超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

zeitgeist/THE NOVEMBERS

2013-12-08 14:29:36 | 音楽

















例外しかありません
正解しかありません
解決はありません
問題がないのだから (Sky Crawlers)



















この度完全に独立、自主レーベルを設立し自らで売る店舗や方法まで提示してリリースされた新作
今のTHE NOVEMBERSのインディペンデントな格好良さがフルに出ている傑作に仕上がっています。
この作品に対する回答も色々とあるとは思いますが
これが私なりに選んだ回答として今から長々と提示させて頂きます
正直ここまで素晴らしいものになってるとは今回もまた予想以上の出来でした。

そもそも私がなぜここまでTHE NOVEMBERSの音楽に夢中になっているか、と言えば
彼らもまた○○のフォロワーとして出てきたバンドであり
そこから作品を重ねる毎に独自の味を生み出し
今やジャンル自体がTHE NOVEMBERSと言える位に個性的なバンドとして成立しているその変遷の面白さ
気が付けば○○に似てるなあ~とか一番初めに聴いた印象が無くなってる位に逞しくなり
バンド自体が持っているメッセージも随分明白になってきた感覚があります
小林祐介はそれを「問いかけ」や「選別」という言葉を使って表現していますが
私なりに言葉を選んで表現するならば「能動」という言葉一つに尽きるのではないでしょうか
限定的になる事で作品に対する愛着や感謝も増し
「どこでも、いつでも」という甘えた観念が薄れます
自ら「幸福」や「自分にとっての豊かさ」に邁進するという意識を提示する事によって
不出来な自分に酔う、やりもしない内から勝手に判断して諦める、という無駄な価値観を消し去る
今の活動方針と歌っているテーマは「能動」そのものであり
しかも、「頑張れ」でも「負けるな」でもない
今出来る意識改革を中心に歌われてるので押し付けがましさも暑苦しさもない
だからといって放っておくような無関心・薄情さも存在していない・・・
という実に絶妙なバランスで鳴らされている音楽だと深く感じます

聴き手に影響を与える音楽、というのは何も壮絶な人生を歌ったりカリスマっぽいメッセージを放つ
それだけが総てではなく、むしろ些細な日常の能動を歌うことこそ一番なのではないか
なんて事を今のTHE NOVEMBERSの音楽からは感じてますし
実際日常生活に於いて彼らの紡いだ言葉が脳裏に過ぎる事も多く
その意味では一般的な方法論とはまた違った方法論で聴き手の背中を後押しするような
ただ見た目が違っているだけでその実きちんと普遍性も内包出来ている音楽なのだと思います
その美しい伝達の仕方に惚れ惚れとするような、そういうアルバムに今回もなっているという話ですね。


今作「zeitgeist」は今までと比べても随分自由度が増しています
まず歌詞のモチーフがテトリスだったり(!)、童謡のエッセンスを取り入れた曲があったり
神秘的な雰囲気を漂わせる曲もあったりノスタルジーを強調した曲も存在している
その上で全体的なボーカリゼイションは変えない事で統一感を演出しているようなアルバムですね
だから、ただ単に「クールで格好良い」だけの音楽ではなく
ネタ元、モチーフを探るのも随分「面白い」音楽になりつつある
個人的にテトリスを題材にした曲なんて初めて聴いたので実にオルタナティブだなあ、と(笑
そういう枠に捉われない自由さがより一層増しているアルバムなので聴き込むのも楽しいと思います。
多分一度聴くだけじゃその全容は伝わり切らないと思うので何度も聴き込むの推奨です
初めは「格好良い」のただ一言で済んでた音楽が
どんどんユニークで懐が深いように思えてくるその聴き手にとってのイメージ変化も実に心地良いですね

今作のメロディラインはどの曲もアッパーなものではなく
這うように聴き手に迫ってくるようなシックなメロディラインが多いです
その冷徹な印象は前作から引き継ぎつつ、
最後の方では前々作の限りなく優しさが滲み出るような音像が復活して来ます
すぐにパッと盛り上がれる、というよりは内側からゾクゾクと沁み込んで来る印象のメロディ
聴けば聴くほどその格好良さがダイレクトに伝わってくるのでその意味でも長く聴ける類の音楽
気が付けばむしろ「シック」でなく「ド真ん中」にも思えちゃうくらい練り込まれたメロディラインを
しっかりと堪能出来るアルバムにも仕上がっていますね
全体的に鋭く磨き上げられており変化した、と思ってる内はいつもと違う感触を受けますが
それが馴染んでくるとこれが格好良いんだ、と思えてくる懐の深さが特徴的ですね。

「GIFT」では「能動」をしっかりと歌い切り、
「Fourth Wall」では都合の悪い現実とその道を歩くべきという非情さ(まともさ)を歌い切った
今作でもその両方が融合して組み込まれてると感じてますけど
それに加えて歌われているのは
すべての人と分かり合う事は出来ない
100%伝わる事は有り得ない
自分が選んだ行為や思想は場合によって他人に不通且つ傷を付けるものでもあり得てしまう、という
ある種の「シビアさ」なんですよね


好きな事をしてもいい
だけど誰一人として
人を傷つけないこと
そんなものを想像できるかい (Flower of life)


彼の仕草や彼の愛し方はあの国では罪
彼の首飾り彼の祈り方はあの神では無効 (Meursault)


ただ単に「行け」「やるべき」と無責任に背中を押すばかりでもなく
積極的な「能動」が引き起こすであろうデメリットもしっかりと歌われているんですね
こういうところにもTHE NOVEMBERSの誠実さを感じてしまう訳ですが
大事なのは「事実」ではなく
やっぱり「選択」なわけです
闇と光を同時に提示して、その上で聴き手の意思や決意の程を問いただす
「なぜ?どうして?」ではなく「そういうものなんだよな」と思える素養を提示する
納得して前に進んでくれる事を祈る、という方法論は無責任からはまったく掛け離れたものであって
自律、勝手に、という前置きはありつつもしっかりと聴き手や世間との繋がりを感じさせる一枚にもなってます


知って
想って
生きて
終わって (Meursault)


短いけれど、このフレーズが実に象徴的ですね
いい加減じゃない、無関心じゃない、ただの自己満足でもない
本気で聴き手の意識変革や前に進む為のエネルギーの一部になろう、という気概を感じる
音が格好良い、とかメロディがゾクゾクするだけじゃなく歌詞に関しても相当の完成度を誇る
様々な角度から再考しても妥協の余地が見当たらないアルバムになっていると言えると個人的に思う
勿論テトリスを題材にしたりと遊びの要素もあるのでただ重いだけでもない、っていう。
そこがまた絶妙ですね。


で、個々の楽曲に触れますと
とにかく性急かつ神々しいアンサンブルに耳を惹かれる「zeitgeist」の時点で最高です
この曲は「真っ白」というイメージそのものでその曇りなき美しさに陶酔してしまう曲ですね
前作の冷徹さを引き継いだ「Louder Than War(2019)」と「鉄の夢」もそれぞれで格好良い
どちらも表面的な怒りではなく、内側からグツグツと煮え滾ってるような怒りを想起させる楽曲です
歌とサウンド、アレンジはそこまで激情じゃない代わりに内心激昂してるのが伝わって来るというか
顔は冷静だけど内なる怒り、衝動をピリピリと感じる類の音
特に「鉄の夢」は後半メロディーの雰囲気が変わるパートがあってその変化も快感です
そしてテトリスを歌詞のモチーフに組み込んだ「We」、
前々作「GIFT」っぽいリフに後半シャウトという正しく前作前々作の融合ソング「Wire(Fahrenheit 154)」
この辺は前述の聴き手に這いよるようなシックでクールなメロディが光っている楽曲群
童謡のテイストを加味した「D-503」のユニークさ
どれもこれも一筋縄ではいかない複雑さと今のTHE NOVEMBERSの個性に満ちた楽曲に仕上がっています
正直ここまで内側からゾクゾクっとする感覚のロックも今は早々ないと感じて最高です

後半からは前々作のテイストが強くなり
シビアさ漂う「Meursault」、
バンドアレンジに拘らないこれまた神秘性あるアレンジが美しい「Sky Crawlers」、
この曲はそれだけに留まらず聴き進めていく内にどんどんポップに開放的になっていく
その変化も同時に楽しめる二段構造のような楽曲構成が素敵な曲ですね
そしてラストに決定打的な名曲二曲
「Ceremony」と「Flower of life」があります
最初は神々しい音像から這うようなメロディラインを武器とするシックな音像に変化し
それが段階を経て最後には完全にポップに染まっていく一連の流れは正直見事としか言えない
バラエティに富んでる、とかそういうのではなくまるでグラデーションみたいなアルバムだなあ、と
実にアルバム一枚通して聴く価値があるアルバム、というのもある種の提示になってる感覚で好印象
冷徹だったのが毛布みたいに柔らかく優しさが零れ落ちていく方向性に最終的に変わる
これを聴けた時点で自分にとってはまた大切な一枚だとはっきりと感じれた気がします
全体を通してかなりのオリジナリティを感じる楽曲群であり
その上で普遍的なポップも兼ね備えている
まさしく「GIFT」と「Fourth Wall」に対しての一つの回答になり得ている作品だと思います
個人的には大々的に支持することをためらわない、いとわないアルバムですね。
始まりの一枚には実に相応しい、今のTHE NOVEMBERSを象徴するような傑作アルバムです。
是非、触れてみて欲しい。そして聴き込んで欲しいです。
















ちなみに自分はMERZのオフィシャル通販で購入いたしました
今回アマゾンとかでは取り扱ってないのでブログのみのレビューになりますね
小さな、ノベンバの模様入りのトートバッグとまるでプレゼントのような大きめの封筒に入ってる包装
そしてメッセージペーパーとおまけとしてひなげしの種が一緒に付いて来ました
こういう買い方も有り難味があって全然アリですね。
良い音楽を、受け取りました。
ありがとう。

・・・ツアーも楽しみです!




この子の明日を守りたい
この子に明日を届けたい
薄紫の花で飾って
僕らはこれでよかったんだ
全てこれでよかったんだ (ceremony)






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2 コメント

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Unknown (まゆこ)
2013-12-22 00:49:35
こんばんは。
久しぶりにコメントさせていただきます。

私も『zeitgeist』の素晴らしさに震えました。
個人的に、ノーベンバーズはもっと個人に寄り添う楽曲というか、ひとりひとりが静かに情感を寄せたり、反対にひとりひとりへ情感を囁くようなバンドのイメージだったのですが、いつの間にかもっと壮大なバンドへと進化・深化していましたね。今も前記した要素は持ち合わせているのですが、もっと広範囲な、大きな度量のバンドへ変化している気がしています。それは作品にも、活動自体にも言えることなのですが。

記事にも記述がありますが、アルバムが進むにつれてのグラデーションがとても美しくて感動してしまいます。
特に後半にかけては、気持ちよさがいっそ官能的で、初めて聞いたときは堪らなかったです。ライヴで聴いたらどうなってしまうのだろう、とくらくらしました。恵比寿のチケットは無事に入手出来たので、いまからとても楽しみにしています。
ノーベンバーズの活動や作品には、いつも真摯とか、誠意とか、なにかそういうもの、或いは凛とした佇まいとか、そういうものを思います。それらに触れて私はいつも背筋がピンと伸びる思いです。

あなたの記事にも同じものを感じています。
これからも程々に、素敵な記事が読めるのを楽しみにしています。
返信する
いつも感謝です! (西京BOY)
2013-12-24 21:18:54
まゆこさん、こんばんわ!コメントありがとうございます。


>私も『zeitgeist』の素晴らしさに震えました。
今回のアルバム素晴らしいですよね・・・!
個人的にめっちゃお気に入りなんでとても嬉しかったです。

そうですね、
以前よりも視野もスケールも大きく広がっている印象ですね
個人的には憤怒やルサンチマンの放出の季節が一旦終わって
今度はそこからいかに豊かさを得る為に邁進出来るか、自分を維持する為の努力をこなしていけるか~っていう
また違った意味での「シリアス」さが込められている気がします

>今も前記した要素は持ち合わせているのですが
でも、確かに初期衝動である憤怒や物悲しい儚さもしっかり残ってるのがまた素敵なんですよね
昔は昔で格好良いし、今は今でとても格好良い。理想的な進化を遂げているように思います。


>アルバムが進むにつれてのグラデーションがとても美しくて感動してしまいます。
>特に後半にかけては、気持ちよさがいっそ官能的で、初めて聞いたときは堪らなかったです。
この記述に対するこの反応もまた「zeitgeist」好きとしてとても嬉しかったです
後半部分の慈しみが溢れ出す様な流れ、本当に素晴らしいですよね。
カチカチに固まっていた氷が溶け出していくような、
雷雨だった空が晴れ始めて光が漏れていく時のような感動があります
勿論、氷、雷雨も最高なんですが(笑
一枚のアルバムとして非常に完成されたものを感じますね。
「官能的」って表現も素敵ですね!

最近は結構チケが切れるの早くなって来てますね
私も恵比寿公演のチケット無事取れました。今から楽しみですよね。


>いつも真摯とか、誠意とか、なにかそういうもの、或いは凛とした佇まいとか、そういうものを思います
>それらに触れて私はいつも背筋がピンと伸びる思いです。
これは完全に同意です。
対価を取る分は意味・意義のある音・歌詞に仕上げる~という気概とプライドを感じてますし
さまざまな角度から結局は「聴き手の背中を押す」行為に腐心されてるのが今のノベンバなのだと思ってます
実際私も今作に既に励まされまくってます(笑
記事の冒頭に引用した歌詞なんか特に。

ここまで変化しているのに集客が地道に増え続けている、っていうのが
いかに聴き手が彼らの姿勢を信頼しているかを如実に語っていますね。
私も確実に影響を受けてると思います。「能動」に対する自覚を促すフレーズが心底好きですね。


今回もホントに心のこもったコメントありがとうございました。
精神的に落ちてたので特に助かりました。これからも自分のペースで頑張って行こうと思います。

>あなたの記事にも同じものを感じています。
感謝感激です!
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