読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

「白い薔薇の淵まで」

2006年12月27日 | 作家ナ行
中山可穂『白い薔薇の淵まで』(集英社、2001年)

女性の同性愛者の愛憎を描いた小説と要約しても、なにも説明していないことになるだろうな。

なんだか見てはいけないものを見てしまったような、そんな読後感が残る。きっと女同士の同性愛って、男同士の同性愛とはまったく違った様相を見せるのだろうと思う。どちらもまったく知らない世界だが。

男の場合には射精ということで、一応ひと区切りがつくのだが、女の場合にはそうはいかないようだ。きりがない。そのことをよく分かっていた塁がだから最初は土日しかとく子(クーチ)の家に泊まらなかったのに、最後には同棲のようになってしまい、どろどろの人間関係に行き着いてしまう。

塁の父親は刑務所に、母親は精神病院に入っており、二卵性双生児の弟は失踪中で、彼女は天涯孤独だということが、そしてそうした自分の生きてきたわずか20数年を乗りこえるために(?)小説を書いているということが、クーチにはどうでもいいことではない。

いったい自分は何を書いているのだろう。こういう世界について自分は書くべきものをなにももっていないことがよく分かる。

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