のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

ナポレオン展5

2006-01-22 | 展覧会
1/21の続きでございます。
ようやくシメでございます。

全体を通して感じたことは(否定的に聞こえるかもしれませんが)
「ナポレオン」というイメージの肥大化ということです。

革命に続く、混乱と国家的危機の中にあって
人々は若き常勝将軍ボナパルトに「救国の英雄」というイメージを託しました。
ナポレオン自身もそのイメージを積極的に活用し、
絵画という手段を用いて、いっそう拡大・促進しました。
それと同時に、彼自身の持つ自己像も否応なく肥大して行った
そのさまを、彼を取り巻いた「もの」や絵画から 見るような心地がいたしました。

あるいは
彼はもともと 欧州に君臨する巨大な英雄 という、並外れたスケールの自己像をもっており
その自己像に近づくために、バリバリ働き どんどん戦争をし 版図を拡大していったのかもしれない
とも 思ったのでありました。

とまあ実になんとも
見どころ盛りだくさんな展覧会でございましたが
のろが一番の 穴場チェックポイント としてお勧めいたしますのは
展示No.97 『サラゴサの包囲、サンタ=エングラシア修道院の襲撃』という油彩画の
右下隅にいらっしゃる

倒れたフランス軍兵士に銃尻で殴りかかる修道士 の姿でございます。




いやあ・・・
ここはひとつ 思い切りつっこんでさしあげようではありませんか。

修道士さま、汝の敵を愛さんでいーのかね。


あともうひとつ。
複製ですが、ナポレオンの足あっため用椅子
 
寒がりだったんだそうです、ナポ。
ここで今一度 声を大にしてつっこんでさしあげようではありませんか。

ロシア行くなよ、寒がり。


パリよりも ヴェルサイユよりも 故郷のコルシカ島よりも
ずっ と南の 
はるか 南の 
赤道近くの 
英領セント・ヘレナ島に流されて そこで死んだナポ。

6年間の流刑生活の間に、あのアルプス越えの時の寒さを
懐かしむことも あっただろうか。

巨大な自己のイメージを追いかけて 内には改革に腕を振るい 外には版図を拡大し続け
つまるところ、戦争をしまくったナポ。
一連の戦争で、フランス側だけでも 70~100万の死者が出たと見積もられております。
ラスコーリニコフがなんと言おうとも
「才能ある非凡人が低級なる凡人の命を犠牲にする」なんて 絶対に 良かないんだ。
(↑『罪と罰』の、このくだりを読むと、自分の倫理観を揺さぶられるような心地がして くらくらいたします。
 今こうして打ち込んでいても のろの脆弱な倫理観は くらくら いたします。)
英雄と言ったってナポ、
君は 無数の「凡人」たちの 死体の山の上に 立ってるじゃないか。

ナポレオンファンにはなれませぬが
博物館を出る頃には
本好きで 寒がりの このアニキに
なにやら親しみを覚えてしまった
寒がりのろ ではございました。









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