花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「橘(たちばな)文様」について

2011-03-01 | 文様について

presented by hanamura


いよいよ3月ですね。
ここ東京では冷たい雨が降る曇りがちの日も多いのですが、
雨が降るたびに暖かくなり、
少しずつ春めいてきているようです。
色とりどりの春の草花も、
まもなく花を咲かることでしょう。

花邑では、3月5日から13日まで
「花の帯展」を開催します。
春の装いに文字通り一花添えるような
草花をモチーフにした帯を数多く揃えました。

今日は、その「花の帯展」でご紹介するお品の中から
「橘(たちばな)」の文様についてお話ししましょう。

橘は常緑の小さな木です。
梅雨前に小さな白い花を咲かせ、
冬になると蜜柑のような実をつけます。

橘は、日本に自生する木として古くから
人々に親しまれてきました。
そして、一年中青々とした葉をつけるその姿から、
「永遠」や「長寿」の象徴とされました。

このことから、平安時代には未来永劫に平和な世が続くようにと、
宮中(京都御所)の紫宸殿(ししんでん)には、
御所を中心にして東に桜、西に橘が植えられました。
現在でも同じように桜と橘が植えられ、
「左近の桜」「右近の橘」ともよばれています。

まもなく迎える雛まつりでは、
左近の桜、右近の橘を模して、
桃の花や桜の花を左側に、橘が右側に飾られます。

宮中に植えられた縁起の良い木ということから、
橘は、平安時代の頃にはすでに文様化され、
絵巻にも登場しています。



上の写真は、橘文様の型染めです。
橘の文様は、ハートマークに葉を付けたように見え、
どこかキュートな印象があります。
上のような橘文様は、橘の果実と葉を意匠化したものです。

かわいらしいその姿形からは、
人々の橘に対する愛情が伝わってくるようです。

武家社会になると、
橘の文様は家紋としても多く用いられるようになり、
さまざまに意匠化された橘紋がつくられました。
また、その人気の高さから婚礼衣装の意匠にも
用いられることも多くありました。

そうしたことあって、
橘文様は現在でも吉祥文様として、
お祝いの席に身にまとう着物や帯の意匠に
使われることが多いのです。

橘は、これだけ古来より親しまれてきたにもかかわらず、
残念なことに現在では、絶滅が危惧され、
私たちが目にする機会もたいへん少なくなっています。

古くからあるものが失われていくのは
たいへん残念なことです。
上の写真の帯のような橘を見ていると、
せめて意匠化されたものであっても、
その姿を永く目に留めておきたいものだというような感慨が
いつも心に湧いてくるのです。

※写真の名古屋帯は3月5日(土)から「花の帯展」にて
 花邑 銀座店でご紹介します。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は3月9日(水)予定です。


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