超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

リヴスコール/THE BACK HORN

2012-06-06 22:24:35 | 音楽






THE BACK HORNのニュー・アルバム「リヴスコール」を聴いた。






前々作の「パルス」と前作の「アサイラム」はそれぞれ傑作だと思ってて
それはなぜかっていうとそれまでの等身大っぽい流れから敢えて初期のエッセンスをまた引き戻した
あの頃の激情を再び蘇らせつつも、今のバックホーンの逞しさも魅せるっていう
初期のファンも最近のファンも満足出来るようなアルバムだったからで
そこから考えるとこの「リヴスコール」ってアルバムはそういうアルバムではないんですよね。
とはいえ、満足度は引き続き高いんです。それが個人的に面白い感触で。
もうこのアルバムでは初期のエッセンスは完全に振り切ったと言ってそう断言しても良いと思う。
私が初めてバックホーンの名前を認識したのは「風船」からなので、
今の状態っていうのは初期衝動を抜けて完全に垢抜けた状態だと聴いてても思うんですけど。

じゃあ、なんで初期の匂いがほぼなくなったのにまだ以前の作品のように良いと思えるのか?って言ったら
やっぱりただ単純に突き抜けてるからなんですよね。
はっきりいっちゃえば「太陽の中の生活」とか「THE BACK HORN」は突き抜けてたとは言い難い。
その分「パルス」「アサイラム」では初期の激情の復活によってまた盛り返した訳ですが
いよいよ初期の激情に頼らなくても良い時期が来た、
ストレートなバックホーンで勝負出来る時期が来たって言う、
そういう季節の幕開けとして鳴っているのがこの「リヴスコール」なのだと思います。
端的に「Live Squall」って考えると正に!って感じのタイトルだし
ある意味開き直った感覚のポジティブなメッセージソング群はウソくささに負けないタフさを持っている。
いよいよもって完全な脱皮を果たしたなという印象のアルバムでなんだか清々しい作品ですね。
でも、ここまで制限がなく伸び伸びやってるアルバムも初めてな気はします。
それまでの狭い世界とそのエッセンスを振り切って
確実に聴き手を勇気付けるロックンロールにシフトしたバックホーン
その第一歩の一撃は非常に明快でシンプルで、ソリッドで格好良い作品でした。
個人的な感触で言えば「THE BACK HORN」を磨き上げた、あの要素を昇華させたって印象のアルバムで
もう狂気とかその辺の要素は確実に少なくなってしまっているけれど
でもロックバンドとしては明確に幅を広げて、より伝わりやすい形になっているかな、と。
とにかく「生」、もがき苦しみながらも全力で生き抜いてやるって迫力で鳴らされている
その執着心こそがこのアルバムの大きな核になっていると思います。
その熱量に心動かされる、そんな作品ですね。


ここまでストレートに振り切った曲はなかった「シリウス」から
日本的なリフの威力にのめり込む「シンフォニア」、多分最も暗い「いつものドアを」から
意外とオルタナちっくで面白い「風の詩」だったりこれぞ正に今のバックホーンならでは!っていう
「星降る夜のビート」、なんとクラブを髣髴とさせる音像と詩になっています。
なのに、幅が広がった感じで素直に良いんですよね(笑)。
そこから「超常現象」「反撃の世代」とストレートなロックナンバーが続く中で
多分ファンもそうじゃない人も認める名曲「世界中に花束を」、やっぱりこの曲の包容力は凄い。
聴いてると自然に目頭が熱くなってくる類のバラッドです。励ますでも怒るでもなく
ただ単純に存在に向けて賞賛を贈る震災後のリアクション・ソング。
こういう形のメッセージもあるのか、と。
最後が実直なポップソング「ミュージック」で終わるっていうのもまた面白い。
これぞ日本語ロックの最先端とも言えるどこに出しても恥ずかしくないロックンロール・アルバムです。
同時に、これが狂気に頼らない等身大バックホーンの新たなる幕開けって感じもしますね。
それでも、限界を突き破るような気合で鳴らされている、そんな地力溢れるアルバム
また聴き込むのも楽しそうな一作ですね。いい作品だと思います。






欲を言えば前々作の「人間」、前作の「太陽の仕業」みたいなイッちゃってる曲も一曲あればって
そうも感じましたが、逆に言えばそういう曲がないのが吹っ切れた証拠でもあるんでしょう。
この先のバックホーンの変遷にも期待したくなる力強い一枚でした。





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