花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

帯仕立ての道具 -針-

2008-01-29 | 帯仕立ての道具

presented by hanamura


「針」について

帯仕立てにはもちろん、
日常でもさまざまな場面で
大活躍をしている「針」。

昔からわたしたちは、
針穴に糸をとおして「縫う」ことにより、
複数のものを繋ぎあわせ、
ひとつの「かたち」をつくり上げてきました。

だれでも一度は、小さな針穴に細い糸をとおした
経験があるはずですよね?



この「針」の歴史はとても古く、
はじめに針が考えだされたのは、
紀元前4,000年~4,300年のエジプトでした。

当初の針は、骨から作られたようですが、
その姿は今の針とまったく変わらないのだそうです。
その後、金属の発明とともに
針は鉄から作られるようになりました。

日本では、604年(古墳時代)の地層から
骨で作られた針が出土しています。

平安時代になると、
針は広く知られるようになります。
戦国時代には鉄の製造が盛んになり、
鉄製の針が京都で数多く作られました。
この時代につくられた針の技術は現在にも受け継がれ、
「みやす針」として知られています。

このような「みやす針」を含め、
日本で作られてきた針は「和針」とよばれます。
西洋の針に比べ、弾力があり曲がりにくいのが特長です。
日本独自の縫い方である「運針」がしやすいように
考えだされた針なのです。

この和針には、長さや太さによって、
「三ノ一」「四ノ一」という暗号のような名前がついています。
前の数字の「三」は木綿のような比較的しっかりとした素材に、
「四」は絹のように薄い素材に利用します。
また、後ろの数字が大きくなるほど針が長くなります。

帯仕立てでは、中間ぐらいの長さで、しっかりとした素材用の
「三ノ三」の和針を使用して縫います。
この「三ノ三」の針は、縫う以外にも2つの作業で活用します。

まず、「仮止め」の作業で用います。
帯仕立てのときの仮止めには
頭に飾りがついたマチ針は使用しません。
「三ノ三」の和針で布と布を仮止めします。
「三ノ三」の和針のほうが、
マチ針より布と布をしっかりと止められ、
万が一、仮止めの針が外されず
帯を仕立て上げてしまったときでも
布目のあいだからスッと抜くことができるのです。

頭に飾りがついたマチ針では、
仕立てあがった帯をもう一度ほどいて抜くしかありません。

また、「目をとおす」という作業にも使用します。
「目をとおす」とは、布目に沿ってまっすぐに線をひくことです。



目のとおし方は簡単です。
「三ノ三」の和針を布に対して垂直に立て、
先の尖ったほうを布に軽く当てながら上方向に針を滑らせていきます。
こうすると、針が布目に沿って滑るため、
まっすぐな線をひくことができます。

布目は布のもつ性質のために
左右どちらかに少し歪んでいるのがふつうです。
その布目を無視して単純に定規などで線をひくと、
縫い合わせたときに、布目の合っていない、
歪んだ帯が仕上がってしまいます。

しかし、帯仕立てでもっとも重要な針の役割は、
やはり布を「縫う」ことにあります。

1枚の帯地は、たった1本の針によって縫い上げられ、
「帯」という「かたち」に生まれかわります。
何千年もまえからその姿を変えず、
活用され続けてきた針のもつ「ちから」。
この針のもつ「ちから」には
神秘的なものを感じずにはいられません。

その針のちからを借りて、
今日も一本の素敵な帯が仕立て上がりました。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は2月5日(火)予定です。


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