ヌマンタの書斎

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税法なんて その二

2010-08-27 12:29:00 | 経済・金融・税制
As a taxpayer (納税者として言わせてもらうぞ)

アメリカの納税者が政府に対して文句を言う時の慣用句だそうだ。近代国家は、納税資金を元に運営される。故に納税者は政府に口を出す権利を有する。

戦前の日本は、賦課課税といって政府が国民の納税額を決めつける制度であった。戦後、シャウプ博士が日本の民主化のために導入させたのが、申告納税者制度だ。

納税者自らの所得を申告して納税することにより、民主主義の根幹でもある納税者意識をたかめ、それが日本の民主化に益すると考えての提言であり、日本政府はそれを受け入れざる得なかった。私はそう理解していた。

ただ、それにしては、日本の税法は税務署有利に作られている。どう考えても、それは納税者不利なものであり、民主主義を掲げる国家としては、それはおかしいのではないかと日頃思っていた。

ことろが、先日の研修で品川・早稲田大学院教授がとんでもない事を口にした。戦後の混乱の中、賦課課税方式による税収確保なんて出来なかった。だからこそ、申告納税方式に切り替えたのだと。

たしかに賦課課税を適正に実施するためには、税務署が納税者の資産や営業を把握しておく必要がある。しかし、戦争により荒廃し、その後の混乱と急激な復興は、賦課課税方式を実施不可能なものとしてしまった。

そのため、納税者の善意を信じての申告課税方式が導入された。ただし、納税者の申告内容を質し、場合によっては罰則を強行する権利を税務署側に持たせたという。

シャウプ博士の提言と、その目的意識は明確であり、公表されて久しいものでもある。だが、国税当局に在籍した品川先生の言うように、税務署内部ではまったく異なる受け止め方をしていたのだとよく分った。

だからこそ、日本の税務手続きは納税者不利に作られているのだと、改めて納得した。品川先生の仰った事は、一般に売られている書籍などでは目にしたことがないものだ。シャウプ博士の求めたものとは、まったく異なるものなのは確かなのだ。しかし、おそらく当時の税務署職員は、品川先生と同様の思いを共有していたのだろう。

そう考えると、税務署の強硬な態度、姿勢は納得のいくものだ。

以前にも書いたが、私は国家と納税者の関係を定める納税者憲章の制定に積極的だ。しかし、品川先生のような意識を持つ税務職員、OB税理士からすると、権利ばかり求めて義務を十分果たしているといえない納税者側に、これ以上安易に権利を与えすぎるのは問題だと考えていることも分る。

納税者側も信頼に値する申告をする義務がある。税理士もそのために研鑽を重ねる必要がある。それも今まで以上にだ。

だが、そのためには税法がもう少し分りやすいものでなければならないと思う。

ところが、税法は年々分りづらくなるばかり。その辺の事情については次回に。
コメント (3)
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