超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

LIFE IS WONDER/LOST IN TIME

2013-10-18 06:30:24 | 音楽



















実に3年ぶりのアルバムでした。

















個人的に前作の「ロスト アンド ファウンド」って最高傑作レベルだと思ってたから
そこから考えると、多少は熱量やカタルシスの面で差異があるかもなんて不安もあったんですが
でも聴き終えてみると不思議と過去作と比較する必要性を一切感じなかったというか
端的に言えば今までのロストとは違う、って感触があったんですね
こういうアルバムは初めてだなあというか。

今までのアルバムは海北大輔のパーソナルな心情を余すことなく吐き出す類の作品が多くて
そのしんどさややるせなさ、怒りや悲しみ、幸福な気持ちや複雑な想いに聴き手が呼応するタイプの、
大雑把に言えばそういうバンドとソングライターだったように思うんですが
このアルバムはそこから一歩踏み出した感覚があって
海北大輔の心情吐露は不変なんですが、
その描き出されている心情が全体的に腹を括っている印象があって
だからこそその心情に連なるように聴き手もまた少し腹を括って一歩踏み出せるような・・・
そういう作品、段階に初めて着手したのがこのアルバムなんじゃないかと思います

勿論別に応援でも励ましでも何でもなく
あくまで海北さん一個人の心が反映されてる訳ですから
所謂応援歌みたいな安っぽさもないし、そして腹を括った曲ばかりでもなく
相変わらずの憂鬱で歪んだ心境を反映させている曲も残ってるのでリアリティもバッチリ
なんで土足で聴き手に干渉してくる印象は全く持たせてない作品だから
きっと素直にモチベーションの獲得に繋がったり
毎日を生きる力、
ちょっとだけ気持ちの切り替えが出来たりもする
そういう「後押し」的な要素が多々詰まっている・・・そして前述のように深みも付随してるからこそ
純粋にこれを聴いて燻った気持ちや物悲しい感情を多少和らげ進む勇気をもらった気分になれる
そんな音楽のエネルギーだったりプラスに持って行く力を感じる作品だと思います
実際台風の影響で家が浸水して、
相当ダウナーだった時にこの作品を聴いてたら不思議と気分が楽になった感覚がありまして
打算でもなく、干渉でもない、真っ当に毎日に対するワクワク感を高められる正しき傑作だと個人的に感じました。


そういうアルバムをロストでは今まで聴いた事はなかったし
それまでが足掻いてたり感傷を表現してたり、想いの深さを滲ませる楽曲中心で構成されてた為
ここまで「これから」だったり「達観」を表現している作品を聴けるとは思わなかった
正にオーバー30ならではのアルバムというか
これはもう迷いの季節も戸惑いの季節も抜けて進まざるを得ない事を自覚した大人のアルバムだな、と
そういう風にモード自体が完全に切り替わった上に元々のらしさも一部不変なので
正当に一皮向けた印象
前述のように過去作と比較する必要が全くないと思える
今までとは別の角度で異なる傑作を生み出してくれた感覚・・・なのが
冒頭のように「決定打の次」に対する不安も抱えていた人間にとっては誤算であり最高に嬉しかったです

個人的に、ロストの音楽って元気になるだとか、パワーを貰えるだとか
そういう類の音楽とは違うと思ってたし
そういう類の音楽に関してやや消極的な想いもあったんですけど
このアルバムは純粋にそういう気持ちを抱く事が出来る
先に痛みだったりやりきれない感情を提示する事で素直に受け取る事が出来ない人にも
ちゃんと受け取る事が出来る素養をきちんと作れている、そこがやっぱり素晴らしいなと思います
どうしてもネガティブな感情、ダウナーな心境に占領されていて前に進む気力すら沸かない時
何もかもが無価値に思えて何一つ行動の意欲を示せないような思考停止の時とかに
同じようにそういう境遇の中でも覚悟して進もうとしている姿を見せて
結果的に聴き手側も少し考え直す余地が生まれるような・・・
そういう作品になってると思うので
やっぱり音楽って豊かなものだし人の原動力の一部になり得るものだなと
最終的にはそんな風な事を再確認出来たのが個人的にはプラスだったし嬉しくもありました。

そもそもが土台となるメロディ自体も相当優れてますからね
アップテンポのナンバーなのにただ単に疾走感に頼ってるだけでなく
きちんと深々と聴けるような余裕も残ってますし
ミドルテンポの楽曲は総じてクオリティの高い美メロばかり
元々ナチュラルにスッと入ってくるしっかりとした土台作りが出来ているからこそ
そういう腹を括って少し大人になったメッセージも素直に受け入れる事が出来る要因になってるんじゃないかと
ドラマチックとかメロディアスって形容が似合わない代わりにシックでナチュラルなメロディの数々
その純度と良い意味での落ち着きに触れてるだけでも心地の良いアルバムだと思えますね。
















3年ぶりのフルアルバム、すっげえ良いアルバムでした。
確実に気持ちが楽になったと言い切れる。
「五月の桜」に倣うならば、本当に伝えたい事はそんな感謝と好きの気持ちだけ。
誠実さに溢れている作品、新しいロストの到来を告げる傑作に仕上がってて私的に最高でした。
これが聴けて良かった。




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