『超高齢社会のまちづくり: 地域包括ケアと自己実現の居場所づくり』(2023/4/13・後藤純著)からの転載です。
高齢者のニーズ把握は難しい
・自分は高齢者ではない
内閣府の調査で、「あなたは自分を高齢者だと思うか」という調査がある(図3)。 70~74歳では、自分を高齢者と思う人と、まだ高齢者だと思わない人が伯仲している。 75歳でも26.4%は自分を高齢者だと思っていない。 80代になるとさすがに約8割が高齢者だと認めるが、それでも12.5%は抵抗している。
高齢者と呼ぶ年齢を10歳引き上げて75歳以上にしてはどうかという議論もあるし、70歳を高齢者と呼ばない条例を設けていたり、高年者と別の呼び方にしている自治体もある。高齢者と呼ばれることで、年金をもらう虚弱な高齢者と見なされて、バスは無料、博物館や動物園は無料といった枠に一律に入れられるのは嫌だと考える人も多い。本書の問題提起でもあるが、高齢者といった場合のこのようなステレオタイプの見方を早急に見直す必要がある。またステレオタイプな見方は、その背景には従来の社会保障制度があり、これからの20年で大きく変わるのではないかと思う。
高齢者において、「仲間外れにされた」「疎外感を感じた」と訴える人が多い。どんな状況か詳しく確認してみると、意外にも孤独や孤立を訴えた方に原因がある場合が目立つ。たとえば、常に不機嫌で怒っているとか、「○○さんは、しあわせそうですね」というような妬みに近い発言を繰り返して、結果的に周囲から避けられてしまうパターンである。
原因の一つは、若い時からの個性が、老化にともなう抑制機能の低下によって出てしまっている場合である。また認知症の初期症状、薬の影響なども、(認知症サポーター養成研修などでは、古くからの友人のこのような言動の変化パターンについて解説されることがある。この場合、認知症に対する理叨が深まることで、むしろ友人が優しく見守ってくれることもある。
もう一つは、羞恥からくる不安が高じてジレンマとなり、他者と上手く関われなくなる場合である。たとえば、ある自治会のシニアサロン活動の一環で、手芸の企画があった。その方は、自分は手芸が得意だと思って楽しみにしていたが、その日同年代の参加者と比較して自分の手芸品が劣っているように思えて、恥ずかしくなったというのである。それ以来、何かにつけて自分の衰えが気になるようになり、サロンに通えなくなり、孤立を深めていく。高齢期の女性の比率が多いサロンは、「おしゃべりだけのサロン」が一番盛り上がる、というのもサロン活動経験者の知るところである。(つづく)
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