のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

佐川美術館1

2009-08-25 | 展覧会
よい人間にはなれますまい。
なれまいと思っているからには本当になれますまい。かくて無限に後退して行く。

それはさておき

自転車を駆って佐川美術館へ行ってまいりました。
国道1号線にもいいかげん飽きたので、北白川方面から山越えすることにしました。このルートをとるのは10年ほど前に初めて琵琶湖一周をした時以来でございます。

美術館の開館時間は9:30。距離からして片道3時間半の行程と見積もり、6:00に出発いたしました。
まだ車の少ない市内を快適に走って7:00ごろ北白川別当町の交差点を過ぎ、山に差し掛かる手前の駐車場で朝ご飯休憩をとって山越えでございます。



1.登り口で出会った猛犬。
2.上り坂を行くこと延々40分。途中で狐らしき動物の礫死体に遭遇。なんまいだぶ、なんまいだぶ。日が高くなるにつれて蝉たちが鳴き始めました。
3.ここから下り。いやっほぅ!左下に写っているコンクリ塀によじ上って撮ったのでございますが、とっかかりが無いので下りるのに苦労しました。ペダルを漕がずともずんずん加速する快速下り坂道なのにブレーキをかけてそこそこ安全運転してしまう意気地なさよ。何だかんだ言ってもやっぱり命が惜しいんだな、のろよ。

以前このルートを辿った時には、途中でバテてかなりの行程を自転車を押し押し歩いた記憶がございます。今回は一度も自転車から下りることなく山越えすることができました。トシをとったのに体力は増したのか、それとも自転車の乗り方がうまくなったのか。
街に出て平坦な道を走ること約1時間、弓なりになった琵琶湖大橋を渡れば目的地はもうすぐでございます。琵琶湖大橋、大型トラックが通るたびにぐわんぐわん縦揺れいたします。「私が通っている最中に壊れるに違いない」という確信めいた思いを抱き、ガラガラと崩れる橋梁と、瓦礫に打たれながら湖中に落ちて行く自分をありありと想像しながら渡橋。これだからジェットコースターのたぐいが駄目なのでございますのろは。

ともあれ9:25、美術館に無事到着。
休憩時間も含めて約3時間半、あまりにも予測どうりで何だか拍子抜けしてしまいました。
実は10年前の琵琶湖初巡りの際にも、この美術館の外観だけは拝んでおりました。中に足を踏み入れることなく立ち去らねばならなかったのは、雨に降られて全身ずぶ濡れだったからでございます。寒かったっけなあ。5月だったし。



4:無理矢理パノラマ写真。水盤の上に佇んでいるような建物でございます。
5:はり出した軒に水面の照り返しが美しい。
6:うるわしのトイレ。
7:ガマが植わっております。

順路ということで、まずは平山郁夫展示室へ。
旅先の人々や仏教遺跡をスケッチ風に描いた作品が多く展示されておりました。院展でお見かけするばかでかい作品よりも、のろはこうした力みのない小品の方が好きでございますね。

平山展示室を抜け、水の上に佇む佐藤忠良の少女像を見やりつつ企画展示室へ。
8/30まで開催されているのは「太田大八とえほんの仲間たち展」でございます。
太田さんをはじめ、『ぐりとぐら』の山脇百合子さん、「14ひき」シリーズのいわむらかずおさん、『あらしのよるに』のあべ弘士さん、そして「◯◯の」という限定を許さない天才スズキコージなどなど、だれもが一度は親しんだことのある大御所たちが名を連ねております。

太田さんの作品でとりわけ印象深かったのは「絵本西遊記」でございます。小さな画面から孫悟空の躍動感とありあまるエネルギーが溢れ出るようでございました。
力強く、かつすっとぼけた味わいの田島征彦さんもよろしうございました。さすがに原画は色が素晴らしい。展示されていたのは『どろんこそうべえ』、表情やポーズがなんとも飄逸で、話を知らないのろも絵だけで笑ってしまいました。

中でも嬉しかったのは、和歌山静子さんの原画が見られたことでございます。
和歌山静子さんといえば、そう、「ぼくは王さま」シリーズでございますね。本展には「王様」の描き下ろし画のほか、『ひまわり』の原画が展示されておりました。太陽を浴びてぐんぐん伸びて行くひまわりは実際、その周囲に輪郭線さえ見えそうな力強さでございますから、和歌山さんの画風にはぴったりでございます。
「王さま」は、ワタクシが親しんでいた頃とはほんの少し顔つきが変わったような気がいたします。ごくシンプルな線で描かれておりますから、ほんの少しのバランスの違いも目立つのでございましょう。しかしあのぐりぐりと太い線でで描かれた、真っ赤なマントの王さまや、おかっぱ頭の大臣(あの容貌のモデルはリシュリュー枢機卿ではないかと)を見られただけでも嬉しうございます。王様シリーズ屈指の名作「おしゃべりなたまごやき」の原画もございました。おお、王さま!おお、大臣!おお、兵士!おお、ニワトリ!
バルコニーでふんぞりかえる王さま、ニワトリに追いかけられる王さま、お皿をなめる王さまも間近で見られて感無量でございます。それにしても王様ときたら、お行儀が悪いんだから。そんなことでは隣の国のお姫様に嫌われてしまいますよ。

王さまシリーズの挿絵は和田誠さんや長新太さんも描いておられますが、和歌山さんの絵がベストというのがのろの思う所でございます。好き嫌いだらけでワガママで、いつも大臣に叱られているくせに威張りんぼう、それでいて時に羨ましいほど純真な王さま。好奇心おう盛なくせに飽きっぽく、大騒ぎをしてはしゅんとしおらしくなる、まるっきり子供そのままの王さまを描くには、和田さんも、チョーさんさえも洗練されすぎているように思われます。地面に土くれで描いたような和歌山さんの絵の素朴な温かみが、このワガママで愛すべき王さまを表現するのには最適ではございませんか。

次回に続きます。



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