超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

ひとつ屋根の下の 1巻/藤こよみ

2013-02-13 07:12:28 | 漫画(新作)












藤こよみ「ひとつ屋根の下の」1巻読了。











ラブコメ・・・なんですけど、想像以上に濃厚で屈強なお話になってる気がします
始まりは所謂幼なじみと再会という王道的な印象なんですが、それもたまたま再会とかではなく
主人公が自ら能動的に彼女の元へやって来て約束を果たすという
非常に芯の通った物語になってるんですね
その上ライバル的な女の子にも節操のある態度を取って一途さを貫き通す等
正に古き良き純愛物語のエッセンスをしっかりと継承して磨き上げてる、みたいな・・・。
そういう「真っ当さ」に溢れている純然たる傑作に仕上がっていると思います
勿論まだ1巻の段階ではあるんですけど、
裏を返せば1巻の時点でそう感じる事が出来るくらい面白く豊かな作品だった、という話で。
所謂ハーレムでなく純愛を楽しみたい方にはうってつけの漫画になっていると個人的には思う。

ヒロインのりり姉ちゃんは所謂堅物キャラで、
きちんと自らを律して真面目に役割をこなそうとする立派なキャラクターとして描かれてるんですけど
だからこそ溢れ出てしまう久太への深い想いの表現が本当に好きなんだな、という事実を
リアリティを以って感じさせてくれる
色々と抑圧を強いられてる中で「それでも止まらない!」って感じの愛情表現の流出が素晴らしいです
彼女のキャラ造詣の時点である程度成功している作品だと思うんですが
それに加えて主人公の久太のキャラも格好良い(笑
年下で頼りなさげ?かと思ったら物凄く行動力も勇気も、きちんとリード出来る男らしさもあるし
女の子が不安な時にはきっちりと引っ張って気持ちを救ってあげられる強さもある
こりゃ惚れるのも納得だわなあ、って感じです
前述のように他の女子に目移りも一切なく、最初からずっとりり姉ちゃんの事だけを考えて生きてきた
そういうお互いに一途な面が際立ってるからこそ素晴らしい純愛作品だと思えるのだと

また、それを読み手に説得力を持って実感させてくれる気合の入った表情の数々が堪らないんですよね
いちいち説明しなくても、表情を見れば一発で相手への想いが伝わって来る仕様になっていて
その野暮ではない自然体な想いの伝わり方に個人的には惚れ惚れします
嬉しさも怒りも、哀しみも楽しい気持ちも
全部が全部グッと来る感度で読み手に届くその表現力の向上に痺れました
見ただけで感情の細かい部分や本心である事がきっちり伝わる純朴な表情の数々も素敵な漫画ですね。


藤こよみの漫画は元々大好きで、毎回追ってたんですが
作品を重ねる度にどんどん繊細な心情表現が上手くなってるなと思います
可愛い女の子でアプローチする類の作家さんながら無添加な印象が付随してるのが良い
ものすごく純真で、嫌味が無いように感じられて。
りり姉ちゃんの思想も記号的なものではなく、
自分の想いが宙ぶらりんな事に対して申し訳なく思う感情や
嫉妬以上に自分の元から久太がいなくなってしまう杞憂からの苛立ちや哀しみ
美少女系の漫画でありながらリアルさも感じられるその塩梅が正に自分好みですね
内容も超厳しい名門校での生活や、祖父から猛反対されてる二人の恋という背景があって
いかにもドラマチックでそれもまたこの作者の表現技法に合ってる感じ
3作目にして本領発揮!という内容になってるかと
惜しむらくは、まあ掲載誌の知名度も併せてマイナー寄りになっちゃってる事くらいですかね(笑
こういう王道を説得力を以って描ける作家さんは貴重だと思うのでもう少し評価されればいいなと思います
ただ単に反対されているという訳でもなく、その水面下では複雑な因縁や思慮も蠢いてたりして
一面的な物語になってないのもまた好印象でした。

祖父はともかく、祖母の方は実は分かってくれる人なんですけど
彼女が抱える複雑な気持ちも言葉ではなく態度や表情で伝わって来て深かったですね
祖父は執念的であると同時に、自分の夢を今度こそ叶えたいんだろうけど
それもまた完全な悪意から来てるものではないんですよね。
勿論否はありますけど、
個人的には誰もが納得出来るエンディングになればいいと思う
今回も最後まできっちりと見守りたい所存であります。二人の恋を成就させる事は
何気に親の無念を叶える事にも繋がっている・・・という物語の構造にも感心を覚えた出色の一冊目でした。
「ヤシコー初代生徒会」と同じく早速2巻で波乱の展開が待ってるようなので続巻も楽しみです!









それにしても第5話は個人的に非常に素晴らしく感じましたねー
涙を流しながら相手に好きと伝え合いキスを交わす・・・正に完璧な流れでした
まあ私的にはその後の一線を越える寸前まで行った久太の男の子っぷりにシンパシーも感じつつ(笑
藤こよみさんは色々とパワーアップしてると思いますけど
色っぽさの表現に関しても驚くほど男子的にグッと来る仕上がりになってまして
その辺もまた個人的には嬉しく、それもまた表現の力強さを感じさせる名シーンだったかと
りり姉ちゃんのいじらしい可愛さは天井知らずですね(笑)。
過不足を感じさせない1巻目でした。