ヌマンタの書斎

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プロレスってさ クリス・ベノワ その2

2020-12-03 11:46:00 | スポーツ
ユーチューブでプロレスを視ると、やはりある種の限界を感じる。

それは利便性を考えれば致し方ないことだと納得はしている。でも、やはり会場でライブで観たかったとの思いが拭いきれなくなる。

クリス・ベノイ(ベノワ)選手の日本での試合ぶりを見ると、ライガーがJrヘビー級最強だと言ったのも理解できる。スピードがあり、パワーもあり、技も切れる。おまけに闘争心あふれるファイトは、見応え十分である。

クリス選手自体、日本でのプロレスラー生活に満足していたが、やはり夢はアメリカでのメジャーデビューであった。実力がありながらも、日本式のハードな技の攻防に馴れたクリスは、ショーマンシップが重要なアメリカのリングに馴染むのには、けっこう手間取っている。

だが彼は頂点を極めた。その時の試合後、かつて日本の道場での競いあった仲間であったエディやマレンコが祝福に現れた場面は、私でも胸に来るものがある。決して大型レスラーではなかったが、そのダイナミックなプロレスは、アメリカのファンをも十分楽しませるものであった。

だが転落は早かった。

彼が憧れたダイナマイト・キッド同様に、クリスは超大型のアメリカのレスラーに対抗するため、筋肉強化のために危険なステロイド剤に手を出した。他にもあれこれと試したようで、違法薬物使用の噂が絶えなかった。

特にそれは私生活でのトラブルで顕著であったようで、薬物の影響を指摘する人も少なくなかった。そして遂に事件が起きてしまった。クリスは何よりも大切にしていた家族を自らの手で殺し、自分もその後を追う様に自殺してしまったのだ。

日本でならば、一家心中だと報じられただろう。しかし、そこはアメリカである。英語に一家心中を適切に言い表す言葉はない。FamilicideとかMurder Suicideといった言葉で言い表せられる。

家族虐殺といったイメージであり、第一級殺人として捉えられている。日本の家族心中とはまるで印象が違う。はっきり言えば、家族をも虐殺する悪質な犯罪である。

そのため、クリス・ベノワの名前はアメリカ・プロレス界から抹消されてしまっている。

私はクリス選手のしでかしたことを正当化する気はない。だが、それでも彼の業績を抹消する気にはなれない。罪は罪ではあるが、過去の立派な業績を消す必要はないと思っている。

ただ、プロレスという胡散臭さが消えないエンターテイメントのために、過剰反応したアメリカのプロレス業界の気持ちも分らないではない。でも、せめてクリスが第二の故郷だと言っていた日本では、彼の名前を消さないで欲しいと思います。
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