日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

WBC監督選びに対するイチロー発言は、“真の一流”の証

2008-10-20 | その他あれこれ
野球世界一決定戦WBC監督選出問題で、大リーグ=シアトル・マリナーズのイチロー選手が、加藤プロ野球コミッショナーーと王、野村、高田、星野の監督経験者らによる監督選出に向けた会合(=WBC体制検討会議)で、“最良の監督選び”に関して「WBC開催時期である来年2~3月と言うシーズン開幕直前は、現職のプロ野球監督にお願するのは難しい」という意見で一致したことに噛みつきました。

イチロー選手の発言趣旨は、
「最強のチームをつくるという一方で、現役監督から選ぶのは難しいでは、本気で最強のチームをつくろうとしているとは思えない」
「もう一度、本気で世界一を奪いにいく。WBC日本代表のユニホームを着ることが最高の栄誉であると皆が思える大会に自分たちで育てていくことが必要」
「大切なのは足並みをそろえること。北京の流れから(WBCを)リベンジの場ととらえている空気があるとしたら、チームが足並みをそろえることなど不可能」
というものです。

前回の会合以降、一度は消えかけていた「星野再登板」が暗黙のうちに現実味を帯び、野村氏による王貞治氏が同会議で星野氏をWBC監督に推したとの暴露発言が飛び出すに至って、いよいよ本決まりかと思えた矢先のコメント。絶妙のタイミングと言っていいでしょう。野村氏の暴露がなくとも、会合後の各出席者の発言をつなぎ合わせると、「星野さんに再登板願うのが一番!」と聞こえていましたから、我々マスコミ経由で聞く第三者にもなんか変だぞと思わせていたところではあった訳です。

そもそも、出席者が口をそろえて言っていた「現職のプロ野球監督の就任は難しい」との話は、見ようによっては、野村氏ら名前が挙がっている現職を排除して、星野氏に落とし込もうと言う意図が見え隠れする発言だった訳で…。もちろんそうなる理由は、星野氏自身が恥も外聞もなく、“リベンジ”を望んでいるからに他ならないのです。

さすがはイチロー選手!この状況を察知して、実に的を得た素晴らしい意見表明でした。まさにおっしゃるとおり、世界で活躍する一流選手はやはり「勝つために本当に必要なこと」を心得ています。「WBC日本代表のユニホームを着ることが最高の栄誉であると思えるためにどうすべきなのか」、「(WBCを北京の)リベンジの場ととらえることの愚かさに早く気がつくべきだ」という意の彼の発言は、五輪で惨敗した星野氏再登板批判そのものであり、日本的な“二流”の考えをグローバルな視点で捉えた“真の一流”の考えで論破したことに他なりません。実に気持ちがいいモノ言いです。

思えば前回2年前の第一回WBCにおいて、過激とも思える発言も含め崖っぷちの日本チームを奮い立たせ牽引し、優勝の栄光に導いたのはイチロー選手に他ならなかったのです。そして、彼が不参加だった北京五輪は“仲良し管理者軍団”の下、感情的なリーダーにチームはかき回され惨敗の憂き目を見た訳です。この違いを見れば歴然。次回勝つために今何が必要であるのか、イチロー選手は誤った方向に向かっていたベテラン指導者たちにいみじくも教えてくれたのです。

この発言を受けて、王氏は「イチロー君の発言で、また違った意見が出るかもしれない」、高田氏も「日本一チームの監督がやるのがいいと」と提案する意向を示したといいます。一体誰の思惑であったのか詳しくは分かりませんが(少なくとも星野氏と彼をバックアップする権力者だとは思います)、「星野再登板」という再びの惨敗へ向かう最悪の“談合監督”誕生劇にはストップがかかったように思います。

組織におけるリーダーの選出は、プレーヤーたちの士気にかかわる重要な問題です。企業組織においても、ダメな管理者を部長職に指名したがために、部門の士気が下がり一気に実績がガタ落ちになるケースも実によくある話です。WBC監督選びも全く同様のお話です。前回失敗した短期決戦のリーダー不適格者を再選出する愚行は、果たして避けられるのか。27日開催の次回会合で、方向感が出される模様です。