超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

メメントモリ/ランクヘッド

2013-09-20 20:15:44 | 音楽


















ひとつだけ守りたいものを それだけは守るために
嘲り笑う声の中 前を睨み続けた
ふとそこにある虚しさに ぬぐい去れない歯痒さに
負けてしまいそうな朝でもそれと戦えるように      (いきているから)




















ここ数作のランクヘッドのアルバムは基本的にポップ感よりも衝動重視でしたが
今作ではそのテイストはある程度守った上で再び3枚目~4枚目の頃のようなポップ感を復活させています
当然最近のバッキバキ感も残ってるのでその中間地点のようなアルバム・・・って形容が似合いますかね
でもその適度に聴きやすく適度に盛り上がれる温度感は今までになかったものだと思うし
この位のバランスのアルバムもこれはこれで好きですね
それにこのアルバムには「喪失からの再生」という明確なコンセプトがあります
勢いのある序盤から一気に崩れる中盤、そしてそこから光へと向かう終盤、、、と
アルバム全体にしっかりとした流れがあって楽曲のスケール感も統一されているようなまとまりがある
タイトルに偽りの無い見事なコンセプトアルバムに仕上がったなあ、と今は感じています。

その分、ここ数作のアルバムではお馴染みだった煮え滾る情念だったり
憎悪、憤りを感じさせる楽曲は極端に少なくなっています
私はランクヘッドの怒りとか憎しみを剥き出しに表現した楽曲も大好物だったので
その点ではここ数作には劣りますかね
でも、前述の通り聴きやすさは随一なので今回はコンセプトに順じた・・・と考えればこれはこれで、と。


個人的に大好きなのはシングルにもなった「いきているから」なんですけど
この曲メロディは「カナリアボックス」にも負けない大衆感があってリズムも跳ねてるんですが
歌詞は一貫して苦悩している日常を描いているんですね
めっちゃポップでも、
歌詞までポップにしない事で生まれるカタルシス・・・を存分に味わえる一曲です

何より、この曲は小高さん自身の事を歌っているという気があまりしません
というのはある種自分自身の事を歌っているのでは?というくらい自分の心情に近かったし、
マイノリティに対する応援歌に仕上がってるので毎日悔しい思いをしている人にはきっと届く歌の筈
このアルバムは曲調やアレンジこそポップ色強めですが歌詞は常に足掻いているような状態です
だからこそ「また元に戻った?」って印象もなく
今のランクのまま過去を引き連れて来たんだなあ・・・って印象を持てるのだと思います
その最たる曲がこの「いきているから」でした
ドラマチックなメロディに前へ前へと生き急ぐようなスピード感が生み出す感動は是非触れてみて欲しいな、と

もう一曲、決定打と思える曲が入っていて去年のリリースツアーのワンマンでも披露された「共犯」、
この曲はメロディがかなり王道を感じさせる渾身のバラッドに仕上がっていて
同時にファンに向けた切実なメッセージソングにもなっています
そのアンセム感と聴き手をしっかりと包み込んでくれるような頼もしさ、は
前述の「いきているから」もそうですが今のランクヘッドが得た確かな財産なのだと思います


前述のように、憎悪や憤怒の表現には乏しいアルバムですが
その代わりに聴き手を抱擁し一緒に戦ってくれるような心強さを含んでいるアルバムになっていると思う
その中でロック色強い「閃光」「壊れてくれない」や情感溢れるバラッド「月の城」が入っていたり
新機軸と言える山下壮作の洋楽テイストの小品「raindrops」、
そして一曲目は完全インストの「メメント」だったりバランス感に長けた作品でもある
そんな中で「いきているから」「共犯」みたいな決定打も入っているし今作もまた快作に仕上がったかなと。
まだまだ枯れない才能と勢いをしっかりと見せ付けたベテランとしての矜持が詰まっている盤でした。
これもまた、大切な作品になっていくんじゃないかと。
ツアーも楽しみです。














君がいなくなっても 生きていけてしまう
その事が今はただ 何よりも悲しい     (はるなつあきふゆはる)


こういう気持ちが分かるならば、聴いておいて損はないと思えるアルバム。大好きです。





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