ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

苔むす沢筋

2023-05-02 13:46:11 | 日記
>アメリカ国籍のウームラッド・パトリシア・ピーツェンさん(60)です。

 警察によりますと、ウームラッドさんは今月10日午前7時ごろ、奈良県・十津川村の民宿を出発し、熊野古道を通って十津川村平谷に向かったとみられています。

 しかし、ウームラッドさんが夜になっても宿泊予定だった施設に到着しなかったため、従業員が通報しました。

 ウームラッドさんは、身長が157センチ、ピンク色のジャンパーを着て、黄色のリュックを背負っていたということで、警察が情報提供を呼び掛けています。

 ウームラッドさんの親族によりますと、ウームラッドさんはこうした一人での山歩きの経験は豊富だということです。

 親族は「彼女を見つけて家に帰したい」と話していて、SNS上で、情報提供とともに、民間の捜索隊を雇うためのクラウドファンディングへの協力を呼び掛けています。

(「グッド!モーニング」2023年4月25日放送分より)

テレビ朝日2023/04/25 09:59
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000296748.html

ちょっと気になったニュースです。私は紀伊半島の山には登ったことはありません。ただ大学のWV部の一学年上の先輩たちから、和歌山の山深さについては良く聞かされていました。

今回の行方不明は奈良の十津川ですが、だいたい植生や地形などは似たようなものでしょう。おそらくですけど、沢筋に迷い込んでの滑落ではないかと推測しています。似たような事件は、関東だと日光でフランス人女性が行方不明となっています。

外国人とりわけ欧米の方は、わりと間違えやすいのが日本の沢筋と、欧米の沢筋の違いだ。日本は先進国でも有数の降雨量を誇るのだが、その国土の7割が山地であるため流れる川は短く速い。

また湿度が高いが故に、沢筋は苔むしている。それゆえヒマヤラやアンデスの高所登山で名を知られた著名なアルピニストでさえ、日本の沢筋沿いの登山道には困惑する。

もちろん滑り易い道ならば南米やアジアには沢山あるが、日本のように急峻な流れの沢に、滑り易い苔むした山道は珍しい。それゆえに勘違いしている可能性が高い。

つまり道に迷ったら、沢筋に降りて沢沿いに下れば人里に出られる、と。

これ、絶対にやっては駄目な下山方法です。たしかに沢を下れば間違いなく人里に出ます。でも一番危険なやり方です。沢筋は苔むしていて滑り易い。おまけに夏と冬との寒暖差の激しい日本では、沢筋は崩落の危険性が極めて高い。

私は沢登という日本独特の山遊びをやっていましたが、その私でも沢を下るのは基本やりません。もちろん安全な登山道があれば、それを使いますが、山で道に迷い沢筋に迷い込んだ場合、あるのはせいぜい獣道くらいで安全な道などありません。

山で道に迷った場合、まずやるべきは現在地が分る場所まで戻るのが大原則。しかし、元に戻れない場合も多々あります。その場合は尾根筋へ登るのが鉄則です。日本の山ならば、尾根には必ず道があります。踏み跡程度でも必ずあり、さらに登れば必ず安全な登山道にぶつかります。

整備された尾根道ならば安全に下山することも出来るし、途中に山小屋などがある場合も多いのです。ところが道に迷っている場合は、多くの場合疲労しているせいか、登るよりも下るほうを選びがち。

沢筋ならば水もあるし、沢を下れば人里に出れるのは自然の道理。そう思い込んでしまうのも無理はないのですが、それこそ一番危険なやり方です。日本の登山で遭難事故が起きる場合、その多くが沢筋で起きています。沢筋の危険さを知らないが故です。

推測ですけど、外国の方の場合、例え十分な登山歴があったとしても、急峻で滑り易く崩落も多い日本の沢筋の怖さは知らないし、当然に未経験なはずです。

水があれば生存の可能性はありますが、滑落により大怪我している可能性は高い。無事、発見されれば良いのですが、私は些か悲観的です。
コメント (2)
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