ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

エリア88 新谷かおる

2010-08-04 12:04:00 | 
つっこみどころ満載。

ジェット旅客機のパイロットとして切磋琢磨してきた幼馴染みの二人を一人の女性が引き裂いた。パリで酔いつぶれた主人公は外人部隊への入隊宣誓書にサインをしてしまい、気がついたら多額の借金を背負わされて、もはや逃げられない境遇に。

中東の産油国の設けられたジェット戦闘機乗りで構成された外人部隊から生きて除隊するには、敵機を撃ち落して金を稼ぐしかない。主人公の絶望的な戦いがここに始まる。なかなかに印象的なプロローグであった。

外人部隊に様々な人種が集うのは致し方ない。しかし、航空兵力つまり戦闘機は統一しなければ、部隊として機能するはずがない。ところが、この外人部隊ときたらファントム(アメリカ製)やミラージュ(フランス)、サーブ(スウェーデン)と様々な国の戦闘機が混在している。

こんな部隊がまともに機能するのか?アメリカの軍事予算の配分をみていると、実戦部隊関連の予算の大半が、整備費用に充てられている。戦闘機に限らないが、戦場で使う道具はひたすらに消費され、磨耗していき、壊れることが当然の使い方をされる。だからこそ、軍需物資の多くが消耗品の交換部品、メンテナンス部品で構成される。だからこそ、可能な限り単一の兵器に統一することが必要となる。

ところが、この漫画ときたらこのような経済原則を無視した外人航空部隊を設定してやがる。あんな多種多様な機体を揃えたら、まともなメンテナンスなんて出来っこない!いくらオイルダラーをバックにした外人部隊でも、金がかかりすぎるし、交換部品の管理だけでも大プロジェクトになってしまうじゃないか。

他にも色々とつっこみどころは多いのだが、白状すると楽しかった。戦争を知らずに育った軍用機マニア垂涎の部隊設定は、読まずにはいられない魅力があった。

たぶん、師匠の松本零士だったら絶対描かなかったと思うが、新谷氏は若い弟子だけに無邪気に軍用機好きのハートを捉えた漫画を描いた。もし、この作品が小説だったら、絶対に叩かれたと思うが、漫画であるからか許された。

もちろん私も、この設定ヘンだよと突っ込みながらも最後まで読みきってしまった。多分コアな人気だとは思うが、それでも人気作品であったのは間違いない。

なまじ現代を舞台としているだけに、リアルの現実を想起させる一方で、ありえない破天荒な小道具(核兵器だの、地上空母だの)を用意してあり度肝を抜かれる。おまけに実らぬロマンスやら、お涙頂戴的なドラマまで盛り込んだ、とんでもない漫画として完結を迎えた。

名作とは言わないが、怪作であり忘れ難い印象を残した漫画であることは間違いない。でも20巻を超える長編なので、読むのも大変だけど、読み出したら止められない魅力はあります。もし機会がありましたらどうぞ。
コメント (1)
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