presented by hanamura
梅雨が明けて、ぐんと暑くなってきましたね。
空にはもくもくとした入道雲が
どーんと居座っています。
先日、道を歩いていると
どこからか風鈴の「リンリーン」という
涼やかな音色が聞こえてきました。
暑い季節の風鈴の音は、一服の清涼剤ですね。
これからの季節には、
風鈴のように涼を演出する
心配りが随所に見られます。
もちろん、夏用の着物や帯の意匠にも、
目に涼しいものがたくさんあります。
今日は、その中のひとつである
「秋草文様」についてお話ししましょう。
「秋草文様」とは、
秋の野山などに咲く草花をモチーフにした文様です。
秋に咲く草花は多くありますが、
秋草文様にあらわされるものは、
「萩(はぎ)」「薄(すすき)」「葛(くず)」「撫子(なでしこ)」
「女郎花(おみなえし)」「藤袴(ふじはかま)」「桔梗(ききょう)」
といった秋の七草が中心となり、
ときには、菊や竜胆(りんどう)なども加えられます。
秋草文様には、
秋の七草が全部あらわされているもののほかにも
萩や薄のみといったものなどがあり、
その時々で草花の組み合わせは変わります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/53/2ccecca59e1452510d76a6dde08f5fca.jpg)
もともと秋の七草とは、
奈良時代の歌人、山上憶良(やまのうえ の おくら)が
秋に愛でる草花を選び、
詩にして詠んだのがはじまりです。
奈良時代~平安時代に編纂された
「万葉集」には山上憶良を中心に
秋草を詠んだ詩が多くみられます。
「万葉集」以降、
秋草文様は四季を代表する草花文様の中でも
もっとも人気のある文様のひとつとして
工芸品や日本画などの題材にも多く用いられました。
着物や帯の意匠は、
季節を先取りしたものが多いのですが、
夏のお召しものにあらわされる秋草文様は
とくに人気があります。
とはいえ、秋草文様は、決して華やかではありません。
どちらかといえば、秋の野山にひっそりと自生する草花たちです。
生命力がみなぎる夏が瞬く間に終わり、
涼やかな風が吹き通る秋に咲く草花からは、
「季節のうつろい」というものが
嘆息とともに連想されます。
そんなはかなさや侘びしさといった
和の風情を強く感じさせてくれる秋草文様は、
日本人の情緒にぴったりくる文様なのでしょう。
※写真の名古屋帯は花邑銀座店にて取り扱っています。
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次回の更新は7月27日(火)予定です。
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