のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

ワルモノばなし

2006-12-05 | 映画
ロバート・カーライルが、わりと好きでございまして。
のろの部屋にはギュスターヴ・モローや植田正治やジョン&ヨーコと並んで
ベグビーのポストカードが、もう長いこと貼られております。
ベグビーってのはもちろん、トレインスポッティングでカーライルが演じた
アル中&ケンカ中毒の狂犬的あんちゃんでございます。あのキレっぷりは一生忘れられません。




一見ピースサイン ↑ のようですが、とんでもございません。
こうして手の甲を向けた場合は「中指1本立て」と同じ意味合いでございます。
実にうれしそうな顔ですね。

しかし何と申しましても、この人のはまり役はダメおやじでございます。
情けないおっちゃんを演じさせたなら、彼の右に出る者はおりますまい。
あの全身から発せられる素敵なダメダメオーラに太刀打ちできるのは、そう、
ケヴィン・スペイシーくらいのものでございましょう。
ここにウィリアム・H・メイシーでも加えればたちまちダメおやじ御三家成立でございます。
あくまで役柄のお話でございますよ、役柄の。

風貌もね、たいへんよろしうございます。
とんがった鼻、とんがった耳、悲しげな眼に細い首。
そしてスキンヘッドがよく似合うんでございます。
はい、気になった貴方は今すぐ画像検索を。 → robert carlyle - Google イメージ検索

と いうわけで、ボーズ頭しかも悪役、のロバート・カーライル見たさに
先日は、めったにつけぬTVの前に腰を落ち着け
007 ワールド・イズ・ノット・イナフに見入ったというわけでございます。



れなーど、本物は ↓ こちら。
jamesbond.com / mmpr / renard

そもそも悪役大好きののろ、スキンヘッドのカーライルがどんな冷酷非道な活躍をしてくださるのかと
それはもう わくわく していたのでございますが

ふうむ。 どうも  いけません。
カーライルが悪いのではなく、お話がなってないんでございます。
せっかく「脳内に残る弾丸ゆえに痛覚を完全に失ったテロリスト、
弾丸のせいでいずれは死ぬ運命だがそれまではいわば不死身、
冷酷なやつだけど恋人には一途」という
悪役としてはこの上なく魅力的なキャラクター設定だというのに
それを生かすエピソードがほとんど無いんでございます。

なにしろ痛覚が無いんでございますから

指の2、3本ふっとばされても平気でいる、とか

相手をむちゃくちゃにぶん殴って自分の手の骨まで折れているのに
それに全然気付かず殴り続ける、とか

崖から突き落とされて全身血まみれ傷だらけ、片手ぷらぷら鼻血だらだら状態になりながらも
楽しそうにハミングしつつボンド&ボンドねーちゃんを追っかける、とか

そういう不死身っぷりを期待するではございませんか。
ところがこういうのが ほっ とーんど 無いのですよ。
類するものが ほ ーんの少しございましたけれどね、全くのパンチ不足でございます。

散りぎわだっておおいに不満でございます。
そう、悪役たるもの、何たって散りぎわが肝心でございます。
かくも魅力的なキャラクター設定ならば
彼にふさわしいステキな死にざまが、いくらでもあっただろうに。

たとえば

機関銃の一斉照射を受けて、みるみる穴だらけになっていく自分の体を
おやおや という表情でうち眺めながら息絶える、とか

ボンドの破壊工作で劇薬がざあざあ流れる中を走り回り
自分の足が溶けているのに気付いたころにはもう手遅れ、
間一髪で小型ヘリに飛び乗ったボンドを冷たい眼差しで見上げながら
劇薬の海に沈んでいく、とか。
ああ、いいなあ。

それだのに、実際に彼に与えられたのはぜんぜん面白みもなければインパクトも無い最後でございました。

だいたいねえ、(酔っぱらいの説教モードON)
劇中であんだけ「俺は一度死んだ人間だ」と言ってたら
当然、いよいよの断末魔には「・・・これで、本当に死ねるな」のひと言を期待するじゃあございませんか。
それなのに「これで」の「こ」の字も発することなく
自嘲的なそして悲しげな微笑みを、頬に浮かべることさえもなく
(こういう表情こそカーーーーーライルのお得意なのに!!)
あっさりぱったり無言でお陀仏させてしまうとは
監督は全世界の悪役loverにケンカ売ってるんでございましょうか。

それにね、この「脳みそに弾丸無痛男(じき死ぬ)」というキャラクター設定と
カーライルの小柄で骨細で、普通にしていてもどこかしら悲しげな風貌からして
「美人悪女とつるんで大事件をしかける悪玉」という役回りはしっくりいたしません。
「美人悪女とつるんで大事件をしかける悪玉に、こき使われる無口で凄腕の実行犯、実はボスの女に惚れている
というポジションこそぴったりでございます。

この場合、悪玉にはジョン・トラボルタを配したいところでございます。
アンディ・ガルシアでもまあ良しとしましょう。
のろ的には、チャールズ・ダンスならなおよろしい。

悪女は
スカーレット・ヨハンソン  は、こういう映画には出ないだろうし
レナ・オリンはちょっと恐すぎるので
モニカ・ベルッチで良しとしましょう。

ボンドと無痛男カーライルが渡り合っている裏側でトラボルタ親分が謀略を進め
さらにその裏側で悪女ベルッチがひそかに親分暗殺計画を練り
彼女に惚れているカーライルを使って、首尾よくトラボルタ親分を始末するも
結局ボンドに追いつめられて自殺
それを知らされたカーライル、ここは「ワールド イズ ノット イナフ」同様に
「うそだああああぁ!!」と叫びながら自暴自棄に暴れ回り
始めは「とある大きな経済都市の完全破壊」を目的としていた破壊計画を
「世界を道連れに俺も死ぬ」計画に変更、なりふりかまわず核爆発を起こそうと試みるけれども
もちろんボンドにスマートかつ鮮やかに阻止され
ボロボロになった自分の体をつくづくと見やりながら自嘲的な微笑みを浮かべて死んでいく

と。

うーむ 見たい。

監督はぜひともジョン・ウーで。

ああ、こんなに長くなってしまいました。
ワルモノばなしは楽しうございますねえ。

石川の浜の真砂は尽きるとも  ワルモノばなしの種は尽きまじ

本日はこれにて。


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