超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

歌詞分析シリーズvol.2 労働/PERIDOTS

2012-07-08 14:58:56 | 音楽(歌詞分析)






一週間ぶりの歌詞分析シリーズ。結構コンスタントにやっていくつもりです。今回はPERIDOTS「労働」です。







労働     ミニアルバム「PERIDOTS」収録







この歌は過去にも応援歌シリーズの一端として応援歌でもないのに取り上げた記憶がありますが
それくらい自分にとっては大切な一曲で、何度も何度も良さを伝えたい曲だったりもするんですけど
恐らくこの歌で描かれてる心情っていうのはおおよそ他の決別ソングにはない、
非常に現実的で、でも地に足のついたものになっていると感じられて。
「僕は君しか」
「私にはあなただけ」
そんな事言ってても結局は口だけっていうかね
口じゃなんとでもその場しのぎの嘘を平気で言えちゃう生き物なんですよ。人間って。
この辺は自分の実体験も入ってたりするんですが(笑)。要するに半分はテンションだけで生きてるって話です。

でも、そんな自分が大切にしてたものを失っても奪われても
人間は生きていけちゃう
どんなに憂鬱でやりきれない現実を迎えても
息吸ってりゃ時間は過ぎるしどんなに苛立ってても朝はまた来るし、
失った何かを別の何かで補填する事だって容易に出来てしまう、そんな
巷で歌われてる大げさな別れの歌に対するアンチテーゼとしてこの曲は鳴ってるんです。
ある意味ではとてもシビアですけど、その分現実を直視出来てほんのちょっとだけ救われる。
私にとってはそんな貴重で素敵で、完全に代えの効かない楽曲の一つ
その結果が「働く」という行為にも繋がる
劣悪な現状を省みつつ、それでも自分なりに少しでもいい明日を目指そうとする、そんな確かな意思のある曲。
自分のケツを叩いてくれる効果があるって思うとその意味では優しい楽曲でもあるのかもしれません。






【「話したら救われる」んなら どんなことも言うつもりだったけど】

自分の抱えてる悩みや苛立ちは基本的に自分だけのもので
それを誰かと共有しても本当に理解してもらえるなんてことはまずないし
それで救われた経験も一回も無い
自分の痛みを分かれるのは
自分だけでしかない
だから、「話したら救われる」なんて事はなくてむしろ価値観のズレに翻弄されて
更に傷が深まるだけ。それは決して話すのが無駄という意味ではなく
本当の意味で自分を救えるのは自分でしかないということ
同時に抱えて生きるのを恐れるな、という水面下のメッセージ性すらも感じられるのがまた凄い所で。



【長居はしない 僕はすぐに帰るよ】

人によってはずっと引き摺る人もいるだろうし
巷で歌われてる別れの歌はそれはそれで正しいのかもしれないんですが
冷静に考えるとそこで留まる時間も余裕もないっていうか
どう考えてもすぐに進まなきゃいけない明日は
常に迫っていて
感傷だったり「かわいそうな自分」に浸ってる時間なんて本当はある訳もなく
長居をする理由も意志も本当は残されてないはず、そういった意味でのこの歌詞は
実に現実的でいて、それでいてある種の正しさも含んでいて。幻想の中に身は置けません。



【君のいない世界にだって おそらく何らかの幸せを見い出す】

で、この歌の肝はここなんですよね。
一つ自分の愛する対象を失った
一つ自分の大切なものを失った
でも、それでもまた次の喜びや幸せを求めるのが人間だから
平気でそこを補填出来てしまうのもまた事実で
その痛みも
その悲しみも
いつか感じた苛立ちも
時が経てば気持ちの整理が付けば水の泡の様に消え去って何もなかったかのように
空っぽになってしまう、でもそれは決して異常でも哀しい事でもなくて
「ここ」は「それ」が当たり前の世界なんだ、と。だから瞬間的な時の流れを嘆く事はない
別れを引き摺って歩けなくなるなんて事もない、結局は今この瞬間も別の何かで埋め合わせてる自分がいる
そしてそれは「当たり前になってしまう」、と。冷静な視点での別れの歌になってて
その「どうしようもないよ。」って
そんな風に呟くように歌うその声に何度も何度も魅力されて来たんですよね。
メッセージでも、説教でもなく、形容するとすれば「説得」。こんな歌はそれまでに感じた事のない
そんな新鮮な印象があって当時も今も大いに引き込まれる私なのでした。







【当たり前になった】

いくら失くしても悲しくてもやりきれなくても、それでも平気で人は歩けちゃう
補填出来ちゃうんだよ、っていう夢見がちな思想に対する指摘と
ある種の空しさを感じる楽曲になってますが
一緒に時間を共有した、分かち合った誰かが今はもういないとしても
それを認めたくないにしても、そんなのはもう今や「当たり前」ってカテゴリーの中に入ってるんだから
それが「異常」ではなく、それが「当たり前」である事を認めなきゃならない
自分の中にあった一部分が変わった事に気付かなきゃならない
その上で、

【働こう】

結局は前に進んでいかなきゃならない。
そんな非常に現実的な楽曲ですが、
その分ちょっと幻想から離れて少しだけ前を向ける
聴き手にとってプラスになる作用も少なからずあるんじゃないかな、と思います。
その辺の「浸る」、だけではなく前を向かせる効果があるっていうのも
他の決別ソングとは違って
「その先」をしっかり描けてて良いなあ、と
そう感じる訳なんです。






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