渡辺淳『パリの橋――セーヌ河とその周辺』(丸善ブックス103、2004年)
大都会の橋の場合、「おお、これが○○橋か!」などと感慨にふけって渡ることはほとんどないだろう。この著者のように、パリのセーヌ河にかかっている橋というテーマで旅行でもすれば別だが、またボンテ・ベッキオのように橋の上に家が並んでいて、それを観光すること自体が目当てなら別だが。
でも、何度かパリに行って、セーヌ河を渡ったことがあるので、そのときはなにも気づかなかったことを、この本で読んでみると、あれがそうだったのかというようなことが思い出される。こういう本を読むと、やはり旅って、なんかテーマをもつことが大事だな、旅を面白くするコツだなと思う。
今年の夏にパリに行ったときは、例のサン・ジャン・プール教会の木を模した列柱を見るのがひとつの目的だったし、それはそれで面白かった上に、思いがけない出会いもあったことは、以前記した。
でも今年はちょっと橋のことも注目していた。というのもルーヴルの脇からオルセー美術館に行くときに、ソルフェリーノ歩道橋という徒歩者専用の橋を渡ったのだが、そのとき、建築の勉強をはじめたばかりに息子が、ああこれは三角形の組み合わせで出来ている○○だと説明してくれたので、へぇと思ったのだった。そういう目でみると、とくに鉄筋で作られたものに三角形がめだつ。
それとオルセー美術館からルーヴルにわたるときにいつも使うのがロワイヤル橋だ。これはべつに何の変哲もない橋だが、そのあたりがヴォルテール河岸といって、オテル・ド・ヴォルテールというホテルがある。これがガイドブックでみるとなかなか洒落たホテルで一度泊まってみたいのだが、交通の便は悪そうだし、あたりに食事をできるようなところはないしで、それを覚悟で泊まらなきゃならないなと思っている。でも一度泊まってみたい。そこからの眺めはじつによさそうだ。
パリに旅行したときに、凱旋門の上の売店で1575年のパリの絵地図を買ってきたのだが、これをみていると、当時のパリはシテ島を中心としたごく小さな町にすぎない。この本でも説明されているように、いまのサンルイ島はルーヴィエ島、雌牛島、ノートルダム島の三つでできていて、橋がかかっていないし、シテ島にもノートルダム橋、シャンジュ橋(両替橋)、サンミシェル橋、小橋の四つしかなく、まだポン・ヌフはかかっていない。すでにオテル・ド・ヴィル(市役所)やルーヴルはあるが、高級ブティックで有名なサン・トノレ街は城壁のすぐ近くだし、サンジェルマン・デプレ教会が城壁の外にあるなど、みていて飽きない。それにセーヌ河が、fleuveではなくて riviereと呼ばれているのも面白い。
パリの紋章に帆船が大きく描かれているのも、ここが重要な港で、当時は帆船が重要な輸送手段だったからだろう。
古地図って眺めているとおもしろいな。
大都会の橋の場合、「おお、これが○○橋か!」などと感慨にふけって渡ることはほとんどないだろう。この著者のように、パリのセーヌ河にかかっている橋というテーマで旅行でもすれば別だが、またボンテ・ベッキオのように橋の上に家が並んでいて、それを観光すること自体が目当てなら別だが。
でも、何度かパリに行って、セーヌ河を渡ったことがあるので、そのときはなにも気づかなかったことを、この本で読んでみると、あれがそうだったのかというようなことが思い出される。こういう本を読むと、やはり旅って、なんかテーマをもつことが大事だな、旅を面白くするコツだなと思う。
今年の夏にパリに行ったときは、例のサン・ジャン・プール教会の木を模した列柱を見るのがひとつの目的だったし、それはそれで面白かった上に、思いがけない出会いもあったことは、以前記した。
でも今年はちょっと橋のことも注目していた。というのもルーヴルの脇からオルセー美術館に行くときに、ソルフェリーノ歩道橋という徒歩者専用の橋を渡ったのだが、そのとき、建築の勉強をはじめたばかりに息子が、ああこれは三角形の組み合わせで出来ている○○だと説明してくれたので、へぇと思ったのだった。そういう目でみると、とくに鉄筋で作られたものに三角形がめだつ。
それとオルセー美術館からルーヴルにわたるときにいつも使うのがロワイヤル橋だ。これはべつに何の変哲もない橋だが、そのあたりがヴォルテール河岸といって、オテル・ド・ヴォルテールというホテルがある。これがガイドブックでみるとなかなか洒落たホテルで一度泊まってみたいのだが、交通の便は悪そうだし、あたりに食事をできるようなところはないしで、それを覚悟で泊まらなきゃならないなと思っている。でも一度泊まってみたい。そこからの眺めはじつによさそうだ。
パリに旅行したときに、凱旋門の上の売店で1575年のパリの絵地図を買ってきたのだが、これをみていると、当時のパリはシテ島を中心としたごく小さな町にすぎない。この本でも説明されているように、いまのサンルイ島はルーヴィエ島、雌牛島、ノートルダム島の三つでできていて、橋がかかっていないし、シテ島にもノートルダム橋、シャンジュ橋(両替橋)、サンミシェル橋、小橋の四つしかなく、まだポン・ヌフはかかっていない。すでにオテル・ド・ヴィル(市役所)やルーヴルはあるが、高級ブティックで有名なサン・トノレ街は城壁のすぐ近くだし、サンジェルマン・デプレ教会が城壁の外にあるなど、みていて飽きない。それにセーヌ河が、fleuveではなくて riviereと呼ばれているのも面白い。
パリの紋章に帆船が大きく描かれているのも、ここが重要な港で、当時は帆船が重要な輸送手段だったからだろう。
古地図って眺めているとおもしろいな。