日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

懐かしの商品から知る“スパイ・マーケット”の存在

2008-10-17 | マーケティング
一昨日、小学校時代の同級生と飲む機会がありました。その時の話題から、懐かしおもしろマーケティング・ネタです。

私が小学校の高学年の頃の話ですから、昭和45年前後。昭和45年は1970年、大阪万博の年です、と言えば40代半ば以降の方はだいたい「あー、あの頃の話ね」と思い浮かべていただけると思います。

一昨日の会話の中で、その当時の男の子の思い出の品として登場したのが、「サンスター・スパイメモ」なる商品。「おー、あったあったそんなやつ!」と次第に蘇る記憶とともに、実に懐かしい気持ちにさせられました。それと同時に思い出したのは、当時としては結構な高級品で自分は持っていなかったこと、もっている奴は少なくて、けっこう羨望の的な商品だったこと、などです。

写真を見てなんとなく思い出すでしょ?これでも思い出せないあなたに決定打です。この商品の機能の中でも一番の目玉で、特に“羨望の的”だったのが、「水に溶けるスパイメモ用紙」。どんなものだったのかは全然記憶にないのですが、何でも手帳についている枚数はかなり少なかったようで記憶では、近所のタケシくんというお金持ちの年下の子がこの「スパイメモ」を持っていたんですが、「水に溶けるメモを溶かして見せてよ」って頼んだら「2枚しかないからヤダ」って断られたのを思い出しました。

スパイってあの頃、子供たちの憧れの“職業”だったんですよね。なんでかなぁっていろいろ記憶をたどってみると、当時のヒットTV番組「スパイ大作戦」の影響なんですね、きっと。そう、あのヒット映画シリーズ「ミッション・インポッシブル」の原作版です。「スパイ大作戦」はけっこう遅い時間にやっていたから、毎週は見ていなかったものの、子供心に「警察じゃないけど密かに悪を退治する正義の味方」的なものって憧れていたように思いますね。例のキメ台詞「このテープは自動的に消滅する、成功を祈る」が衝撃的でかっいこ良かったですね。

考えてみると千葉真一、野際陽子の「キーハンター」も「ナポレオン・ソロ」も「007」もみ~んな、そんな正式な警察権力じゃないけど悪を退治する存在でしたよね。要は子供から見るとみーんな“スパイ”な訳ですよ。そう、彼らはみんな「水に溶けるメモ」を使っているに違いない、って子供心に思って、「僕も欲し~い」ってなる訳ですね。「溶けるメモ」=「自動的に消滅する」のイメージそのものなんですから。サンスターさん、やりますね。実に見事な、当時の対子供マーケティング戦略だったのです。

もっと小さい頃って、男の子ってたいていパトカーとか消防車とか、「正規」の正義の味方が大好きで憧れるじゃないですか。それがもう少しお兄ちゃんになると、「正規」は当たり前すぎてかっこ良くない気がして、“影の(ハゲのじゃないよ)”とか“裏の”とか“密かな”とかに憧れるようになる訳ですよ。その代表格が、“スパイ”的なものなんですよね。同じ“スパイ”でも「悪」はいけない、「正義」じゃないとね。

そうやって考えると、「探偵物語」も「必殺仕事人」も「水戸黄門」も「遠山の金さん」もみ~んなそうじゃないの。なるほど、「“正義”のスパイ・マーケット」っていうのは、実は世代を問わず男心をくすぐるマーケティング・ポイントだったりするんですね。こりゃ意外に深い!「サンスター・スパイメモ」から、思わぬヒントをいただいた私でした。