読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『デフレの正体』

2014年12月19日 | 評論
藻谷浩介『デフレの正体』(角川ONEテーマ21、2010年)

まえがきで、自分で自分の本を「読んでおいた方がいい」と推薦するだけのことはある。それだけ面白い本。というは、この一年に読んだ本の中で一番のお勧めだと言ってもいい。日本人みんなが読むべき本だ。

この本の一番言いたい所は「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ」という、たぶん誰も主張していなかったことだが、この本の味噌はこれをきちんとした統計数字に裏打ちされて主張している点にある。

私たちは自分の「実感」を大事にしなければならない(後でもその実感を持ちだして書いたりするつもりだから)が、やはり実感だけで何でもお見通しだったら、研究なんかいらない。実感を事実は裏切ることもある。分りやすい例が、太陽と地球の関係だ。実感では、太陽が地球を回っているが、事実はその逆なのだ。

それに実感はしばしばマスコミによって操作される。中国の台頭のせいで日本経済が落ち込み始めているとか、地方の経済は都会に比べて悲惨だとか、景気をよくすれば日本経済はもちなおす、などなど。

しかし実際には、都市部よりも地方の経済のほうが活況を呈していることだとか、中国の台頭は日本経済も上昇させているだとか、この本では事実としての数字によってそうした「常識」を打破している。

どんなに経済努力をしても、生産年齢人口=現役世代が急激に減少している現在では、無駄である。現役世代こそが一番お金を使ってくれる世代であり、彼らにお金を回す、現役世代の女性(専業主婦)を就業してもらって、現役世代を増やす、外国人観光客を増やす、こういった対策のための提案も面白い。

今は、団塊の世代がまだ完全にはリタイアしきってはいないが、リタイアしている最中だ。それを実感するのは、通勤電車の混雑だ。私はこれまで30年以上、週に2日あるいは3日はほぼ同じ時間の電車で通勤していきた。以前は私の最寄り駅から、急行電車が留まる次の駅までが一番混んでいて、それこそ身動きできない状態だったのに、今は隣の人と体が触れることもない。それに気づいたとき、あれ高校生が休みなのかなと思ったが、高校生もいる。ああ団塊の世代がリタイアし始めたんだなと思った。

20年前にはウォーキングしている人なんてほとんどいなかった。私は腰痛でジョギングができないときにウォーキングをしていたから、古株なのだが、10年位前から、あっちでもこっちでも年寄りがウォーキングしているのを見かける。みんなリタイア組なのだ。
これから10年もすれば、この団塊の世代の足腰が弱って、病院や施設に入るようになれば、それこそ大変なことになるだろう。どうするんだろう。

私たちのように、団塊の世代の後の世代は、ほんと野垂れ死にするしかないな。



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