のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

追悼デニス・ホッパー

2010-06-01 | 映画
『CUBE』や『SAW』のような密室殺人ゲームに閉じ込められ、脱出の手段が見つからぬまま周りの人がひとりまたひとりと死んで行き、息を殺してああどうすればいいのかと焦っている所へモーガン・フリーマンが助けにやってきて、みんなを解放した上にゲームの卑劣なからくりを解き明かしてくれる
という夢を見ました。

まあそれはそれとして、夜が明けるとデニス・ホッパーが亡くなっておりました。

のろは「余命わずか」と平気で言い立てる報道の無神経さにはむかっ腹を立てながらも、ハリウッドの「ウォーク・オブ・フェイム」入りを祝う式典で姿を見せたこの不良オヤジの、別人のようなやつれぶりにぎょっとして「確かにこれは...」と思ってしまった覚えがございます。
振り返ればあれからたった2カ月、本当にわずかな時間で鬼籍に入っておしまいんなりました。74歳という年齢は決して早世とは申せませんけれども、この年齢だからこそできる役がたくさんあったはずと思うと、惜しいの一言でございます。

レンタル店の名作コーナーにタイトルを連ねる作品から「スペース・トラッカー」や「魔界世紀ハリウッド」のようなB級バカ映画(いや、ワタクシは好きですが)まで幅広い作品に出演していらしたホッパー親爺、中でも代表作といったらやはり「イージー・ライダー」と「ブルー・ベルベット」になりましょうけれど、ワタクシが観た中で最も強烈な印象を受けたのは「パリス・トラウト」でございます。鼻持ちならない人種差別主義者で、妻を精神的にも肉体的にも虐待し、はては猜疑心をつのらせて次第に狂気へと近づいていく男、パリス・トラウトを演じたホッパー親爺、まことに鬼気迫るものがございました。ついでに申せばもの静かで理知的な弁護士エド・ハリスもまことに結構でございました。

Paris Trout (1991)


さても、デニス・ホッパー。
のろは映画の中では変人か頑固者(あるいはその両方)の姿しか見た事がございませんでしたし、映画の外では、これまたあんまり穏やかならざる人らしいことを聞き知っておりました。だから、というのも何でございますが、氏に写真家や画家という側面のあることを知った時には驚いたものでございました。
しかもその作品は単に趣味や手なぐさみというレベルではなく、実にいいのでございますよ。
↓こちらで少し見ることができます。おおむね60年代の作品のようです。

Dennis Hopper on artnet


いいでしょう。
だけどこんな写真を撮った人も、もういなくなってしまいました。
チャーリー・パーカー好きの殺し屋も、宇宙のトラック野郎もいなくなってしまいました。
さようなら。
安らかなれかし、魂なるものがあるならば。