花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「鴛鴦(おしどり)文様」について

2012-02-08 | 文様について

presented by hanamura ginza



立春を迎え、東京では春一番が吹いたようで、
少しずつ季節は春へ向かっています。
それでも、まだまだ寒い日は多く、
北国では、雪が降り積もっているようです。

先週は、その北国で生まれた「アイヌ文様」について、
お話ししましたね。
日本の最北で生まれたアイヌ文様は、
北国の自然がもつダイナミックな生命力が感じられる文様といえます。

その北国には、さまざまな野生動物が
棲息しています。
今日、お話しする鴛鴦(おしどり)も、
北国でよく見ることのできる水鳥です。

鴛鴦は、カモ目カモ科に属する水鳥の一種で、
中国の東北部やシベリア、北海道などに棲息しています。

鴛鴦は、他の水鳥などと異なり、
河原で子を生むのではなく、
大きな木のうろで子供を生みます。
また、樹木の上をねぐらとして植物などを食べます。
大好きな食べ物といえば、どんぐりのようです。
そのため、大きな樫や椎の木がある土地にいます。

冬になり繁殖期が近づくと、
鴛鴦の雄は、銀杏羽(いちょうばね)とよばれる銀杏のような形の羽を生やし、
羽の色が橙色、深緑色、白色などの色彩となります。

その体色とともに、赤いくちばしを持った雄は、
たいへん色鮮やかな美しさです。
そのため、古来より人々に愛でられ、
文様化されて、さまざまな工芸品や着物の意匠としても用いられてきました。

中国では、鴛鴦の「鴛」は雄を指し、「鴦」は雌のことを指します。
ペアで活動する習性から相思鳥という別名もあります。

鴛鴦といえば、
「鴛鴦夫婦」という言葉をよく耳にしますね。
「鴛鴦の契り(えんおうのちぎり)」とは
夫婦仲が睦まじいことを意味します。
鴛鴦の雄雌がぴったりと身体を寄せ合い、
仲睦まじくしている姿にたとえていわれます。

実際に「鴛鴦文」や「鴛鴦図」も、
カップルの睦まじい様を表現する縁起物として、
中国の古くからの文物に数多く遺されています。
日本でも平安時代に有職文様として扱われたり、
正倉院には中国から伝わった、
鴛鴦が唐草で囲まれている刺繍の古代錦が遺されてもいます。

しかし、実際の鴛鴦は始終寄り添っているわけではなく、
いつも一緒にいるのは、冬の間だけです。
春になり、子を生むと雄は子育てを雌に任せて、
雄は雄同士の群れをつくり、行動します。

着物の意匠としては、
江戸時代の頃より、友禅染めで
小袖などに鴛鴦文様が描かれるようになりました。
着物にあらわされる鴛鴦も、つがいの場合が多く、
四季の草花と組み合わされて描かれます。



上の写真の訪問着にも、友禅染めで四季の草花と鴛鴦があらわされています。
きれいな鴛鴦の姿は、華やかな意匠のお着物にぴったりなモチーフなのですね。

普段は北国で繁殖し、過ごしますが、
寒い冬になると南下するため、
東京などの河原でも鴛鴦を見ることができます。

昔の人も南下し、子を産むまでの間仲睦まじくしている鴛鴦たちを見て
着物の意匠にすることを考えたのでしょう。

上の写真の「草花に鴛鴦文 友禅染め 訪問着」は花邑銀座店でご紹介している商品です。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は2月16日(木)予定です。

帯のアトリエ 花邑-hanamura- 銀座店ホームページへ 
   ↓


最新の画像もっと見る

コメントを投稿