誰が悪いのかではなく、なぜこうなったのかを追求すべきだと思う。
三井不動産が販売し、三井住友建設が請け負った横浜のマンションにおいて、基礎工事の杭が十分でないことが報じられてから、既に一月以上たっている。
報道などで頻繁に出るのは、その杭打ちに係った旭化成の関連会社であるが、驚くほど露出が少ないのが、元請けである三井不動産及び三井住友建設だ。その謝罪会見は事件から数週間後であり、画面を見る限り憮然とした感情を押し隠しているのが見て取れる。
マスコミが報じるのは、もっぱら旭化成であるのだが、では他の下請けはどうなった。少なくても他にも数社が関係しているはずだ。私は仕事柄、建設関係者と話す機会が多い。
彼ら、末端の建設現場で働く作業員の目で今回の事件を見ると、マスコミの報道とはまるで別な側面があることが分かる。いくら禁止しようと、建設工事の丸投げは、今も日本各地で頻繁に行われている。
発注した三井不動産は憮然としていたが、三井住友建設では、この工事は丸投げ物件であることは明白であり、当事者意識は当初から欠如していた。だから、なかなかマスコミの前に姿を現さなかった。
妙な話だが、談合が当たり前にあった頃の方が、このような偽装工事は少なかった。談合を取り仕切る側にも、談合を受ける側にも、それなりの現場に対する責任感があったからだ。
しかし、談合が厳しく禁止されると、巧妙な丸投げによる利ザヤ稼ぎが横行した。談合という話し合いによる利益配分がされていた頃と異なり、丸投げでは、ただ無責任に利益の上前をはねることだけが優先され、建築工事に対する責任感が薄れる。
その証拠に、今回の基礎工事の杭うちの作業と、その点検を現場に出向いてチェックしたのは下請けの人間で、肝心の元請け、発注元の会社の人間は来てないはずだ。丸投げなので、まかせっきりである。
丸投げでは利益の中抜きがされており、それが繰り返されると、末端の仕事をする業者がババを掴まされる。だから、違法と知りつつ、危険と知りつつ、手抜き工事をして、なんとか利益をねん出しようとしてしまう。
これこそが、丸投げ工事が禁止される大きな原因である。皮肉なことに、厳禁された談合があった時のほうが、まだチェック機能が働いていた。三井住友建設としては、丸投げの実態が報じられるのは避けたいし、さりとて当事者意識が欠如していたので、実際の工事の現場の情報をもっていない。
だから、後手後手の対応になるし、未だ調査中だなどと言って、ひたすら先延ばしにする。仕事を丸投げした業者に責任を負わせたいが、丸投げの事実を認めることも出来ない。
今までババを惹かされていた末端の業者は、利ザヤを散々抜いた丸投げ工事をやっていた報いだと、内心馬鹿にしているだろう。そう想像している土木建設業者は少なくない。
談合を悪く言う人は多いが、私などからすると、丸投げよりはマシではないかと思ってしまいます。
追記 3日の朝のニュースで、三井住友建設が設計当初から基礎に打ち込む杭の長さを従前よりも短くするよう指示していたことが発覚。これが本当だとすると、丸投げよりも更に悪質だと云わざるを得ませんね。