のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『ボローニャ国際絵本原画展』

2007-09-23 | 展覧会
『イタリア・ボローニャ国際絵本原画展』に行ってまいりました。

ボローニャで毎年開催されております絵本原画コンクール展の入選作品を集めた本展。
毎年この時期に、西宮市大谷記念美術館に巡回して来るのでございますが
のろはこの4、5年ほどご無沙汰しておりました。
久しぶりに行ってみると、CGを使った作品がずいぶん増えておりました。

それから今回は日本人の作品が多うございましたね。
その中で最ものろの心に残りましたのは、神野早織さんの『オムライス男爵』という作品でございました。
お昼に食べようとしたオムライスの中に、カイザー髭の男爵と愛犬(兼執事)が住んでいた、というお話。
一枚目の絵には、3分の1ほど食べられてしまったお住まい(オムライス)を背に
椅子に座って足を組み、新聞を手にしてくつろぐ男爵のお姿が。
男爵のかたわらでは、愛犬がまめまめしくスーツにアイロンをかけております。
住居の壁を食べられてしまった男爵、チラッとこちらを見やって不機嫌そうにひと言「何だね君は。ノックもせずに、失礼な」
す、すばらしい・・・
あとの4枚も同じアングルで、つまりオムライスを食べている人から見た構図で描かれております。
オムライス男爵はステッキを持ってお皿の縁を散歩したり
お皿の縁の水たまりを前にして困っているご夫人を、いかにも古風なジェントルマンらしく助けたりなさいます。
こういう「あたりまえな顔をして日常に割り込んで来るファンタジー」、ワタクシは大好きでございます。
奇をてらわない素朴な画風もよろしうございます。
素朴と申しますか、洗練されて い な い 感じ、でございますね。
これがオムライスといういかにも気取りのない、庶民的なメニュウや
男爵という、仰々しいけれど何故か笑いを誘う肩書きの持つ雰囲気とよく合っており、
ちょっと他の作品にはないような個性をかもし出しております。

さて、絵本原画と申しましても、可愛らしいものばかりではございませんで
不気味な雰囲気の作品も多うございました。
むしろそういう作品の方が好きなのろではございますが、少々気になったのは
そうした不気味テイストの作品の多くが、何となく似通っていたという点でございます。

あくまでもワタクシ個人の印象でございますし
コラージュやCGや銅版画などなど、技法はさまざまで題材もばらばらなので
何がどう似通っているのかと問われると困るんでございますが
うーむ 何と申しましょうかねえ、「このタイプの絵」とまとめてしまえるような。
あるいはワタクシの見方がずさんで、作品から受けた印象を丁寧に選り分けることをしなかったためやもしれません。
しかし技術的レベルも高く、センスも発想もいいけれどあのイラストレーターの絵にそっくりだなァと思う作品があったりすると
うーむ いいのかなァと考え込まざるを得ないんでございます。

そんな中、一人異彩を放っておりましたのがファビオ・ラミーロ・ロッシンでございます。
題材は『聖書』。
ここに描かれておりますのはキング・コング、ではございませんで、なんと山上で悪魔の誘惑を受けるキリストさんでございます。
これ以外にはエデンの園、ソドムの街、ノアの洪水の場面などが描かれておりましたが
どれもこれも不気味で毒に満ち、かつとってもポップなんでございます。
登場人物はほとんど骸骨、エデンの園のウサギさんすらこのとおり。



絵本というより、デスメタル好きのイラストレーターがアングラ雑誌向けに描いたコミックみたいでございます。
(まあデスメタルはもっとおっかない世界のようですが・・)
これを国際絵本原画展に出品する作者のセンスもステキなら、選んだ審査員のセンスもステキでございます。
ロッシン氏は1983年生まれということですから現在24歳。
これからどんなジャンルでどんなご活躍をなさるのか、大いに楽しみでございます。

最後に。
これまたワタクシ個人の印象でございますが、イラン発の作品が目立っておりましたねえ。
数が比較的多かったということもありますが、画風や色使いがどれも個性的で、印象に強く残っております。

AMEKAN-HASSAN
BEHZADI-AZAD-BEHNOUSH
BOOZARI-ALI
SHAABANIPOUR-AMIR