のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

キートン帽

2008-05-08 | 映画
自慢じゃございませんが小学校から高校を通じて、家庭科の課題をまともに提出できたことは一度もございません。
まともに、どころか、提出まで漕ぎ着けたこと自体が稀であったと記憶しております。
そんなのろではございますが、唐突に思い立ってキートン帽を作ってみました。



ミシンがございませんので、オール手縫いでございます。
何故こういう誰の役にも何の役にも立たないことにだけ情熱を注いでしまうのか、自分でも不思議でございます。

裏はもちろんストライプで。


キートン帽。
バスター・キートンのトレードマークである、あの、ぺちゃんこのポークパイ・ハットでございます。
街路を爆走する時も、西武の荒野を行く時も、小作りな頭の上にちょこんと乗っかっているあの帽子。
海に落とされる時も、列車から放り出される時も、天国への階段を駆け上る時も手放さないあの帽子でございます。

もっとも、ロイドには眼鏡が、チャップリンにはチョビ髭が必須(『ライムライト』は別として)という感があるのに対し、キートン帽は必須というわけではございません。
彼の一番のトレードマークはメイクや衣装ではなく、そう、あの、もの悲しげな”ストーン・フェイス”だからでございます。
決して笑いもしなければ泣き叫びもしないあの生真面目な顔があるかぎり、毛皮をまとった原始人を演じていようと、大金持ちのお坊ちゃんを演じていようと、そこにいるのは100%、ぼくらのキートン、なのでございます。

そんなわけでキートンはキートン帽にこだわわず、シルクハットやら、ハンチングやら、官帽やら、劇中でいろんな帽子をかぶっております。
それらがまた、よく似合うんですね。
ギャグの小道具としてもしばしば帽子を活用しております。『キートンの蒸気船』では、キートン帽というもの自体をギャグにしております。

洒落たベレー帽をかぶって、長年会わずにいた父親の前に現れたキートン。
ちっぽけな蒸気船の船長である無骨な父親は、息子のチャラチャラした恰好が気に食わない。
で、帽子屋に連れて行かれたキートンは店員にさまざまな帽子をとっかえひっかえかぶせられる間、大人しく突っ立っているんでございますが、キートン帽をかぶせられた時だけ猛烈な勢いで拒絶するんでございます。「こんなダサい帽子を勧めるなんて!」と言いたげに、目をひんむいて。
ほんの2、3秒の瞬間ギャグなんでございますがね、キートンの必死な顔と電光石火で帽子をむしりとる動きがもう最高で、ほんとに、爆笑ものでございました。



実物のキートン帽はグレーのフェルト地に黒のリボンでございます。そもそもは市販のソフト帽子のてっぺんを潰し、つばをぺたんこに伸ばしたもので、キートン自らあの形に加工したものなんだそうでございます。

のろ製キートン帽はちょっと潰しすぎたようで、外でかぶったらすぐに風で飛ばされてしまいそうです。
まあ、もとより外でかぶるつもりは全然なかったんでございますがね。
これを頭にのせて歩いているだけで、犬や警官が追っかけてきそうでございますもの。





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