ヌマンタの書斎

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YAWARA 浦沢直樹

2012-02-02 17:12:00 | 

間違っても某国会議員をモデルにしたわけではないはずだ。

しかし、時期がぴったりと合ってしまったのが、この漫画の幸運だった気がする。この漫画が出た頃は、まだまだ女性の柔道家に対する世間の視線は冷ややかであったと思う。

少し前に山口という女性柔道家が活躍したが、世間の関心を集めたのはオリンピックの時期に限られていた。当時は女性で柔道で活躍する選手が登場すると、必ず「女三四郎」の異名が付けられた。

それを変えてしまったのが、表題の漫画だった。この漫画が出て以降、強い女子柔道家には「やわらちゃん」の愛称が付けれられた。

ところが、その愛称を独占する選手が現れてしまった。それが彗星のように登場した田村亮子(現・谷亮子)であった。柔道には、ほぼ素人といっていい私でも分る天才的柔道家であった。

田村以前の女性柔道家で、あれほど見事な背負い投げをみせる選手をみたことがない。懐に入り込むスピードと度胸、背負った途端にすくっと伸びた膝が、相手と自分の体重を支える梃子になって、相手をくるりと投げ落とす。

まるでお手本のような背負い投げであった。

表題の漫画は、まだ田村選手が登場するまえに連載が始まり、人気を博した。作者は今でこそ大人気を博しているが、当時はそれほど人気はなく、一部の漫画好きの間だけで話題になるタイプであった。

だが、この漫画一作で一躍メジャーに躍り出た。以来、日本の漫画界にあってトップランナーの一人として、人気作を連出している。

私自身は、浦沢の人気がメジャーになる前から注目をしていた。だから彼の漫画の人気が高まるのを嬉しく思っていたが、反面ある種の違和感も感じていた。

売れるために漫画、描いていないか?これが浦沢の描きたかった漫画なのか?

いや、売れていけない訳ではない。ただ、それ以前の「パイナップル・アーミー」や「MASTERキートン」らを愛読していた私には、少々違和感を禁じえなかった。

それは微妙なものではあったが、なんとなく作風から計算高さが感じ取れてしまうのだ。それは細緻にして巧妙に織り込まれているので、なかなか気づきにくいが、売れるための戦略があるかのような印象を受けた。

売れるための王道をいくような物語の進行に不満すら感じてしまった。

それが出来ずに売れない漫画家として生活に苦しむ人が多いことを思えば、むしろ喜ばしいこと。それなのに素直に喜べない。

作品は良く出来ている。誰が読んでも、そこそこ楽しめる。だからこそ人気が出た。でも、少々あざとくないか。はっきりとした根拠があるわけでもないが、なんとなく浦沢氏の底意地の悪さを感じてしまう。

私の邪推かもしれませんがね。


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2 コメント

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Unknown (kinkacho)
2012-02-03 12:44:26
ヌマンタさん、こんにちは。
浦沢直樹、kinkachoにとっても評価が微妙な漫画家です。計算高さと腹黒さを感じます。
「パイナップル・アーミー」「MASTERキートン」の頃は好きだったのですが、この「YAWARA」の半ばあたりから首を傾げておりました。
確かに文句なしに上手い漫画家ではあります。その評価は揺らぎませんが…
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Unknown (ヌマンタ)
2012-02-03 13:44:29
kikachoさん、こんにちは。売れるための作品作りを否定する気はなにのですが、どうも浦沢氏、微妙にダークなんですよね。たしか、西原が画力対決で、浦沢をひとくさりやりこめていたと思います。
上手いのは確かだし、作品の質も高いのは確かなんですけどね。
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