ヌマンタの書斎

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戦争という手段

2019-05-17 11:53:00 | 社会・政治・一般

批難して済む問題ではない。

日本維新の会の丸山議員(既に離党済み)の「戦争をしてでも北方四島を取り戻す」発言が物議を醸している。

いくら野党の泡沫議員とはいえ、言って良いことと悪いことがあるだろうと批難する声が出るのは当然だろう。

でも、敢えて言うけど、別に間違ったこと言ってない。

言うまでもないが、かつて日本の領土であった北方四島はロシアの武力により奪われた。勘違いしている人もいるようだが、太平洋戦争に負けたから奪われたのではなく、戦争中に力づくで奪われたのである。

有史以前から、武力で領土を奪われることは当然であり、武力で奪い返すこともまた当たり前であった。話し合いで領土が戻ることは滅多にない。あるほうが珍しいのが現実である。

話し合いで領土が戻った例として沖縄の返還を挙げたい人は、その沖縄に米軍基地がしっかり残っていることを再認識すべきである。あれはアメリカが、沖縄の民政負担を日本側に押し付けただけで、実質として沖縄に基地さえ確保できれば、民政なんて負担したくなかったのが本音であろう。

首都を米軍基地に包囲された我が日本政府としては、それを沖縄返還として受け入れるしかなかった。財政的な面から言えば、沖縄は本土の税収により賄われている貧困な島に他ならない。

もちろん膨大な海域を、日本領と出来るメリットもあるし、何よりも失った領土を取り戻したことによる精神的なメリットも軽視するべきではない。だが、表面的には独立国である日本政府は、今でも米軍駐留費用を支払わされている軍事的属国の立場であることは、いつのまにやら忘れ去られている。

外国の基地が置かれている国は、ある意味、真の独立国であるとは言えない面があることは認識しておいてほしいものである。

そこで北方四島問題である。私はロシアがこの島を話し合いで手放すことがあるとしたら、それは日本がアメリカとの軍事同盟を解除した時であろうと考えている。ロシアという国は、なによりも自国の防衛を最重要課題と考える。

日本列島にアメリカの基地があることを軍事的脅威だと認識している以上、北方4島を日本に平和的に返還することは、まず考えられない。その意味で、丸山議員の発言あるいは問題提起は正しいのである。

ただし、私はこの発言に否定的である。

まず政治家として口火を切ること事態が稚拙すぎる。選挙により選ばれた立場を考えれば、支持者に根回しもなく発言してよい内容ではあるまい。少し知恵があるのなら、第三者に問題提起させて、それに異論、反論含めて応じる形にしておく程度の配慮が出来ないなんて、政治家として幼稚過ぎる。

発言の内容が問題なのではなく、発言の仕方が政治的に下手すぎる。内心同意しつつも、自身に責任が及ばぬ形で議論を起こさせる程度の知恵がない人間が、政治家であることが情けない。

少し真面目に考えれば、北方四島を武力で日本に取り戻すことをしたら、ロシアの反撃を押し返せるだけの武力が必要である。その準備も覚悟もない今の日本にとっては、むしろ有害な発言である。

ロシアという国は、伝統的に軍事力に最大の信を置く。軍事力なき相手は交渉の相手とし認めない武断主義の国でもある。平和主義が通用しない国であり、このことが分かっていない日本人が多過ぎる。

むしろ戦前の日本人の方が、よほど分かっていたと思う。

私は平和的な手段である話し合いを否定はしないけれど、大切なものを戦ってでも守る覚悟のない相手を、交渉相手として信用することは出来ないとも考えています。

丸山議員が本当に戦争を領土奪回の手段として考えているのならば、まず自身が軍隊に入り、我が国の軍事力の悲惨な現状を肌で感じるべきです。単独では一週間も戦えない自衛隊の現状をまったく分かっていない口先だけの政治家には困ったものです。

コメント (2)
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