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悲しい夜の向こう側へ

Syrup16g全曲レビューその32「タクシードライバー・ブラインドネス」

2011-10-06 00:37:23 | Syrup16g全曲レビュー







Syrup16g全曲レビューその32「タクシードライバー・ブラインドネス」です。






タクシードライバー・ブラインドネス        ミニアルバム「My Song」収録






「求めればまた失うだけ」

ある意味真理のような言葉ですけど。
求めれば求めただけ何かを失くして、
失えば失うほど、求めた自分を恥じて。その繰り返しのような人生。
人によって
人の性質なんてものは大幅に違うと思うんですけど
その中で大きく外れてしまった人間
誰にも干渉出来ない人間だったり、その他諸々のはみだし者の心情を描いたようなこの曲。
そこにおおよそ優越感やそんな自分を誇る気配もなく
あるのは
ただただひたすら降り積もった劣等感と虚無感だけ
言ってしまえば、それだけ。
なのにこの曲を聴いてると無性に心に作用してくるといいますか
少しだけ気が楽になるんですよね。
それは安い言葉で言えば同調だったりシンパシーって事なんでしょうけれども
それで少しでも気が紛れるなら有り体に良い事だって思えますよね。
音楽っていうものは
表現っていうものはほんのちょっと誰かの心に水を差すだけで良い。
そういうものだっていうのもある種の正論ですよね。
要はそこでどういう方法論を選ぶかどうかの違いな訳で、それがネガでもポジでも
大事なのは人の心に刺さるか刺さらないか、って部分だけだと思います。
その点では大いに合格点って感じの曲じゃないでしょうか。


「見過ぎたものを忘れてく為」

知識や見聞は人の為にはなりますが
それで足が引き摺られる事も往々にしてあります。
この曲の中では
それをTVの占いで表現してますけど
それ以外にもほんの些細な事で心に動揺が生まれる人もいるでしょう。
知る事は大切な事だし
知った時のカタルシスも、見た時のインパクトもあるでしょうけど
それを意図的にではなく
見させられた時のショックは小さな傷でも後々になって積もっていく
そんな知らなきゃ良かった事も我々の生活には満ちています。
与えられては忘れて
与えられては忘れようとして。
そんな傷口の手当てに必死な日々に求める意味とは。
求めるたびに失い
失うたびに恥じる。これでまた冒頭に戻って、生活の無限ループに突入します。
こういう曲で訴えたいって事は
ただ単にそれが辛いって言う感傷の捌け口以上に
きっとそんな自分を俯瞰して、見つめ直す行為なんじゃないかとも思います。
傷を負って歩いていても
それを認識してるのとしてないのとじゃ
気の持ちようも全然変わってきますから。そんな歌だと思っています。





サウンドに関しては、冒頭のちょっとギラッとした格好の良い音像から
サビで一気にメランコリックに弾ける
そんな空気感の変化も大きな聴きどころだと思います。感情移入のしやすいメロディーラインっていうか。





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