のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『シュレック3』

2007-07-11 | 映画
『シュレック3』を観てまいりました。
前2作に比べて他の映画のパロディシーンが減りましたので
元ネタがわからなくても楽しめる部分が多くなっております。多分。
また、1・2に比べるとアクがないと申しましょうか、悪ノリ感が少ないように思われました。
これまでは「大人も子供も楽しめる、どっちかというと大人寄りアニメ」だったのが、
「大人もそこそこ楽しめる子供向けアニメ」になったような。
まあぶっちゃけて申しますと
前2作ほど面白くはなかったんでございます、のろ的には。

シリーズ物コメディの常として
キャラ頼みなつくりになるのはある程度仕方がないとしても(見る方もそれを期待している部分がありますし)
このシリーズの大きな魅力であった「毒気」が薄れてしまったのは、甚だいただけません。

今回のお話は、シュレックが「遠い遠い国」の王位を押し付けるべく、
王家の縁戚である若者アーサー(ダニエル・ラドクリフにしか見えなかったのですが笑)を捜しにいっている間に
前作で王位継承者の座をつかみそこねたチャーミング王子が国に攻め入って来る、というもの。
チャーミング王子が率いている軍団というのが、魔女や一つ目巨人やフック船長といった、おとぎ話の「負け組」たち。
「俺たちは不当な目にあっている!勝ち組人生を手に入れようじゃないか!」という
王子の言葉に焚き付けられての決起でございます。
となれば当然、Long Long Time Ago から今に至るまでずーっと虐げられて来た悪役たちの
ナイスな外道っぷり炸裂が期待される所ではございませんか。

こんな話において「アクがない」というのは、なかなかに致命的なマイナス点でございました。
残念でございます、キャラの表情や細部へのこだわりは相変わらず素晴らしかっただけに。

しかーし
そんな中でひとり輝いていたのは 白雪姫 でございます。
憎々しい表情といいワガママ全開な言動といい
まー ほっぺたつかんでぶん回したくなるほどのみごとなクソガキっぷり

ぶうーん。




しかも明らかに「ディズニーにおける白雪姫」のパロディなのです。
腕を上げると必ず小鳥がとまりに来てしまうとか。
森の動物たちを総動員しての攻撃もなかなか堂に入っておりましたし。さすがは魔女の娘でございます。
もしも次回作が作られるなら彼女はぜひ悪役として登場していただきたい。

そう、本作で何といっても残念だったのは、悪役がいまひとつ魅力に欠けていたことでございます。

一作目ではちんちくりんの頭でっかちファークアード卿が


二作目では溺愛マミーのフェアリー・ゴッドマザーが


それぞれステキなワルモノぶりを見せてくれたのですが
今回のチャーミング王子には、この大役はちと荷が重かったようでございます。
よい悪役の条件をそこそこ満たしてはいたものの
そこそこ止まりと申しましょうか、物足りないと申しましょうか、不完全燃焼と申しましょうか
要するにパンチがきいておりませんでした。

悪役たるもの、ただ単に性格が悪いというだけではつとまりません。
人を人とも思わず、自分の事だけがひたすら大好きで
目的達成のためには手段を選ばず、あらゆる手を尽くして善玉たちを苦しめ
主人公を人生最大の危機に陥れねばなりません。
残忍で、冷酷で、頭のネジが数本ふっ飛んでいながらも狡智にたけ
なおかつ、どこかしらお茶目でなくてはなりません。

チャーミング王子は個々のイベントにおいて、あまりにもあっさりと成功してしまうので
「あの手この手で追いつめる」感がございませんでしたし
お茶目度においても大いに不足していたと言わざるを得ません。
もっとマザコンでナルシストな性格を前面に押し出してくれたらよかったのですがねえ。
例の「サラサラヘアーのぉ~~~っ!」をしつこいくらい繰り返すとか。
ママンの写真を肌身離さず持ち歩き、何かあるというと所かまわず取り出してママンとボクの世界にトリップしてしまうとか。

フック船長にも、もっと際立った活躍をしていただきたかったのですが
最後までチャーミング王子の使いっ走りの域を出ませんでした。
せめて長靴を履いたバンデラス猫と ちゃんちゃんばらばら でもして
クライマックスをもう少し盛り上げていただきたかった。
前作では、ハッピーエンドとわかっていても、大詰めのシーンではハラハラドキドキ手に汗握って観たものです。
(特に兵士がシュレックたちを追いかけて来た時、長靴猫が一人残って「Go! She needs you!」という所にはグッと来ましたね)
本作では悪役による破壊活動も、主人公サイドによる秩序回復も
あっさりさっぱりうまく運びすぎで、しかも所々に小クライマックスが散在しているので
肝心かなめの大詰めシーンは印象の薄いものになってしまっておりました。


不満ばかり並べてしまいましたが、むしろこちらの期待が高すぎたということかもしれません。
実際、「シリーズの中で一番面白かった」という感想をお持ちのかたもいらっしゃるようですし。

ここでぶーぶー申しておりましても
もし4作目が作られたなら、のろはまた観に行ってしまうことでしょう。
あのひねたおとぎ話キャラたちが大好きでございますので。
そうそう、チョイ役ながら今回初めて登場した
ざあます言葉で喋りそうな宮廷スタイリストのおっちゃん、なかなかのろごのみの変人でよろしうございました。
次回作があるならば、ぜひとも出演していただきたいものでございます。