のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

フェアリーテイル祭り3

2008-09-24 | 映画
9/22の続きでございます。

・3匹の子豚(ビリー・クリスタル/ジェフ・ゴールドブラム 監督:ハワード・ストーム)

B・クリスタルが演じるのはアーティスト志望の三男豚。
ファッションも含めてとても可愛らしいんでございますが、本作の見ものは何たってジェフ・”ハエ男”・ゴールドブラムの狼でございます。
顔の真ん中に長い鼻づらをくっつけて、お尻にぞろりとご立派な尻尾をぶら下げてのご登場。
しかしなんとまあ、これが意外にカッコイイのですよ。



ふさふさのロングコートを羽織り、サックスのBGMを従え、葉巻をくゆらせながら
「ドアを開けろ。さもないと、プーと吹いて、フーと吹いて・・・・・・吹き飛ばすぞ」
うひゃあ、渋い。アホだけど渋い。
かなりのアホでその上恐妻家というダメ狼の役でございましたが、ハエ男ファンなら必見の作品と申せましょう。
ベタでアホすぎる言動が実に素敵でございました。
「お前などゴミだ」と言って蹴散らしているのは本当にゴミですし。
「そこをどけ・・・どけと言うんだ。お前、耳が無いのか?」と凄んでみせる相手は道ばたの木だったりしてね。そりゃあ無いでしょうよ耳は。

アーティストな三男豚が頑丈さと美観にこだわってレンガの家を建てるのに対して、拝金主義でケチの長男豚は安上がりなワラで、プレイボーイの次男はナンパした女の子豚を連れ込むために、とにかく手っ取り早く木の枝で家を建てるというのも面白うございました。


・ラップンゼル(シェリー・デュヴァル/ジーナ・ローランズ 監督:ギルバート・ケイツ)

ラプンツェルのことでございます。
ジーナ・ローランズ演じる魔女はとてもよかったんでございますが、それ以外にはあまり見るべきものはございませんでした。
「友達」として与えられた鸚鵡のせいで王子様のことがバレてしまう、というのは上手いと思いましたけれど。


・赤ずきんちゃん(マルコム・マクダウエル/メアリー・スティーンバージェン 監督:グレーム・クリフォード)

マルコム・マクダウエルがもう ノ リ ノ リ でございまして。
「三匹の子豚」のジェフ狼は長身で手足がすらりと長く、まがりなりにもビッグ・バッド・ウルフの体裁を保っておりましたけれども、マルコム狼は元妻演じる赤ずきんちゃんとさして背丈も変わらず、空腹だったとはいえお婆さんにさえ撃退されてしまうヘタレぶりでございます。
のちに赤ずきんちゃんから、お婆さんが病気と聞いて「じゃあ少しは弱ってるだろうね」と喜ぶ始末。



この作品の魅力はとにかくマルコム狼につきます。
「あのババァ、さては胆石持ちだったのか」とぼやくオチもナイスでございます。


・えんどう豆とお姫様(ライザ・ミネリ/トム・コンティ 監督:トニー・ビル)

王子様役のトム・コンティ、どっかで見た顔だなァと思っておりましたら、『戦場のメリークリスマス』のローレンス中佐じゃあございませんか。
おお、 めりぃ・くりーすます、みすたあ・ろーれんす!

それはさておき。
完成度の高い作品でございました。
他の話と同じく、セットはごくチープなんでございますが、きちんと作られた映画を一本見たような心地になりました。
原作はごく短いお話でございますから、50分もどうやってもたせるのかと思いきや、間延び感もなく、余計なネタもなく、伏線もきっちり張られておりまして、なかなかに見事な出来でございます。

嵐の夜にずぶ濡れで転がり込んで来たやんちゃなお姫様と、彼女にしぶしぶ宿を貸した頼りない王子がしだいに惹かれあっていくさまが、王子の親友の道化師や魅力的とは言いがたいお妃候補たちなど、原作にはないキャラクターをうまく活用して描かれております。
ライザ・ミネリ演じるお姫様がとってもチャーミングでございましてね。
黒いドレスのよく似合う、サバサバとしていながらも包容力のある女性で、王子があんなボケナスじゃなかったらすぐにでも結婚を申し込んだ所でございましょう。
もっとも王子もボケナス一辺倒なわけではないことが、さりげなく描かれておりまして、これもたいへんよろしうございました。
ラブコメ嫌いなのろではございますが、最後は何となく幸せな気分になりましたとも。


・ジャックと豆の木(エリオット・グールド/デニス・クリストファー 監督:ラモント・ジョンソン)

ジャックが牛を「魔法の豆」と交換して帰って母親に叱られるシーンを見て、ギリアムの『ブラザーズ・グリム』の冒頭を思い出し、ちと切なくなってしまいました。
『ブラザーズ~』では、夢見がちなジェイコブ少年がこれをやったせいで、病気の妹が死んでしまうのですよ。病院へ行くお金が工面できなくて。
で、そのことをずっとトラウマとして抱えたまま、ジェイコブ(弟)とウィルヘルム(兄)のグリム兄弟は大人になって・・・というお話。
ちなみに『ブラザーズ~』は世間的には評価が低いようでございますが、ワタクシは大好きでございます。
いいじゃございませんか、ギリアム節。おとぎ話の勝利。
ジョナサン・プライスもナイス悪役でございましたし、ピーター・ストーメアもとってもよかった。
エンドクレジットまで彼とは気付かなかったけれども。(なんたること)

閑話休題、ジャックと豆の木でございますね。
これはもともとのお話にけっこう忠実に作られておりまして、その分ぶっ飛んだ遊び要素があまりございませんでした。
まあ、こう思ったのはのろがここに至るまでにロビン蛙やマルコム狼のぶっ飛びぶりに慣れてしまったせいかもしれませんが。
ただ学芸会からそのまま引っぱって来たようなかぶり物の牛は、たいへんのろごのみでございましたね。
リアルに作ろうという努力がほとんど見えない所がかえって清々しい。



以上、全体として、軽めなノリと監督&俳優の遊び心が実に楽しい作品群でございました。
逆に言えば、冗談を控えめにして「いい話」として仕立てようと試みた作品は、あまりいい出来ではなかったように思います。
今週の土曜日から上映される他の4作品もできれば観に行きたいと思っておりますので、何よりもティム・バートンやクリストファー・リーがどれだけぶっ飛んでくれているかに期待を寄せている次第でございます。




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