花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

「栗鼠(リス)文様」について

2012-11-22 | 文様について


presented by hanamura ginza


小雪を迎えて、朝晩の冷え込みが
一層厳しく感じられるようになってきました。
先日は東京でも木枯らし一番が吹き、
北国では、雪が降り積もった地域も多かったようです。

冬本番を控えて、その支度に忙しい日々ですが、
動物たちは、この時期から樹の穴や洞窟などにこもり、
冬眠をはじめているようです。

日本で冬眠をする動物は、ほ乳類全体の 3 分の 1 にあたり、
クマ類を除くと、みな小さな体型をしています。
これは、体が小さいと体表から逃げていく熱が多くなるため、
寒い冬にはその熱を蓄えるのが難しいことが要因のようです。

しかし、そのなかでも本州と四国に棲息するニホンリスは、
冬眠をしない動物として知られています。
ニホンリスは、冬になると冬用の暖かな毛に変わるため、
身体の熱が逃げていくのを防ぐことができるといわれています。

ニホンリスは、食料の少ない冬のために、秋から晩秋にかけ、
団栗や胡桃などの木の実を地中に埋めて、保存しています。
しかし、時々この埋めた場所を忘れてしまうこともあるようです。
埋めたリス本人にとっては困ったことですが、
春になってこの実から芽がでることも多く、
森の維持に役立ってもいるそうです。
リスらしいほのぼのとしたエピソードですね。

リスは、古来より親しまれてきた動物で、
調度品などの意匠のモチーフとしても好まれてきました。
今日はこの栗鼠(りす)文様についてお話ししましょう。

リスは、太古の昔から世界各地に棲息する動物で、
その種類は 254 種にものぼります。
そのうちのニホンリス、ムササビ、ニホンモモンガは日本固有のリスです。

小さくて、かわいらしい姿をもつリスは、
古来より人々に愛され、
古代ローマでは、ペットとして飼われていたこともありました。

一方、日本でもリスは古くからなじみ深い動物でしたが、
リスが意匠のモチーフとして用いられるようになったのは、
室町時代の頃です。
当時、中国からもたらされた葡萄栗鼠という
葡萄と栗鼠が一緒に配された絵柄が日本でも人気となり、
磁器や鎌倉彫などにあらわされるようになりました。

リスは、多産な鼠に似ていることから、
子孫繁栄を意味する縁起のよい文様とされ、
豊穣を意味する葡萄とともにあらわした葡萄栗鼠文様は、
西洋への輸出品としても人気が高かったようです。

江戸時代になると、
日本風の蒔絵のモチーフとしてもリスが用いられ、
その多くは尾を誇張してあらわされています。

また、彦根藩(滋賀県)には、
当時、異国からもたらされた古渡り更紗が多数残されていますが、
その中にも、リスの文様があらわされたものがあります。



上の写真の名古屋帯は、大正~昭和初期頃につくられた
和更紗からお仕立て替えしたものです。
唐草とリスの文様が連続的にあらわされた意匠は、
和更紗としては、とてもめずらしいものです。
抽象的なリスの絵柄からは、どこか愛嬌が感じられますね。

さて、意外なことに、琉球王朝のあった沖縄の首里城の内装にも、
この葡萄栗鼠文様が多くあらわされています。
沖縄には、リスは棲息していないのですが、
沖縄の工芸品は、着物の文様をはじめ、
日本文化の影響を感じさせるものが多く、
この葡萄栗鼠文様も、そういったことから
吉祥文様のひとつとして用いられたようです。

寒くなってくると、出かけるのがおっくうになりがちですが、
冬眠せずに雪の上をちょこちょこと走るニホンリスを見習って、
冬ならではの風情を楽しみに外へとお出かけしたいところですね。

※上の写真の「栗鼠(リス)唐草文様 和更紗 名古屋帯」は 12 月 1 日(土)から花邑銀座店で開催する「動物の帯展」でご紹介予定の商品です。

花邑 銀座店のブログ、「花邑の帯あそび」次回の更新は 11 月 29 日(木)予定です。

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