日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「骨太09」は、政治家と官僚の「思惑」に満ちたごまかしの産物か?

2009-06-10 | ニュース雑感
このところ、日本郵政西川社長の人事問題ばかりが、クローズアップされていますが、このどうでもいいニュースの陰で至って重要なニュースがサラリと流れています。

財政再建の道筋を示すべき政府の「骨太方針2009」関連報道。その口火を切ったのは、9日の日経新聞1面トップ「財政再建2020年に先送り」という政府の経済財政運営の基本方針となる「骨太09」の骨子が明らかになった、との記事です。そもそも「骨太方針」は、小泉内閣時代の06年に「基礎的財政収支の黒字化を2011年度までに達成する」と大風呂敷を広げたものであり、当ブログでは以前から当事者である官僚の皆さんの意識が希薄な現状の生ぬるい官制改革の下では、歳出の絞り込みが出来ず目標達成は夢物語であると、警鐘を鳴らし続けてきた問題であります。

今回の「骨太09」では、「基礎収支は10年以内に黒字化」と「06」で掲げた締め切りの大幅な延期を申し出ています。問題は延期そのものではなく、その理由を「追加経済対策による国債の増加や景気悪化に伴う税収の落ち込みで実現は困難になった」と記し、10年代半ばまでに消費税を含む税制抜本改革を実行するという政府の「中期プログラム」の着実な具体化を強調するという、歳入改革についてのみの具体的な見通し記述をしていることにあります。すなわち、歳入改革以上に大切な歳出削減にまったく触れていない。これには明らかに恣意的なものを感じさせる対応であります。

この点は、「骨太09」が「06」で掲げた「2011度の基礎的財政収支黒字化目標は達成不可能」とするだけで、その後の道筋を示していないことにもつながります。つまり、歳入増加の見通しを述べつつも、歳出削減に触れていない今回の「骨太09」では道筋を示そうにも示せないという訳です。これではまったく子供だましもいいところ。追加経済対策による歳出の増大はあるものの、支出の削減そのものについてまで景気対策を隠れ蓑にして知らん顔を決め込んでいる訳です。

その理由のひとつは、総選挙をにらんだ与党側の景気経済対策での対有権者人気取りの必要上、今歳出にタガをはめるのは好ましくないという思惑でしょう。そしてもうひとつは、それに便乗した原案作成の官僚たちのズル賢さです。「歳出削減→経常支出削減→官僚制度改革」という流れをなんとしても阻止したい官僚の思惑は、与党の先の思惑を利用した形です。日経新聞によれば、「歳出削減を巡ってはこれまで明記してきた『骨太06の堅持』『最大限の削減』といった言葉が今年は与党との調整に入る前の段階で早々と姿を消した」という記述があり、これは与党の思惑を先読みしての官僚の策略があったことを、示唆して余りある表現とは言えないでしょうか。

官僚が管理する財政のムダ遣い全廃と不透明さの解消を徹底的に実行すること、これが今後税制抜本改革を実行するとしている政府の「中期プログラム」に対する国民の了解を得る大前提であることは、これまでも何度も主張してきたとおりです。民間企業の財務改革でもそうですが、明確な部門別・使途別の削減目標数字および達成目標期日の設定と、その前提となる現状の経常支出内容の詳細な開示なくして改革は進行するハズがありません。景気回復による税収入の増加と税制改革による増税でいくら歳入の増加をはかろうとも、現状のザルのごとき無駄遣い財政を改めない限りは、いくら基礎収支黒字化目標を先延ばししようとも達成できるハズがないのです。

官僚の既得権堅持目的での策略は、絶対に許してはなりません。総選挙に向けた与党の事実上のマニフェストである「骨太06」。野党第一党の民主党はこれをどう受け止めるのか。彼らなりの政策を、財政再建への道筋を歳入、歳出両面からしっかりとした形で論じ、つまらぬスキャンダルがらみの足の引っ張り合いではなく、総選挙に向け“二大政党”による明確な政策論争が展開されることを期待します。