ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

悪魔の飽食 森村誠一

2010-08-16 12:36:00 | 
善意は暴走しやすい。

著者の森村誠一が正義感に駆られてこの作品を書き上げたことは間違いないだろう。また関東軍第731部隊が、捕虜を使って残虐な人体実験を繰り返したことも事実だ。

その成果は、アメリカ軍が欲しがるほどの価値あるものであったらしい。もっとも、その成果が戦後のアメリカ軍のBC兵器の開発に寄与したものかは分らないが、貴重な情報であったことは確かだろう。

もっとも人体実験を行ったのは、別に日本軍だけではない。その情報が公になっていないだけで、多くの国において似たようなことがされていたことは、それが如何に有効な手段であるかの証明に過ぎない。

戦争は勝たねばならない。勝つためならば、如何なる手段でさえ正当化される。

だが、多くの人は病原体や毒ガスのような兵器を嫌悪する。いくら勝つためであっても、そんな兵器は使いたくない。私もそう思う。

しかし、戦争相手国がつかってきたらどうする?そのための対抗措置だけは用意しておくべきではないか。このロジックあるがゆえに、今日でも細菌兵器や有毒ガス兵器の研究開発は絶えることがない。そのようなBC兵器の有効性を確認するには、人体実験が必要だ。密かにやれば大丈夫さ・・・

実のところ、今日では兵器としてよりも、尋問などの手段としても医学的研究が進めらている。貴重な情報を引き出すための拷問を、いかに効率的に、かつ正確に行うためにも人体実験は欠かせない。

戦争や諜報の世界だけの話ではない。多くの国では国内の治安維持のために、これらの残虐な行為は現在も行われている。日本のマスコミは、あまり積極的に報道したがらないが、北京政府がチベットや中央アジアで実施している残虐な行為は、関東軍731部隊のそれ以上かもしれない。

森村誠一が一時期、日本共産党の熱烈なシンパであったことは事実だ。事実、この本も共産党員との共同作業で書かれている。そのためだろう、事実誤認や信憑性に乏しい資料がずいぶんと使われている。一番ひどいのは、20世紀初頭のペスト流行時の赤十字の写真を誤用したことだろう。

あまりにひどすぎたので、現在刊行されている版からは削除されている。でも、私この人が間違いを認めて謝罪している発言を聞いたことがない。ある意味、731部隊よりも残虐な行為がなされているシナの実情を告発している文を読んだこともない。

あくまで旧・日本軍を誹謗することのみに傾倒していると判じられても仕方あるまい。反戦平和のため、旧・日本軍の非道を公開することを悪いとは言わない。しかし、その正義感に燃え上がるあまりに、事実を歪めることは「戦争に勝つためなら、なにをしてもいい」と考えた連中と同じだと思う。
コメント (1)
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