「地域経済報告」を発表。足元の景気については「悪化ペースが鈍化しており、下げ止まりつつあるものの、引き続き厳しい状況にある」と総括しました。ポイントは、前回報告(4月)の「若干の地域差はあるものの、大幅に悪化している」から判断を引き上げたこと。総括判断の上方修正は06年10月以来とのことで、地域別でも全9地域が景気判断を上方修正したそうです。これを受け白川方明総裁は支店長会議の冒頭で、景気の先行きについて「当面は下げ止まりの動きが次第に明確になっていく可能性が高い」との見通しを示しています。果たしてこのまま、今の「下げ止まり」=「回復の兆し」はうまく展開するのでしょうか。

景気回復動向は、よくアルファベットの形状になぞられます。その代表例が「V字回復」というヤツ。今回も、一部筋では日本のダメージは米国に比べればその比ではなく景気は「V字回復」が期待できるという、楽観的な声がありますが、果たしてどうでしょう。実際のところは、現時点で業況好転を実感しているのはトヨタ自動車はじめごく限られた業種の大企業ばかりであり、世間の大半を占める中小企業とその関係者をめぐる足元に関して言えば、まだまだ決して大きく改善はしていないように思います。

このような観点と今回の不況が業種が多岐にわたることも考え合わせ、国民の大半が景気回復を実感するまでにはまだ多くの時間がかかり「V字」よりゆるかな回復基調にならざるを得ないであろうと考えるのが、「V字」ならぬ「U字回復」なる回復カーブです(「V」に比べて「U」は登り方が緩やかな形を示している訳です)。さらには、同じ「U」は「U」でも、それが二つ並ぶ“ダブルユー”=「W回復」という見方も存在します。要するに景気の腰は決して底堅くはなく、現時点のような一度はゆるやかな回復基調に達しても、またもう一度景気は悪化し本格回復までにはさらにその後の緩やかな回復基調を待たなくてはいけないというものです。

さらにさらに、今の“景気底打ち”は認めつつも今後の見通しに関してより悲観的な意見を言う人の中には、「今回の景気回復は“ドットコム型”」という見解も出ているそうです。“ドットコム”=「WWW」、つまり「U」がふたつの“ダブルユー”=「W」がさらに3つ。景気は緩やかに上がってはまた下げ、緩やかに上がってはまた下げ、を繰り返し、本格的な好景気到来には相当な時間がかかる、とする見解です。この予測は、かなり厳しい見方ですね。ただ、今回の大不況の発信源である米国の現時点での先行き不透明感を考え合わせると、必ずしも厳しすぎる見方でもないようには思えます。

おまけにもうひとつ紹介しておく必要がありそうなのが、「L字回復」なる見方。底を打った状態が現時点の「下げ止まり」感であり、そこからさらに悪くなることはないもののよくなることもなく、延々「底這い」状態が続くというもの。ある意味、これが一番キツイですよね。「W」でも「WWW」でも、少なくとも上昇局面がある訳で、次に下降局面が待っていようとも、一時期潤うことで一息つくことが出来る訳ですが、「L」は一息つくことすらない訳ですから…。できることならこれだけは、避けたいものです。

この景気回復カーブに大きく影響を与えそうなのが、この先予定される総選挙の結果でしょう。政権政党の政策如何によっては、景気回復が「U」になるか「W」になるか「ドットコム(WWW)」か、はたまた「L」に陥ってしまうのか、にも大いに影響を与えるであろう大変重要な選挙になると思われます。その意味では、我々国民一人ひとりがムードやイメージばかりに流されて投票を決めるのではなく、各党のマニフェスト記載の政策内容に真剣に目を通す必要があるように感じています。